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「独りでいることを好む人」でも、社会的孤立による悪影響は緩和されない可能性が高い—都健康長寿医療センター

2024.9.9.(月)

若年世代・中年世代・高齢世代のいずれにおいても、「独りでいることを好む人(独り好き志向の高い人)」は精神的な健康度が低い傾向にある—。

「独りでいることが好き」であっても、社会的孤立による精神的健康への悪影響は弱まらない—。

東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)が9月4日に、こうした研究成果を発表しました(研究所のサイトはこちら)。「独り好き」な人であっても、「積極的に地域コミュニティに参加する」よう促すことが重要と考えられます。

社会的孤立は精神的健康度に悪影響を及ぼし、「独り好き」であっても同様

これまでに都健康長寿医療センターでは、▼日常生活が自立している健康な高齢者であっても、「社会的な孤立」および「閉じこもり傾向」が重積している場合には、どちらにも該当しない場合に比べて死亡率が極めて高くなる健康状態に問題のない高齢者では、居住形態(独居か、家族と同居か)ではなく、「他者とのつながりが乏しい者」(社会的孤立者)ほど「身体機能低下」「抑うつ」「要介護状態」などのリスクが高い地域高齢者の「社会との繋がり」は段階的に弱くなり、周囲との交流減少や町内会活動への不参加は「社会的孤立」に向かう危険信号である—などの研究成果を発表しています。

高齢化がますます進展する(2022年度から、いわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度にはすべてが後期高齢者となる)中では、「社会的孤立をいかに防ぐか」が極めて重要な施策になると考えられます。

今般、研究所では「こうした社会的孤立状態が精神的健康度に及ぼす悪影響」と「他者との関わり合いに関する嗜好性、つまり他者との交流を好むかどうかの違い」とか、どのように関係するのかに着目した研究を実施。

具体的には、関東在住9000名(20-39歳の若年者3000名、40-59歳の中年者3000名、60-79歳の高齢者3000名)を対象に、▼独り好きの志向性▼社会的孤立▼精神的な健康状態—の関連性、「独り好きの志向性」と「精神的健康状態」との間に「人付き合いの煩わしさ」がどのような役割を果たしているのかを調査・分析しました。
(各項目の定義・測定方法など)
▼独り好きの志向性:Preference for Solitude Scaleという質問票で調査
▼社会的孤立:「同居家族『以外』との対面・非対面のコミュニケーション頻度が両者を合わせて週1回未満の者」を社会的孤立と定義
▼精神的な健康状態:ウェルビーイング、悩み・抑うつ傾向、主観的孤独感で測定



その結果、「すべての世代」を通じて次のような点が明らかになりました。

▽「独り好きの志向性が高い人」、もしくは「社会的孤立者」ほど、精神的健康度が低い(下図ではウェルビーイングの低さを示しているが、上記のすべての項目で健康度が低い)

「独り好きの志向性が高い人」、もしくは「社会的孤立者」ほど、精神的健康度が低い



▽「独り好きの志向性」による「社会的孤立者の精神的健康度悪化」の緩和作用はない

▽「独り好きの志向性が高いこと」と「精神的健康度が低いこと」の関連は、「人付き合いの煩わしさ」によって部分的に説明(媒介)される



研究チームでは「一時点の関連性を調べたもので、因果関係を示す結果ではないため、解釈には注意が必要」と前置きしたうえで、次のように指摘しています。

▽無条件に「独りでいることが好きだから、社会的に孤立していても精神的には健康でいられる」とは言えない

▽かえって、「独り好きの傾向が強いと、精神的健康度が低い」傾向にある
→「独りが好き」が「人付き合いの煩わしさ」から生じている可能性が高いためと考えられる



研究チームでは、こうした結果を踏まえて「心の健康の面から見ると、『独り好き』として対人問題を正当化することは、あまり良い影響はない」とコメントしています。



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