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糖尿病性認知症のバイオマーカー候補を発見、血液診断で「糖尿病性認知症の超早期鑑別」が可能な時代に—健康長寿医療センター研究所

2023.2.24.(金)

糖尿病患者はもちろん、予備群であっても認知症の発症リスクが高まるが、今般、糖尿病性認知症のバイオマーカー候補となる血中糖ペプチドを発見することができた—。

東京都健康長寿医療センター研究所が2月22日、こうした研究結果を公表しました(研究所のサイトはこちら)。さらなる研究を進めることで、「血液診断による簡便な糖尿病性認知症の超早期鑑別→超早期治療・ケア」が可能な時代が到来すると期待できます。

長期縦断調査結果をもとに「糖尿性認知症患者に特有の血中糖ペプチド」を探索

高齢化の進行に伴い、認知症患者も増加し、さらに増加することが見込まれます。2018年には認知症患者数は500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」という状況になり、また2025年度には675-730万人に到達すると推計されています。

政府もこうした状況を重く見て、認知症対策の充実・強化に向け、新オレンジプランを大改革した「認知症施策推進大綱」を2019年6月に取りまとめました。そこでは、「認知症の人との共生」「認知症の予防(発症を遅らせる)」を目指し、(1)普及啓発・本人発信支援(2)予防(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援(4)認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援(5)研究開発・産業促進・国際展開―という5つの柱を打ち立てています(関連記事はこちら)。また、介護保険制度改革においても「認知症対策」が重要な柱の1つに位置づけられています(関連記事は こちら)。

ところで、認知症発症リスクを高める要素の1つとして「糖尿病および糖尿病予備群」が知られています(糖尿病性認知症、糖尿病患者は、そうでない者に比べて、アルツハイマー型認知症に約1.5倍、脳血管性認知症に約2.5倍なりやすいとの報告あり)。この「糖尿病性認知症」を予防するためには「糖尿病の重症化を防ぐだけでなく、認知機能の低下を『早期』に発見し適切な介入・治療に繋げる」ことが重要となります。

この点、東京都健康長寿医療センター研究所・大阪大学・慶応大学の共同研究チームは、効率的な患者抽出を可能とし、かつ患者の負担も軽くするために「血液から糖尿病性認知症を検出できるバイオマーカー」の探索が必要と判断。

具体的には、個人差の影響を低減するため長期縦断調査(3年毎に実施しているSONIC縦断コホート研究(Septuagenarians, Octogenarians, Nonagenarians Investigation with Centenarians)と連携して、糖尿病の指標である「ヘモグロビンA1c」と、認知機能検査のスコアである「MoCA-J」(the Japanese version of the Montreal Cognitive Assessment、視空間・遂行機能、命名、記憶、注意力、復唱、語想起、抽象概念、遅延再生、見当識から認知症の状態を判断する)をもとに解析対象となる糖尿病性認知症患者を抽出。対象者の血中タンパク質を消化酵素(タンパク質分解酵素)で分解したペプチドを検体として、液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-MS)と多変量解析(OPLS)を用いて分析しました。

その結果、糖尿病認知症患者において認知機能低下「前」と低下「後」の血液を比較すると、▼3-4分岐でシアル酸含有糖鎖を持つα2-マクログロブリン、クラスタリン、パラオキソナーゼ/アリルエステラーゼ1、ハプトグロビン由来糖ペプチドが減少する▼3分岐3シアル酸含有糖鎖を持つトランスフェリン由来糖ペプチドが増加する—ことが分かりました。

これらの特徴的な糖ペプチドは「糖尿病性認知症のバイオマーカー候補となる」可能性があります。

研究チームでは、今後、より多くの検体で検証を行い「上記の糖ペプチドが、糖尿病性認知症のバイオマーカーとなりえるか」の研究を継続していく構えです。

認知症は「早期の鑑別、早期の適切な治療・ケア」が極めて重要です。糖尿病性認知症については、「予備群の段階、初期の段階」で適切な生活指導・治療を行うことで糖尿病の進行を遅らせ、結果「認知症の発症・進行を遅らせられる」可能性があります。血液検査で簡便に「糖尿病性認知症のリスク」を鑑別できれば、「より早期の鑑別、より早期の適切な治療・ケア」につなげられると期待できます。



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