カマンベールチーズの摂取、通常歩行速度が速い、嚥下機能の維持などが「認知機能の維持」と重要な関係—都健康長寿医療センター他
2024.10.17.(木)
カマンベールチーズの摂取、年齢が若いこと、通常歩行速度が速い、嚥下機能の維持などが「認知機能の維持」と重要な関係を持っている—。
東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)・桜美林大学(東京都町田市)・明治社(東京都江東区)が10月15日、こうした研究成果を発表しました(研究所のサイトはこちら)。
高齢者の食事メニューや運動プログラムなどの検討において重要な参考資料となるでしょう。
カマンベールチーズ摂取者は、他のチーズ接種者よりも認知機能のスコアが高い
少子高齢化が進展しています。2022年度から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、来年度(2025年度)には全員が後期高齢者となります。このため介護ニーズが今後急速に増大していきます。
一方、支え手となる現役世代人口は、2025年度から2040年度にかけて急速に減少していくことが分かっています。
少なくなる一方の支え手(サービス提供者、費用負担者)で、増大する一方の高齢者(サービス利用者、受益者)を支えなければならず、「どのように効果的・効率的に要介護者を支えていくか」(サービス提供の生産性向上、介護費の負担の公平化など)を考えていくとともに、「要介護者の発生をいかに防止していくか、要介護状態になったとしてもいかに重度化を防止するか」という視点が極めて重要になっています(関連記事はこちら)。
介護予防・重度化防止において「筋力の維持・向上」が重要です。筋力が弱まれば、ADLが低下する、転倒しやすくなるといった弊害が生じ、結果「要介護度の悪化、認知機能の低下」などに繋がってしまうためです。
そうした中で都健康長寿医療研究センターではこれまでに、「お肉」や「ビタミンC」、「チーズ」などの摂取が「筋力の維持・向上」に効果的であるとの研究成果を発表しています。
さらに今般、都健康長寿医療研究センター研究所・桜美林大・明治社の研究グループは「チーズの種類」などにも着目した研究を実施。具体的には、東京都板橋区に在住(施設入居者でなく、自宅生活を送っている)する65歳以上の高齢女性(1035名)を▼週1回以上カマンベールチーズを摂取するグループ▼週1回以上他のチーズを摂取するグループ▼それ以外のグループ—に分け、生活習慣の状況や身体状況、認知機能の状況などを調査・分析しました。
その結果、次のような結果が得られました。
▽「チーズ摂取者」(全体の85.3%)は、「チーズ非摂取者」に比べて次のような特徴がある
▼牛乳を摂取している人の割合が高い
▼認知機能を評価する指標である「MMSEスコア」が高い値を示す(スコアが低いほど認知機能低下が疑われる)
▼ふくらはぎの周囲径が大きい
▼握力が強い
▼通常歩行速度が速い
▼食品摂取多様性スコアが高い
▼老年期うつ病を評価する指標である「GDS(Geriatric Depression Scale)スコア」が低い値を示す(スコアが高いほどうつ傾向が疑われる)
▽「カマンベールチーズ摂取者」(全体の12.2%)は、「他のチーズの摂取者」に比べて、「MMSEスコア」が高い値を示すという特徴があった(カマンベールチーズ摂取者:28.7±1.4、他のチーズの摂取者:28.3±2.0、p=0.006)
▽被験者のうちMMSEスコアが20点以上26点以下の者を「軽度認知機能低下(Mild Cognitive Decline、MCD)グループ」としたとき、この集団の被験者(全体の14.8%)は、MMSEスコアが26点超の集団と比べて、次のような特徴がある
▼年齢が高い
▼ふくらはぎの周囲径が小さい
▼握力が弱い
▼通常歩行速度が遅い
▼嚥下機能が低い
▼血中アルブミン濃度が低い
▼GDSスコアが高い
▽ロジスティック回帰分析の結果、MCDと関連する因子として▼年齢▼通常歩行速度▼嚥下機能▼カマンベールチーズの摂取状況—が重要である
こうした結果を踏まえて研究グループでは、次のように結論づけています。
●地域に在住する日本の高齢女性において、チーズの中でもカマンベールチーズを日常的に摂取することが認知機能の高さと関連性がある
●「年齢が若い」、「通常歩行速度が速い」、「嚥下機能が維持できている」ことも認知機能の高さと関連する重要な因子である
今後、「カマンベールチーズをどの程度の量・頻度で食べることが、認知機能維持のために重要であるのか」「チーズ嫌いな場合の代替食物はないのか」「カマンベールチーズと他のチーズとの違いはどこにあるのか」などの点も併せて検討していくことに期待が集まります。あわせて、病院や高齢者施設などにおいて「高齢者の食事には、積極的にカマンベールチーズを取り入れていく」ことなどの検討も重要と考えられます。
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