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「生活習慣病の管理、運動、栄養指導、認知トレーニング」が認知機能低下の抑制・フレイル予防に有効—長寿医療研究センター

2023.10.19.(木)

「生活習慣病の管理、運動、栄養指導、認知トレーニング」から構成される多因子介入プログラムには、「認知機能の改善」「身体フレイルの予防」効果がある—。

長寿医療研究センターが10月10日に、こうした研究成果を発表しました。名古屋大学、名古屋市立大学、藤田医科大学、東京都健康長寿医療センター、SOMPOホールディングス社との共同研究です(長寿医療研究センターのサイトはこちら)。

多因子介入プログラムの継続参加が重要

認知症患者は、2018年に500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」という状況を迎えましたが、2025年には約700万人(同じく5人に1人)、2040年には約800-950万人(同じく約4-5人に1人)に達すると見込まれています。

政府もこうした状況を重く見て、認知症対策の充実・強化に向け、新オレンジプランを大改革した「認知症施策推進大綱」を2019年6月に取りまとめました。そこでは、「認知症の人との共生」「認知症の予防(発症を遅らせる)」を目指し、(1)普及啓発・本人発信支援(2)予防(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援(4)認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援(5)研究開発・産業促進・国際展開―という5つの柱を打ち立てています(関連記事はこちら)。また、介護保険制度改革においても「認知症対策」が重要な柱の1つに位置づけられています(関連記事は こちら)。

このうち(2)の認知症予防に関連し、長寿医療研究センター等の研究グループは「多因子介入プログラムの認知機能低下抑制効果」に着目。今般、65-85歳の「軽度認知障害を有する高齢者」531名を対象に、18か月間のランダム化比較試験(「「多因子介入プログラムを受けるグループ」と「そうでないグループ」との間で認知症機能がどのように異なるのか」を実施し、その効果を検証しました (J-MINT研究:Japan-multimodal intervention trial for prevention of dementia)。

「多因子介入プログラムを受けるグループ」では、リストバンド型活動量計、セルフモニタリング用のファイル、タブレットPCが配布され、▼糖尿病や高血圧などの生活習慣病の管理▼週1回の頻度の運動教室(1回90分、全78回)参加▼栄養に関する面談と電話相談(全15回)▼タブレットPCを用いた認知トレーニング(BrainHQ)—が提供されました。

一方、「そうでないグループ」では、「生活習慣病の管理」と「2か月に1回の頻度での健康情報」が提供されました。

本研究の概要



両グループにおける「18か月間の認知機能の変化」を比較すると、次のような状況が明らかになりました。

▽主要評価項目である「認知機能のコンポジットスコア」に統計学的な有意差はなかった

▽アルツハイマー病の危険因子として知られている「アポリポ蛋白E遺伝子のE4多型の保因者」に絞ると、「多因子介入プログラムを受けるグループ」では認知機能が維持され、18か月間の認知機能の変化に統計学的な有意な差があった

多因子介入プログラムには「アポリポ蛋白E遺伝子のE4多型の保因者」の認知機能低下を抑制する効果が認められた



また、新型コロナウイルス感染症の影響で、多因子介入プログラムの提供を一時中断せざるを得ない状況となったこと、身体疾患など様々な理由で運動教室に参加できなかった高齢者もおられたことから、「多因子介入プログラムを受けるグループ」を▼全78回の運動教室の70%以上に参加したグループ▼70%未満であったグループ—に分け、認知機能の変化を比較すると、次のような状況が明らかになりました。

▽「70%以上グループ」では、「70%未満グループ」「そうでないグループ」に比べて、認知機能が「改善」していた

▽「70%以上グループ」は、「そうでないグループ」と比較して、▼食物多様性▼血圧▼BMI(Body mass index)▼身体組成(脂肪量、筋肉量)▼運動機能(歩行速度、5回椅子立ち座り時間)などの改善が認められた

▽「70%以上グループ」では、「そうでないグループ」に比べて身体的フレイルの割合が少なかった(そうでないグループの8%が身体的フレイルになったが、70%以上グループでは1%にとどまった)

運動教室の参加率が高いグループでは、認知機能の改善、身体フレイル予防の効果が見られた



長寿医療研究センター等の研究グループは、▼多因子介入プログラムには「アポリポ蛋白E遺伝子のE4多型の保因者」の認知機能低下を抑制する効果がある▼継続して多因子介入プログラムに参加する(70%以上参加)ことで「認知機能の改善」「フレイル予防」の効果がある—と分析。「我が国の認知症発症を減少させる大きな第1歩となる」と期待を寄せています。



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