認知症早期発見・早期介入モデル確立に向けた大規模研究開始、「認知症リスク早期発見のための手引き」作成目指す—長寿医療研究センターほか
2024.11.25.(月)
「日本独自の認知症早期発見・早期介入モデルの確立」に向けた大規模実証研究「J-DEPP研究」を開始した。認知症の早期発見から診断後支援までを含めた一貫した支援モデルの構築に向けて3つの課題に取り組み、自治体向けの「認知症リスク早期発見のための手引き」作成を目指す—。
国立長寿医療研究センター、東北大学、鳥取大学、鹿児島大学、秋田大学、神戸大学、医薬基盤・健康・栄養研究所、札幌医科大学、東京都健康長寿医療センターは11月21日に、こうした大規模実証研究「J-DEPP研究」(Japan Dementia Early Phase Project)を開始したことを明らかにしました(長寿医療研究センターのサイトはこちら)。
認知症リスクを早期に発見し、適切な病院受診勧奨、発症要望のための生活改善が重要
認知症患者数は、高齢化の進行に伴い増加していきます。2018年には500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」となり、2025年には675万人、2040年には802万人になると推計されています。このため、2019年には認知症施策推進大綱が、2023年には認知症基本法が制定され、認知症患者の意向を十分に踏まえた総合的な対策(認知症との共生、認知症予防など)を進めることとされています(本年(2024年)1月施行)。
現在、認知症に対する「根本的な治療法」は確立されていないものの、▼認知症と診断される前段階▼認知症の初期の段階—であれば、運動習慣や食生活の改善などにより認知機能低下の進行を抑えることが可能です。さらに、早期のアルツハイマー病の人を対象としたアルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬の臨床応用が進んでいます(関連記事はこちらとこちら)。
こうした状況を踏まえれば、「認知症のリスクをできるだけ早期に発見し、適切な医療やケア等の診断後支援につなげる」ための研究・臨床実装が極めて重要であることを確認できます。
そこで、研究チームでは「日本独自の認知症早期発見・早期介入モデルの確立」に向けた大規模実証研究「J-DEPP研究」を開始。認知症の早期発見から診断後支援までを含めた一貫した支援モデルの構築に向けて3つの課題に取り組み、自治体向けの「認知症リスク早期発見のための手引き」作成を目指しています。
(1)認知症リスク早期発見の大規模実証
(2)認知症リスクを調べるための検査の基準値の設定
(3)認知症リスク早期発見に向けた血液バイオマーカーの有用性の検証
まず、(1)の「認知症リスク早期発見の大規模実証」では、認知症リスクの早期発見のために「適切かつ効果的なスクリーニング検査受検の呼びかけ方法」「スクリーニング検査の実施方法」「病院受診を促す方法」を検討します。具体的には、全国の1万名超の高齢者を対象に、「自治体の特性に合わせた様々な方法でのスクリーニング検査」→「詳細な検査が必要と判断された方への病院受診勧奨」→「数か月後に追跡調査し、実際に病院を受診したか、受診後の予防に向けた活動、地域包括支援センターや認知症カフェ等の地域資源との連携を含む診断後支援(本人・家族支援)の実態調査」を行います。
こうした調査により、「地域ごとにどういったスクリーニング検査を実施することが適切なのか、どういった呼びかけ方法が効果的なのか」「医療機関の受診や予防に向けた活動のハードルはどこにあるのか」などを明らかにします。
(2)の「認知症リスクを調べるための検査基準値」に関しては、約1000名の高齢者(愛知県・宮城県から各約500名)を対象に「複数の認知機能スクリーニング検査」を実施し、検査間で認知機能低下の判定結果に差異が生じないような基準値を明らかにします。これにより、どの検査を選択しても「全国で統一的な基準で病院受診を勧奨できる」ようになると期待されます。
さらに(3)の「認知症リスク早期発見に向けた血液バイオマーカーの有用性」に関しては、地域でスクリーニングされた「認知機能低下の疑いのある者」を対象に、認知症に関連した血液バイオマーカーの検査を行って検証します。「通常の診察や脳MRI等の検査で診断した場合」と、「これらに血液バイオマーカーの情報を加えた場合」の診断精度の違い、とりわけ新たな認知症治療薬(レケンビ、ケサンラ等)の対象患者選定にどの程度有用なのかを明らかにしていきます。
さらに、(2)の約1000名の高齢者を対象とする「認知機能のスクリーニング検査の標準化」研究と、(3)の血液バイオマーカーを組み合わせて「認知症のリスク保有者を早期、かつ高精度に発見する」方法の開発も行います。
こうした研究により、「認知症リスクの早期発見・早期治療、予防に向けた生活習慣の見直し」方法の確立がなされ、結果、「認知症に対する抵抗感の軽減→早期発見・早期治療の考え方が一般国民に浸透する」ことに期待が集まります(関連記事はこちら)。
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