アルツハイマー病等の新たな治療標的となる分子をPET検査で画像化、新たな治療法開発につながると期待—都健康長寿医療センター研究所
2024.5.30.(木)
アルツハイマー病などの特徴である「脳内に異常なタンパク質凝集体蓄積」の解消につながると期待される酵素(ヒストンデアセチラーゼ6、HDAC6)について、PET検査による画像化が可能となった。アルツハイマー病等の新たな診断法・治療法開発につながると期待できる—。
東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)らの研究グループが5月22日に、こうした研究成果を発表しました(研究所のサイトはこちら)。
アルツハイマー病等には「脳内に異常なタンパク質凝集体が蓄積する」特徴
アルツハイマー病やパーキンソン病など、多くの神経変性疾患には「脳内に異常なタンパク質凝集体が蓄積する」という特徴があります(例えばアルツハイマー病ではベータアミロイドというタンパク質が脳に蓄積することが知られている)。
こうした疾患を治療薬する薬剤開発のターゲットとなりうる分子として、生体内のタンパク質分解などに関与する酵素「ヒストンデアセチラーゼ6」(HDAC6)が注目されています。研究チームは、HDAC6に結合する陽電子断層撮像法(PET)用の放射性薬剤として[18F]FSW-100を見いだし、▼PET装置を使用し、ヒトに投与された[18F]FSW-100の分布を画像化する→▼HDAC6の脳内における発現量や分布などを把握する—ことにより「HDAC6を標的とした治療法や診断法の開発に重要な情報が得られる」と期待しています。
具体的には、[18F]FSW-100の注射液の製造試験により安全性・有効性を確認したうえで、ヒトに近いサルを用いてPET撮像を実施。その結果「脳内のHDAC6の分布を反映したと見られるPET画像が得られました。
研究チームでは「[18F]FSW-100が、HDAC6を画像化するPET薬剤として、臨床研究を行う価値がある」と結論づけています。HDAC6は「神経変性疾患の治療標的」として注目されるものの、「疾患を有するヒトの脳内において、HDAC6の量や分布がどう変化するのか」は必ずしも十分には明らかになっていません。[18F]FSW-100を使用した臨床研究により「疾患におけるHDAC6の役割」がより一層明らかになることで、新たな治療法や診断法の開発につながると研究チームは期待しています。
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