2018年度診療報酬改定で、オンライン診療を組み合わせた生活習慣病対策などを評価—未来投資会議
2017.4.17.(月)
2018年度の診療報酬改定に向け、▼オンライン診察を組み合わせた糖尿病などの生活習慣病患者に対する効果的な指導・管理▼血圧、血糖などの遠隔モニタリングを活用した早期の重症化予防―などについて診療報酬上の評価を行う—。
14日に開催された未来投資会議で、塩崎恭久厚生労働大臣はこのような考えを示しました。ICTやAIなどの最新技術を医療・介護分野に積極的に取り入れ、医療の質と同時に生産性の向上を図る考えです。
「対面診療」と「遠隔診療・オンライン診療」の適切な組み合わせを
未来投資会議は、成長戦略と構造改革の加速化を図るための司令塔として、2016年9月に「産業競争力会議」と「未来投資に向けた官民対話」を発展的に統合した組織体です。議長は安倍晋三内閣総理大臣が務めており、14日には「新たな医療・介護・予防システムの構築」が議題となりました。
医療・介護分野のビッグデータ(レセプトや健診データなど)を連結することで、医療の質を飛躍的に向上させる計画(データヘルス改革)が厚生労働省を中心に進められています。そうした中、塩崎厚労相は最新のICTやAI技術を取り入れ、医療の質や生産性を向上させる必要があるとし、診療報酬上の評価にも言及しました。
現在、▼一定の施設基準を満たした医療機関では、遠隔画像診断を行った場合にE001【写真診断】、E004【基本的エックス線診断料】、E102【核医学診断】、E203【コンピューター断層診断】の診療報酬を算定できる▼一定の施設基準を満たした医療機関では、テレパソロジー(遠隔病理診断)を行った場合にN003【術中迅速病理組織標本作成】、N003-2【術中迅速細胞診】の診療報酬を算定できる▼在宅で体内植込式心臓ペースメーカーなどを使用している患者について、遠隔モニタリングを用いて療養上の必要な指導を行った場合には【遠隔モニタリング加算】を算定できる—といったICT技術活用の評価が行われています。
塩崎厚労相は、2018年度の診療報酬改定では、これにとどまらず「対面診療」と「遠隔診療・オンライン診療」とを適切に組み合わせて、かかりつけ医による日常的な健康指導・疾病管理を行うことを評価する考えを表明。具体的には、▼オンライン診察を組み合わせた糖尿病などの生活習慣病患者に対する効果的な指導・管理▼血圧、血糖などの遠隔モニタリングを活用した早期の重症化予防―などについて、診療報酬上の評価を行う考えを明らかにしました。さらに、2020年度改定以降でもこうした流れを加速する考えも示しています。
診療報酬改定について議論する中央社会保険医療協議会でも、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)らは「ICT・AI技術の活用」を強く求めており、今後、具体的な仕組み(例えば、どのような医療機関を評価対象にするのか、対象となる患者像など)を積極的に検討していくことになります(関連記事はこちらとこちら)。もっとも、診療側委員は「対面診療が基本」として、幸野委員らの提案に慎重姿勢を見せており、中医協を飛び越えた塩崎厚労相の方針に異論が出る可能性もあり、今後の議論に注目が集まります。
データに基づく「科学的介護」を実践する事業所の評価へ
昨今のICT・AI技術は、医療の質を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。塩崎厚労相は、▼がんゲノム医療の戦略的推進▼AI技術の「画像診断支援」「医薬品開発」「手術支援」「ゲノム医療」「診断・治療支援」「介護・認知症」の重点6領域での導入加速化▼介護ロボットの開発・普及の加速化▼ビッグデータを活用した保険者機能の強化▼科学的介護の実現—を進める考えも強調しています。
このうち「科学的介護」とは、介護サービスが利用者の状態に与えた効果を分析し、「科学的に自立支援などの効果が裏付けられた介護サービス」を提示するとともに、こうしたサービスを提供する事業所・施設を介護報酬で評価し、国民に「見える化」(どの事業所が科学的介護を行っているのかが分かるように)をする計画も示されました。例えば、介護保険給付のリハビリについて「目標を明確に定めず、効果が判然としないリハビリが漫然と継続されていることもある」という指摘もあります。医療分野では、20数年前から「EBM(evidence-based medicine)」が実施されており、介護分野でも「言わばEBC(evidence-based care)」などが意識される時代になってきたようです。
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