Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

「お肉」を食べることが、高齢者のフレイル予防に有効である可能性!―都健康長寿医療センター研究所

2023.4.25.(火)

肉類摂取量の多い高齢者は、そうでない高齢者に比べて最大歩行速度が速く、「肉類摂取がフレイル予防に有効」な可能性がある—。

東京都健康長寿医療センター研究所が4月21日に公表した研究成果から、こうした点が明らかになりました(研究所のサイトはこちら)。医療機関や介護保険施設、通所サービスなどにおいて、入院患者・入所者・利用者への献立を考える際、高齢者等に栄養指導を行う際などに参考にすることが重要でしょう。

「タンパク質を不足させない」こと、とりわけ肉類の摂取がフレイル予防に有用

昨年度(2022年度)から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。このため介護ニーズは今後急速に増大していきます。

一方、支え手となる現役世代人口は、2025年度から2040年度にかけて急速に減少していきます。

少なくなる一方の支え手(サービス提供者、費用負担者)で、増大する一方の高齢者(サービス利用者、受益者)を支えなければならず、「どのように効率的に要介護者を支えていくか」(サービス提供の生産性向上、介護費の負担の公平化など)とともに、「要介護者の発生をいかに防止していくか、要介護状態になったとしても、いかに重度化を防止するか」が重要になっています。

介護予防・重度化防止の一環として「フレイル対策」が重視されています。

フレイルとは「加齢に伴い抵抗力が弱まり、体力が低下した状態」や「自立喪失(介護が必要な状態や死亡)のリスクが高まっている状態」などと定義され、自立→フレイル→要介護状態と進んでいきます。

しかし、適切な支援・介入により「フレイル→自立」と回復することも可能です。このため「フレイルの予防・改善を目的とした介入プログラム」が極めて重要となります。

そうした中で都健康長寿医療研究センターでは「食事、とりわけ食肉」に着目しました。

従前より「フレイル対策の食事としては、タンパク質を不足させない」ことの重要性が指摘されています。では、どのような食品からタンパク質を摂取することが好ましいのでしょう。

この点、タンパク質と言えば「お肉」を連想するように、肉類は▼アミノ酸スコアが高い▼成分であるイミダゾールジペプチドが膝伸展力・片足開眼立ちの向上に関連する—ことなどが知られており、「肉類摂取がフレイル予防に効果的である」と考えられます。

都健康長寿医療研究センターの「お達者健診」に参加した高齢者512名を対象に食事の内容や身体活動等に関する調査を行ったところ、▼肉類摂取量の多い高齢者グループで最大歩行速度が最も速い▼性、年齢等を調整しても肉類摂取量の多い方で最大歩行速度が速い—ことが分かりました。

ここから「高齢期のフレイル予防に向けた栄養ケアとして『肉類』が有効である」可能性が明らかになったと言えます。

ただし、「肉類は、年齢階級が上がるとともに摂取量が減少しやすい」こともあり、今後、「高齢者で肉類を効果的に摂取する方法」(例えば、どのような調理をすれば高齢者でも食べやすくなるのか?肉類摂取量はどの程度が好ましいのか?どのような肉類(牛?豚?鶏?ハムやソーセージなどの加工食品で良いのか?など)を摂取すればよいのか?など)や「肉類摂取を嫌がる高齢者の代替的なタンパク質摂取方法」なども併せて検討していくことに期待が集まります。



病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo

【関連記事】

皮膚へのやさしい刺激が肩こり症状を緩和する可能性—都健康長寿医療センター研究所
フレイル度の高い高齢者は就業中の転倒・転落事故が多い!フレイル度を踏まえた業務選択などが重要!―都健康長寿医療センター研究所
ペット、とりわけ犬の飼育が「運動の継続」→「要介護状態等の予防」→「介護費の軽減」につながる!—健康長寿医療センター研究所
「ペットの飼育」は介護予防だけでなく「介護費の軽減」にも効果あり!—健康長寿医療センター研究所

認知症患者が自由なテーマで話し合う本人ミーティングの実践が、地域共生社会の構築の第1歩—健康長寿医療センター研究所
糖尿病性認知症のバイオマーカー候補を発見、血液診断で「糖尿病性認知症の超早期鑑別」が可能な時代に—健康長寿医療センター研究所
血液診断によって「近く要介護・要支援状態に陥る可能性の高い人」を鑑別できる時代が来る—健康長寿医療センター研究所
後期高齢者、歯科受診により急性期疾患(肺炎、脳卒中、尿路感染症)での入院発生割合を抑制—都健康長寿医療センター
認知症の原因疾患を鑑別し、治療法選択・その効果測定を補助する「PET検査」の保険適用に強い期待—都健康長寿医療センター
食べ物を飲み込む際の「喉の刺激」によりサイロキシン・カルシトニン分泌が活性化され、心身の健康が高まる—都健康長寿医療センター
口腔状態に問題ある高齢者は要介護や死亡リスクが2倍超、地域で「オーラルフレイル改善」の取り組み強化を—都健康長寿医療センター
コロナ禍で「要介護1・2高齢者等を介護する家族」の介護負担が増し、メンタルヘルス不調を来す—都健康長寿医療センター
DHAやEPA、ARAを十分に摂取することで「認知機能を維持できる」可能性—長寿医療研究センター
「ゆっくりとした歩行」「軽い家事活動」などの低強度身体活動も、脳機能の維持に有用—長寿医療研究センター
治療抵抗性の前立腺がん、新治療法として「RNA分解酵素を標的とする薬剤」に期待—都健康長寿医療センター
男女ともビタミンC摂取不足で筋肉量・身体能力が低下するが、適切な摂取で回復可能—都健康長寿医療センター
自治体と研究機関が協働し「地域住民の健康水準アップ」を目指すことが重要—都健康長寿医療センター
日本人特有の「レビー小体型認知症の原因遺伝子」を解明、治療法・予防法開発に繋がると期待—長寿医療研究センター
日本人高齢者、寿命の延伸に伴い身体機能だけでなく「認知機能も向上」—長寿医療研究センター
フレイル予防・改善のため「運動する」「頭を使う」「社会参加する」など多様な日常行動の実施を—都健康長寿医療センター
「要介護度が低い=家族介護負担が小さい」わけではない、家族介護者の負担・ストレスに留意を—都健康長寿医療センター
奥歯を失うと、脳の老化が進む—長寿医療研究センター
介護予防のために身体活動・多様な食品摂取・社会交流の「組み合わせ」が重要—都健康長寿医療センター
高齢男性の「コロナ禍での社会的孤立」が大幅増、コロナ禍で孤立した者は孤独感・コロナへの恐怖感がとくに強い—都健康長寿医療センター
中等度以上の認知症患者は「退院直後の再入院」リスク高い、入院時・前から再入院予防策を—都健康長寿医療センター
AI(人工知能)用いて「顔写真で認知症患者を鑑別できる」可能性—都健康長寿医療センター
認知症高齢者が新型コロナに罹患した場合の感染対策・ケアのマニュアルを作成—都健康長寿医療センター
地域高齢者の「社会との繋がり」は段階的に弱くなる、交流減少や町内会活動不参加は危険信号―都健康長寿医療センター
新型コロナ感染防止策をとって「通いの場」を開催し、地域高齢者の心身の健康確保を―長寿医療研究センター
居住形態でなく、社会的ネットワークの低さが身体機能低下や抑うつ等のリスク高める―都健康長寿医療センター
孤立と閉じこもり傾向の重複で、高齢者の死亡率は2倍超に上昇―健康長寿医療センター
新型コロナの影響で高齢者の身体活動は3割減、ウォーキングや屋内での運動実施が重要―長寿医療研究センター