ペット、とりわけ犬の飼育が「運動の継続」→「要介護状態等の予防」→「介護費の軽減」につながる!—健康長寿医療センター研究所
2023.4.7.(金)
ペット、とりわけ犬の飼育が「運動の継続」→「フレイルの防止、要介護状態等の予防」→「介護費の軽減」につながる—。
今後、ペット飼育によるメリットとデメリットを幅広く解明し、「社会実装」を進めていく—。
東京都健康長寿医療センター研究所が4月3日、こうした研究トピックス「ペットとの共生が人と社会にもたらす効果」を公表しました(研究所のサイトはこちら)。
ペットの飼育が、飼い主の健康を直接向上させ、さらに社会保障費増を抑制
今年度(2022年度)から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。このため介護ニーズは今後急速に増大していきます。
一方、支え手となる現役世代人口は、2025年度から2040年度にかけて急速に減少していきます。
少なくなる一方の支え手(サービス提供者、費用負担者)で、増大する一方の高齢者(サービス利用者、受益者)を支えなければならず、「どのように効率的に要介護者を支えていくか」(サービス提供の生産性向上、介護費の負担の公平化など)とともに、「要介護者の発生をいかに防止していくか、要介護状態になったとしても、いかに重度化を防止するか」が重要になっています。
こうした中で、都健康長寿医療センター研究所は「ペットの飼育が介護予防はもちろん、介護費の軽減にも効果がある」との研究結果を公表しました(関連記事はこちら)。
さらに今般、「ペットの飼育」には次のような効果があることを明らかにしました。
▽フレイル発生のリスクを下げる
→日本人高齢者7900名(平均年齢73.6歳±5.3歳)について見てみると、「ペット(犬・猫)を飼育したことのない群」に比べて、「過去にペットを飼っていた群」はフレイル発生リスク(確率)が0.84倍、(16%減)「ペットを飼っている群」は0.87倍(13%減)に、とりわけ「犬を飼育している群」は0.81倍(19%減)に低くなる
▽自立喪失(要介護状態もしくは死亡)の発生リスクを下げる
→日本人高齢者約1万1000名(平均年齢74.2歳±5.4歳)について見てみると、「ペット(犬・猫)を飼育したことのない群」に比べて、「過去にペットを飼っていた群」は自立喪失発生リスクが0.88倍(12%減)、「ペットを飼っている群」は0.71倍(29%減)に、とりわけ「犬を飼育している群」は0.54倍(46%減)に低くなる
→「犬の飼育」と「運動習慣」とのクロス分析を行ったところ、「運動習慣のない群」では「犬の飼育の有無」との間で自立喪失発生リスクに有意な差はなかったが、「犬を飼育していて運動習慣のある群」では、「犬を飼育しておらず、運動習慣のない群」に比べて自立喪失発生リスクが0.44倍(56%減)と半分以下に低下する
▽介護費を低減させる
→既往歴や要介護認定者の割合が同程度である「ペット飼育者」と「ペット非飼育者」(合計460人(平均年齢77.7歳±4.6歳)を比較すると、次のように「ペット飼育者」では介護費が少ない
▼1人当たりの月額医療費:ペット飼育群4万8054円、ペット非飼育群4万2260円(有意な差はない)
▼1人当たりの月額介護保険サービス利用費:ペット飼育群676円、ペット非飼育群1420円(最大2.3倍)
これらの結果を、研究所では次のように分析しています。
(1)犬の散歩は、通常の歩行と同程度の運動強度だが、「運動の継続」に有効、飼い主の健康に良い経過をもたらしている
(2)ペットの飼育(ペットとの共生)、飼い主への直接的な健康効果のみならず、「介護費」といった社会保障費への抑制効果も期待できる
こうした結果を踏まえれば、「ペットを飼育しやすい環境の整備」が健康長寿や持続可能な社会の実現に向けて重要ではないか、と考えられます。
今後、▼ペットを飼育しやすい住環境の整備▼飼い主・ペットの健康状態が悪化した場合の入居先、法的な仕組みの整備▼「ペットを飼いたくても飼えない」と考える飼育意向者の不安要素軽減・解消▼ペットロスによる心理的マイナス面の対策▼人獣共通「感染症」への対策—といったテーマに取り組んでいくことが必要でしょう。研究所では、今後「ペット飼育によるメリットとデメリットを幅広く解明」したうえで、「社会実装を進める」考えを明らかにしています。
なお、過去の選考研究で「乳児期や幼児期にペットとの共生を開始すると、その後の喘息発生リスクが低くなる傾向がある」ことも明らかになっています。
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