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「社会参加」が高齢者の生活機能維持に寄与、ただし性別・年齢・社会参加の内容により効果が異なる点に留意—都健康長寿医療センター

2024.10.7.(月)

「社会参加」が高齢者の生活機能維持に寄与するが、「性別や年齢、どのような社会参加を行うか」で効果が異なる—。

東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)が先頃、こうした研究成果を発表しました(研究所のサイトはこちら)。

今後の高齢者政策においては、「社会参加の推進の必要性」をさらに重視していくことが必要です。

女性はどのような形の社会参加でも生活機能維持が期待できるが、男性では若干異なる

都健康長寿医療センターでは、社会参加と健康との関連について、▼日常生活が自立している健康な高齢者であっても、「社会的な孤立」および「閉じこもり傾向」が重積している場合には、どちらにも該当しない場合に比べて死亡率が極めて高くなる健康状態に問題のない高齢者では、居住形態(独居か、家族と同居か)ではなく、「他者とのつながりが乏しい者」(社会的孤立者)ほど「身体機能低下」「抑うつ」「要介護状態」などのリスクが高い地域高齢者の「社会との繋がり」は段階的に弱くなり、周囲との交流減少や町内会活動への不参加は「社会的孤立」に向かう危険信号である「独りでいることを好む人」でも、社会的孤立による悪影響は緩和されない—などの研究成果を発表しています。

高齢化がますます進展する(2025年度までに、いわゆる団塊の世代すべてが後期高齢者となる(高齢者数の増加)、その後、高齢者数そのものは大きく増加しないものの、2040年頃にかけて85歳以上の高齢者比率が著しく高まっていく)中では、「社会的孤立をいかに防ぐか」が極めて重要な施策になると考えられます。

今般、研究所では「高齢者の生活機能の変化パターン」と「社会参加」との関連性に着目した研究を実施。具体的には、2010年に行われた日本老年学的評価研究の「健康とくらしの調査」の回答者のうち、2016年までに死亡した65歳以上高齢者(全国19市町村、4502名)のデータを解析しました。

そこから、まず「高齢者の生活機能の変化パターン」については、死亡前3年間における生活機能の変化を、要介護認定データを用いて▼自立▼要支援1▼要支援2▼要介護1▼要介護2▼要介護3▼要介護4▼要介護5—の8段階で評価し、大きく次の5パターンに分けられることがわかりました。
(1)自立を維持
(2)急激に悪化
(3)徐々に悪化
(4)中等度認定を維持
(5)重度認定を維持

社会参加と生活機能維持との関係1



また社会参加については、次の3種類で定義。
(a)平等的な関係を特徴とする水平グループ(ボランティア、スポーツ、趣味)への参加
(b)階層的な関係を特徴とする垂直グループ(老人クラブ、町内会、政治団体、業界団体、宗教団体)への参加
(c)いずれかのグループへの参加



性別や年齢、教育年数、等価所得、がん・心臓疾患・脳卒中の既往、人口密度の影響を考慮したうえで、両者の関係を分析すると、次のような点が明らかになりまし。

▽「2010年時点で月に1回以上社会参加している高齢者」は、他の高齢者に比べ、「人生の最後まで自立を維持するパターン」を辿りやすい

▽「社会参加している高齢者」は、「(1)の自立維持パターン」の割合が、「(5)の重度維持パターン」よりも1.5倍多い(「重度維持パターン」が「自立維持パターン」の0.67倍である)

社会参加と生活機能維持との関係2



【性別、社会参加の内容別分析】
▽女性は、いずれのグループへの参加でも「(1)の自立維持パターン」となりやすいが、男性では「(b)の垂直グループ」へ参加した場合には、「(1)の自立維持パターン」となりやすいわけではない

【年齢別分析】
▽調査開始時に65〜74歳、75〜84歳の対象者では上記と同様の傾向があるが、85歳以上の対象者では、上記と同様の傾向はない



こうした結果を踏まえ、都健康長寿医療センター研究所の研究グループでは▼社会参加が高齢者の生活機能の維持に寄与する▼性別や年齢、参加するグループの特性(上記(a)―(c))によって異なる—と分析し、「今後の高齢者政策においては、『社会参加の推進の必要性』を強調することができる」と結論づけています。

少子高齢化が進行し、「少ない介護スタッフ」で「増加する要介護高齢者等」の支援を行わなければならず、そうした中では「要介護状態に陥らない、重度化を予防する」施策が非常に重要となります。本研究なども参考に「社会参加推進」による自立支援・重度化防止策を地域で検討・実施していくことに期待が集まります。



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