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社会的孤立は認知機能低下等に関連するが、「孤立の種類」に応じた社会参加支援策等が重要—都健康長寿医療センター他

2024.10.24.(木)

「社会的ネットワークに基づく社会的孤立」、つまり他者との日常的な交流が少ない人は、記憶に関連する「海馬」の容積の減少が大きい。日常的な脳への刺激が少ないことなどが原因と考えられる—。

一方、「世帯構成に基づく社会的孤立」、つまり独居者では、(者)は、「海馬」の容積の減少が緩やかである。1人暮らしゆえに日常家事等を自分自身で行っていること、周囲の見守り対象となり他者との交流が比較的多いことが要因と考えられる—。

社会的孤立は認知機能低下等に関連するが、「孤立の種類」に応じた社会参加支援策等が重要と考えられる—。

東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)、新潟大学(新潟県新潟市)、東京医科大学(東京都新宿区)、東京科学大学(旧・東京医科歯科大学、東京都目黒区)が10月23日に、こうした研究成果を発表しました(研究所のサイトはこちら)。

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都健康長寿医療センターでは、社会参加と健康との関連について精力的に研究を行っており、これまでに例えば▼日常生活が自立している健康な高齢者であっても、「社会的な孤立」および「閉じこもり傾向」が重積している場合には、どちらにも該当しない場合に比べて死亡率が極めて高くなる健康状態に問題のない高齢者では、居住形態(独居か、家族と同居か)ではなく、「他者とのつながりが乏しい者」(社会的孤立者)ほど「身体機能低下」「抑うつ」「要介護状態」などのリスクが高い地域高齢者の「社会との繋がり」は段階的に弱くなり、周囲との交流減少や町内会活動への不参加は「社会的孤立」に向かう危険信号である「独りでいることを好む人」でも、社会的孤立による悪影響は緩和されない社会参加が「高齢者の生活機能維持」に大きく寄与する—ことなどを明らかにしています。

こうした研究成果を踏まえれば、高齢化がますます進展する(2025年度までに、いわゆる団塊の世代すべてが後期高齢者となる(高齢者数の増加)、その後、高齢者数そのものは大きく増加しないものの、2040年頃にかけて85歳以上の高齢者比率が著しく高まっていく)中で「社会的孤立をいかに防ぐか」が極めて重要な施策になることは述べるまでもないでしょう。

さらに今般、研究チームは「社会的孤立が認知機能低下などになぜつながるのか?どういったメカニズムがあるのか」に着目。

65歳以上の地域在住高齢者(新潟県十日町市で実施した研究「NEIGE Study」のうち2017年調査・2021年調査の双方に参加した65-84歳・279名、男性49.5%、平均年齢72.3歳)のデータを用いて、「記憶を司る脳部位である『海馬』の容量変化」と「社会的孤立」との関係について研究を行いました。

このうち「海馬」の容量はMRI検査(2017年・2021年の双方で実施)結果をもとに計測(全体では2017年から21年にかけて4.5%減少)。

「社会的孤立」については、次のように各種研究で取り上げられることの多い▼社会的ネットワーク(他者との交流頻度)▼世帯構成(独居か否か)—の2つの指標で計測しています。

▼社会的ネットワークに基づく社会的孤立
→別居の家族や親戚、あるいは友人や近所の人と「会ったり、一緒に出かけたりすること」「電話、FAX、メールなどのやりとり」による接触頻度の合計が週1回未満(全体の12.7%)
(解析では、週1回未満/週2回未満/週3回未満/週3回以上の4群で分類)

▼世帯構成に基づく社会的孤立
→「同居者なし」(すなわち独居、全体の8.6%)



分析の結果、次のような状況が明らかになりました。

▽「社会的ネットワークに基づく社会的孤立」(別居の家族や友人等と会ったり、電話したりが週1回未満)の者は、これらの頻度が週3回以上の者に比べて「海馬容積の減少」が大きかった

▽独居者(世帯構成に基づく社会的孤立者)は、誰かと同居している者に比べて「海馬容積の減少」が緩やかだった

▽これらの関連には、性別や年齢による違いはなかった

社会的孤立と海馬容量変化との関連



研究チームは、これらの結果をもとに▼「社会的ネットワークに基づく社会的孤立」が海馬容量の減少に関連していたのは、他者との関係が希薄であるために「日常的な脳への刺激が少ない」→「海馬の萎縮が進んだ」ためと考えられる▼周囲の関係性の中から得られるソーシャルサポート(様々な支援)はストレスを緩和する効果が知られているが、ストレスは脳萎縮を進行させるため、こうしたサポートを得る機会が少ない孤立者の海馬は萎縮しやすかった可能性も考えられる—と分析。

また、「独居者の海馬萎縮のスピードは緩やであった」点については、▼1人暮らしでは、家事などの身の回りのことは基本的に自分で行う必要があり、自らで生活を営むことが脳に刺激をもたらし、それが海馬萎縮の「抑制」につながった可能性がある▼自治体等が1人暮らし高齢者支援を行ったり、コミュニティでは1人暮らし者は「見守り活動」の対象になることが多くあり、独居者は、周囲からの支えを得やすい環境にあるが、これらのフォーマル・インフォーマルな支援が独居者の安心に寄与し、ストレス軽減→脳萎縮の抑制につながった可能性もある—と分析しました。

研究チームでは、本研究結果が「認知機能低下や認知症発症の社会的メカニズムの解明」に寄与すると期待したほか、「『孤立』をひと纏めに考えるのではなく、孤立の種類を把握し、それに応じた対策を講じていくことが重要である」とまとめています。



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