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血液検査で簡便に「悪性の甲状腺濾胞がん」と「良性の濾胞腺腫」とを見分ける新技術を開発—都健康長寿医療センター研究所

2025.8.18.(月)

血液検査で簡便に「悪性の甲状腺濾胞がん」と「良性の濾胞腺腫」とを見分ける新技術を開発した—。

東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)が8月6日に、こうした研究成果を発表しました(研究所のサイトはこちら)。

「転移を抑制する治療法」「がんの進行を遅らせる治療法」の開発にも期待

「甲状腺濾胞がん」は、甲状腺がんの中で2番目に多いがんです(甲状腺がん全体の約10-15%)。ただし、悪性の「濾胞がん」と良性の「濾胞腺腫」とは、細胞の形や構造が極めて類似しており、細胞診や画像検査では確実な診断ができないという課題があります。このため、診断を確定するには「腫瘍の被膜への浸潤」や「血管への浸潤」を組織学的に確認する必要があり、「疑いのある腫瘍をすべて手術で摘出する→詳しい病理検査を行う」ことになっています。

しかし、手術を受けた患者の中には術後に良性と判明する場合もあり、これは患者にとって大きな身体的・精神的負担となることはもちろん、医療費の増大や医療の効率化という観点からも問題となっています。

そこで研究所では、帝京大学医学部内科学講座や金地病院と共に、血液中に含まれる「細胞外小胞(エクソソーム、extracellularvesicles)という微小な粒子に注目。

細胞外小胞は、細胞から放出される直径約100nm(髪の毛の太さの約1000分の1)の微小粒子で、細胞の情報を運ぶ「メッセンジャー」の役割を果たしながら血液中を循環しています。小胞中には「放出した細胞のタンパク質・核酸・脂質など」が含まれているため、血中の細胞外小胞を調べることにより疾患の診断につながると期待されています。

今般、研究チームは「甲状腺濾胞がんから放出される細胞外小胞が、術前診断に役立つ」可能性があると考え、「甲状腺濾胞がん」患者と「濾胞腺腫」(良性)患者から採取した血液から細胞外小胞を精製し、質量分析装置(LC-MS/MS)による詳細分析を実施。そこから次のような結果が得られました。

▽639種類のタンパク質が検出され、うち「18種類のタンパク質」が、甲状腺濾胞がん患者と濾胞腺腫(良性)患者とで、有意に発現量が異なる

▽このうち「RAB21」というタンパク質は、濾胞腺腫(良性)患者に比べて、甲状腺濾胞がん患者の血液中の細胞外小胞に非常に多く含まれている(RAB21タンパク質は細胞内の物質輸送に深く関わっている)

▽遺伝子操作技術を使ってRAB21タンパク質の働きを抑制すると、がん細胞の移動能力が著しく低下する

甲状腺濾胞がんの手術前診断に向けて



これらの結果から、「RAB21タンパク質が、甲状腺濾胞がんの転移や浸潤といった悪性化プロセスに関与している」と考えることができ、「RAB21タンパク質が、悪性の甲状腺濾胞がんと良性の濾胞腺腫とを区別する指標(バイオマーカー)になる」と言えます。採血という簡単な検査で「甲状腺濾胞がんの手術前診断」ができるようになれば、患者の負担軽減や診断精度の大幅な向上に役立つと期待されます。

研究チームでは、今般の研究結果には次のような大きな意義があることを示しています。

▽医療現場へのインパクト
→甲状腺がん診療に大きな変化をもたらす可能性がある
→血液による術前検査が実用化されれば、「本当に手術が必要な患者の特定」を行い、不要な手術を減らすことができ、診断精度の向上と医療効率の最適化を同時に実現できる

▽患者へのメリット
→不要な手術を避けることができ、患者の身体的・精神的・経済的な負担を軽減できる
→外来での簡単な採血検査であり、入院や回復期間が不要で、日常生活への影響を最小限に抑えられる

▽将来の治療法開発への道筋
→RAB21タンパク質ががん細胞の移動能に重要な役割を果たすことが明らかになったため、これを標的とした新しい治療薬の開発が期待できる
→特に、「転移を抑制する治療法」「がんの進行を遅らせる治療法」の開発につながる可能性がある

▽継続的な病状モニタリングへの応用
→本検査は採血という体への負担が少ない方法で実施でき、外来で簡単に行うことができる
→血液検査は繰り返し実施できるため、「治療効果の判定」「再発の早期発見」にも活用できる可能性がある
→より個別化された治療計画の策定や、長期的な経過観察の質の向上が期待される



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