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「チーズの摂取」「歩行の速度が速い」「ふくらはぎが太い」ことが認知機能の高さと強く関連―都健康長寿医療センター研究所

2023.11.13.(月)

「チーズの摂取」が認知機能の高さと関連する—。

「年齢を重ねていない」「通常歩行速度が速い」「ふくらはぎの周囲径が大きい」ことも認知機能の高さと深く関連する—。

東京都健康長寿医療センター研究所が先頃公表した研究成果から、こうした点が明らかになりました(研究所のサイトはこちら)。

「チーズの摂取」「通常歩行速度が速い」「ふくらはぎの周囲径が大きい」ことが重要

認知症患者は、2018年に500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」という状況を迎えましたが、2025年には約700万人(同じく5人に1人)、2040年には約800-950万人(同じく約4-5人に1人)に達すると見込まれています。

政府もこうした状況を重く見て、認知症対策の充実・強化に向け、新オレンジプランを大改革した「認知症施策推進大綱」を2019年6月に取りまとめました。そこでは、「認知症の人との共生」「認知症の予防(発症を遅らせる)」を目指し、(1)普及啓発・本人発信支援(2)予防(3)医療・ケア・介護サービス・介護者への支援(4)認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援(5)研究開発・産業促進・国際展開―という5つの柱を打ち立てています(関連記事はこちら)。また、介護保険制度改革においても「認知症対策」が重要な柱の1つに位置づけられています(関連記事は こちら)。



そうした中で、都健康長寿医療研究センター・桜美林大学・株式会社明治は「乳製品と認知機能の関連性」に着目。具体的には、東京都板橋区に在住する65歳以上の日本人高齢者男女を対象に、「チーズの摂取」と「認知機能」の関係を調査したところ、次のような結果が得られました。

▽「チーズ摂取者」(週に1回以上チーズを摂取する人)は、チーズ非摂取者と比較して▼通常歩行速度が速い▼歯の残存本数が多い▼血中の善玉コレステロール(HDLコレステロール)が高い—という特徴がある

▽「チーズ摂取者」は、チーズ非摂取者より牛乳を摂取している人の割合が高く、▼尿失禁の頻度が低い▼認知機能を評価する指標であるMMSE(Mini-Mental State Examination:認知機能障害を簡易にスクリーニングする、国際的に最も使用頻度の高い指標で、23点以下では認知機能低下または認知症が疑われる)のスコアが高い(認知機能が良好である)—という特徴がある

▽「チーズ摂取」と「認知機能」に関して欠損のないデータが取得できた1504名について、「MMSEスコア23点以下」を認知機能低下(LCF)として分類したとき、LCF該当者は調査対象者全体の4.6%程度(69名)を占め、この集団は「MMSEスコア23点超の高齢者集団」と比べて、▼ふくらはぎの周囲径が小さい▼通常の歩行速度が遅い▼貧血の頻度が高い—という特徴がある

▽LCF(認知機能低下)と関連する因子として、▼チーズの摂取状況▼年齢▼通常歩行速度▼ふくらはぎの周囲径—が重要である

「チーズ摂取」と「認知機能維持」との間には重要な関係がある(都健康長寿医療研究センター 231019)



こうした結果から、「チーズの摂取が認知機能の高さと関連する」「年齢を重ねていないこと、通常歩行速度が速いこと、ふくらはぎの周囲径が大きいことも認知機能の高さと関連する重要な因子である」ことが確認できます。

今後、「チーズをどの程度の量・頻度で食べることが、認知機能維持のために重要であるのか」「チーズ嫌いな場合の代替食物はないのか」なども併せて検討していくことに期待が集まります。あわせて、病院や高齢者施設などにおいて「高齢者の食事には、積極的にチーズを取り入れていく」ことなどの検討も重要でしょう。



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