GemMed | データが拓く新時代医療 > 介護保険 > 高齢期にむけた健康の維持にとって最適な食事のタンパク質比率は25－35％！―都健康長寿医療センター研究所

高齢期にむけた健康の維持にとって最適な食事のタンパク質比率は25－35％！―都健康長寿医療センター研究所

2023.5.10.（水）

高齢期にむけた健康の維持にとって最適な食事のタンパク質比率は「25－35%」である—。

東京都健康長寿医療センター研究所が5月8日に公表した研究成果から、こうした点が明らかになりました（研究所のサイトはこちら）。現在、日本人の平均的なタンパク質摂取比率は13.8%であり、「食事のタンパク質比率を25－35%に高める」ことが、高齢期にむけた健康維持に役立つ可能性があります。

日本人のタンパク質摂取比率は13.8%、食事のタンパク質比率高めることが重要

未曽有の少子高齢化が続く中、少なくなる一方の支え手（サービス提供者、費用負担者）で、増大する一方の高齢者（サービス利用者、受益者）を支えなければならず、「どのように効率的に要介護者を支えていくか」（サービス提供の生産性向上、介護費の負担の公平化など）とともに、「要介護者の発生をいかに防止していくか、要介護状態になったとしても、いかに重度化を防止するか」が極めて重要な政策テーマになっています。

介護予防・重度化防止の一環として「フレイル対策」が重視され、都健康長寿医療研究センターの調査・研究では「肉類摂取がフレイル予防に有効な可能性がある」ことが分かっています（関連記事はこちら）。

そうした中で都健康長寿医療センター研究所の石神昭人副所長・早稲田大学の近藤嘉高講師・ニチレイフーズ社の青木仁史研究開発部付部長・東京大学の高橋伸一郎教授らの共同研究により、高齢期にむけた健康の維持にとって最適な食事のタンパク質比率は「25－35%」であることが今般明らかにされました。
しました

研究グループでは、マウスを用いて、▼月齢▼食餌におけるタンパク質比率▼健康—との関係を調査。
【月齢】若齢（6月齢）と中齢（16月齢）の2分類
【食餌におけるタンパク質比率】5%、15%、25%、35%、45%の5分類（総カロリーを揃えるため、脂質を「日本食」を想定して25％に固定し、炭水化物比率で調整）

そこから、次のような状況が明らかになりました。

【体重の変化】
▽中齢マウスの体重は若齢よりも高値、タンパク質5％群は他群よりも低値

▽中齢マウスが食べた食餌量は若齢よりも多く、タンパク質5％群の摂食量は他群よりも多かったが、タンパク質45％群では少ない

→体内のタンパク質量を調節するため、「摂取タンパク質が不足すると摂食量が増える」「摂取タンパク質量が増加すると摂食量が減る」という「Protein leverage（タンパク質のてこ）」現象が生じている

【中性脂肪蓄積の状況】
▽タンパク質5％群では、肝臓に多くの脂肪滴が認められ、中性脂肪と総コレステロールが高値であった

▽中齢のタンパク質5％群やタンパク質15％群は、若齢よりも中性脂肪が高値であった

▽タンパク質35％群は、若齢、中齢ともに中性脂肪が蓄積しなかった

→「タンパク質摂取量が不足した場合に、」肝臓に脂肪が蓄積する」特徴的な現象が生じている

【血糖値などの状況】
▽若齢、中齢ともにタンパク質25％群、タンパク質35％群が低値であったが、タンパク質45％群はむしろ高値であった

→タンパク質45％群は「食餌の炭水化物比率30%」と低いことから、体内でタンパク質のアミノ酸を分解して糖を合成している可能性がある

▽総コレステロール値はタンパク質15％群が最も高値で、タンパク質5％群・タンパク質35％群・タンパク質45％群では低値であった

【体内のアミノ酸レベル】
▽体内で合成できない9種類の必須アミノ酸の血液中濃度は、食餌、月齢、飼料による違いはなかった