魚介類の摂取等により「タウリンを摂取」することが、筋力維持に良い影響を与える—国立長寿医療研究センター
2024.7.30.(火)
食事からの「タウリン」摂取量が多いと、8年後の脚の筋力(膝伸展筋力)が維持される傾向にある—。
国立長寿医療研究センターが7月25日に、こうした研究成果を明らかにしました(研究センターのサイトはこちら)。大正製薬社、北翔大学との共同研究結果です。
魚介類を取り入れた栄養バランスの良い食生活が健康寿命の延伸に重要
2022年度から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。このため介護ニーズは今後急速に増大していきます。
一方、支え手となる現役世代人口は、2025年度から2040年度にかけて急速に減少していきます。
少なくなる一方の支え手(サービス提供者、費用負担者)で、増大する一方の高齢者(サービス利用者、受益者)を支えなければならず、「どのように効率的に要介護者を支えていくか」(サービス提供の生産性向上、介護費の負担の公平化など)とともに、「要介護者の発生をいかに防止していくか、要介護状態になったとしても、いかに重度化を防止するか」が重要になっています。
介護予防・重度化防止において「筋力の維持・向上」が重要です。筋力が弱まれば「ADLが低下する→転倒しやすくなる」といった弊害が生じ、結果「要介護度の悪化、認知機能の低下」などに繋がってしまうためです。
そうした中で長寿医療研究センター・大正製薬社・北翔大学の共同研究チームは、「タウリン」と「筋力」との関係に着目し、「NILS-LSA」(長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究)の縦断解析を行いました。NILS-LSAは、愛知県大府市・東浦町の地域住民から性・年代別に層化無作為に選出された40歳以上の中高年者を対象に、医学・心理・運動・身体組成・栄養など多角的な観点から老化・老年病予防策を検討するコホート研究です。
「タウリン」は魚介類、肉類、卵類等の食品から日常的に摂取されるアミノ酸です。ヒトの体重の約0.1%を占め、抗酸化/浸透圧調節等の多様な機能を有しており、「タウリン摂取が健康寿命を延長する」とのマウスやサル等の哺乳類を用いた先行研究があります。
本研究の調査対象者は、「NILS-LSA第3次調査:2002-2004年、ベースライン」と、そこから約8年後に行われた「NILS-LSA第7次調査:2010-2012年」の双方に参加し、食事秤量記録調査と体力測定を実施した40歳以上の男女1454名。解析項目は、ベースライン(2002-2004年)における「タウリン摂取量」と、8年間(「2002-2004」→「2010-2012年」)における体力指標の変化量(膝伸展筋力、長座位前屈、閉眼片足立ち、最大歩行速度)です。タウリン摂取量は、男2010年版日本食品標準成分表(1878品目)のうち751品目(海藻類、魚介類、肉類、卵類、牛乳・乳製品の5つの食品群を含む)から作成したタウリン含量表を用いて算出しています。
この解析から、下図のように「食事からのタウリン摂取量が多い」ほど、「膝伸展筋力が増加」(=脚の筋力を維持)していることが明らかとなりました(64歳以下ではタウリン摂取量が多いほど筋力が増加し、65歳以上ではタウリン摂取量が多いほど筋力低下度合いが小さい)。
なお、今回の解析集団では、食事由来のタウリンの約80%は「魚介類」からの摂取でしたが、近年、我が国では魚介類摂取量が低下しており、タウリン摂取量も低下傾向にある点が気になります。
研究チームでは「高齢化が進む我が国において、生涯を通して脚の筋力を維持することは、社会活動や運動習慣を保持し、健康で豊かな生活をおくるために重要な要素である。魚介類の摂取等によりタウリンを摂取することが筋力維持に良い影響を与える可能性が示唆されたことから、魚介類を取り入れた栄養バランスの良い食生活を継続することが健康寿命の延伸に重要である」とコメントしています。
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