「ペットの飼育」は介護予防だけでなく「介護費の軽減」にも効果あり!—健康長寿医療センター研究所
2023.2.7.(火)
すでに先行研究で「ペット飼育が介護予防に効果がある」ことが分かっているが、ペットを飼育している人は、飼育していない人に比べて「介護費」も低くなっている—。
東京都健康長寿医療センター研究所が2月3日、こうした研究結果を公表しました(研究所のサイトはこちら)。
ペット飼育による責任感、規則正しい日常生活などが介護費軽減に関与している可能性
今年度(2022年度)から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。このため介護ニーズは今後急速に増大していきます。
一方、支え手となる現役世代人口は、2025年度から2040年度にかけて急速に減少していきます。
少なくなる一方の支え手(サービス提供者、費用負担者)で、増大する一方の高齢者(サービス利用者、受益者)を支えなければならず、「どのように効率的に要介護者を支えていくか」(サービス提供の生産性向上、介護費の負担の公平化など)とともに、「要介護者の発生をいかに防止していくか、要介護状態になったとしても、いかに重度化を防止するか」が重要になっています。
こうした中で、都健康長寿医療センター研究所の先行研究では「ペットを飼育する高齢者ではフレイル(虚弱、要介護の大きな原因の1つ)や自立喪失の発生するリスクが大幅に低い」ことが分かっています。
さらに今般、都健康長寿医療センター研究所では、既往歴や要介護認定者数には差のない「ペット飼育者」と「ペット非飼育者」(埼玉県比企郡鳩山町の合計460名、平均77.7歳)との間で、▼医療費に差があるのか▼介護費に差があるのか—を調査。
その結果、次のような状況が明らかになりました。
▽医療費(月額、2016年1月-2017年6月)は、ペット飼育者4万8054円、ペット非飼育者4万2260円で有意差なし(医療費の両者の比は最小0.9、最大1.2)
▽介護費(同)は、ペット飼育者676円、ペット非飼育者1420円で有意差あり(介護費の両者の比は最小1.29、最大2.3)
このように「ペット飼育者では そうでない者に比べて介護費が約半額に抑制されている」ことから、都健康長寿医療センター研究所では▼ペット飼育者では介護サービスの利用頻度が低い▼より軽度の介護サービスを利用している—と推測し、「高齢化の進展に伴う介護費の増大に対して、犬や猫の飼育は介護予防効果のみならず、介護費の抑制にも寄与する」と分析。介護費が低く済むことの背景として、ペットを飼育することによる▼役割▼責任感▼活発で規則正しい生活の維持—など「介護費に反映する可能性のある日常生活の自立・自律に関する多面的な要因が考えられる」ともコメントしています。
もちろん、ペット飼育には様々なトラブル(鳴き声、匂い、虐待、放置など)が生じうるため安易な推進は困難ですが、一定の環境(家族や地域住民によるサポートなど)を整備したうえで「要介護者防止、要介護者の自立支援・重度化防止に向けた、ペット飼育の活用」を検討する余地がありそうです。
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