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GemMed塾 病床ユニット

地域医療構想実現に向けた取り組み、依然地域間に大きなバラつき、非稼働の病床数は全国で3万5571床に—地域医療構想・医師確保計画WG(3)

2024.7.12.(金)

新型コロナウイルス感染症が落ち着いてきている中で、地域医療構想に向けた取り組みが各地域で進んでいることが確認できる。ただし、一部に「地域医療構想の実現に向けた目標設定」がなされていない地域や、管内医療機関の対応方針策定率が100%に達していない地域もあるなど、バラつきがある—。

2023年度における「非稼働病棟」の病床数は全国で3万5571床であり、都道府県の中には「許可病床数のうち6%が非稼働である」地域もある—。

7月10日に開催された「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」(「第8次医療計画等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)では、こうした状況報告も行われました(地域医療構想実現に向けたモデル推進区域指定等に関する記事はこちら、病床機能報告(2024年度報告、2023年度結果)に関する記事はこちら)。

7月10日に開催された「第15回 地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」

地域医療構想に向けた取り組みが各地域で進んでいるが、芳しくない地域もある

2025年をゴールとする【地域医療構想】の実現に向けた取り組みが進められています(関連記事はこちら)。

厚生労働省は、医療現場・自治体の取り組みを加速化するために次の2方針を固め、厚労省はその旨の通知を2022年3月に発出しています(厚労省サイトはこちら)。

(a)公立病院・公的病院等はもちろん、民間病院も含めた「すべての病院」において、2022・23年度中に「自院の機能・規模が、地域医療構想に照らして妥当なものとなっているのか」の再検証を行う

(b)2022年度に、2022年9月末・2023年3月末における再検証等の進捗状況を各都道府県から厚労省へ報告するとともに、各都道府県のホームページ等で公表する



ただし、こうした取り組みは日本全体として着実に進んではいるものの「地域ごとに、取り組み状況に大きなバラつきがある」ことから(関連記事はこちら)、厚労省は定期的に▼各構想区域の2025年における「病床機能報告上の病床数」と「地域医療構想で推計した病床数の必要量」との差異の状況▼当該差異が生じる医療提供体制上の課題▼当該課題を解消するための今後の取り組み—などを調査しています。今般、次のような本年(2024年)3月の状況がワーキングに報告されました。

▽「地域医療構想の推進に係る年度目標の設定」は全構想区域の91%で設定済(前年(2023年)9月時点と比べて21ポイント上昇)
→目標未設定の理由としては、▼医療機関の経営にも関係し、個々の実情を踏まえながら進める必要があり設定は困難▼地域の具体的な課題を設定できていない▼あくまでも地域の自主的な取組が基本である—など

地域医療構想推進目標の設定状況(地域医療構想・医師確保WG(3)1 240710)



▽「2023年度までに医療機関の対応方針策定率が100%となった構想区域」は全体の72%(前年(2023年)9月時点と比べて43ポイント上昇)
→100%未達の理由としては、▼依頼や催促しても応じない医療機関がある▼業務状況等により検討が進められていない▼地域で目指すべき方向性が定まっていない—など

医療機関対応方針の策定状況(地域医療構想・医師確保WG(3)2 240710)



▽措置済を含む「対応方針の合意・検証済」割合は医療機関単位で91%(前年(2023年)3月時点と比べて31ポイント増)、病床単位で96%(同20ポイント増)
→再検証対象医療機関に限れば、措置済を含む「対応方針の合意・検証済」割合は医療機関単位で93%(同32ポイント増)、病床単位で95%(同30ポイント増)

医療機関の対応状況検討方針1(地域医療構想・医師確保WG(3)3 240710)

医療機関の対応状況検討方針2(地域医療構想・医師確保WG(3)4 240710)

医療機関の対応状況検討方針3(地域医療構想・医師確保WG(3)5 240710)

医療機関の対応状況検討方針4(地域医療構想・医師確保WG(3)6 240710)



▽地域医療構想実現に向けた地域の協議・検証が「未開始」である医療機関は7%(前年(2023年)3月に比べて16ポイント減)
→未開始の理由としては、▼新型コロナ対応の経験を踏まえ改めて検討中▼医療機関の業務負担が大きい—など

協議・検証未開始の状況(地域医療構想・医師確保WG(3)7 240710)



▽措置済を含む「対応方針の合意・検証済」である再検証対象医療機関について、対応方針の内容を見ると、▼病床機能の見直し(急性期→回復期など)▼許可病床数の見直し(ダウンサイジング)▼病院機能の直し(地域密着機能など)▼再編・統合—などのほか、「従前どおり」も一部にある

対応方針の内容(地域医療構想・医師確保WG(3)8 240710)



▽地域医療構想調整会議の開催頻度は全体として高まっている

地域医療構想調整会議の開催状況1(地域医療構想・医師確保WG(3)9 240710)

地域医療構想調整会議の開催状況2(地域医療構想・医師確保WG(3)10 240710)



▽地域医療構想調整会議で「外来医療」論議を行っている割合は97%

地域医療構想調整会議における外来医療論議状況(地域医療構想・医師確保WG(3)11 240710)



▽地域医療構想調整会議で「外来医療」論議を行っている割合は50%(ただし、他の会議体で在宅医療論議を行っており、在宅医療論議が停滞しているわけではない)

地域医療構想調整会議における在宅医療論議状況(地域医療構想・医師確保WG(3)12 240710)



▽地域医療構想調整会議で「再編・統合」論議を行っている割合は、構想区域単位では22%(前年(2023年)9月と比べて1ポイント上昇)、都道府県単位では66%(同2ポイント上昇)

地域医療構想調整会議における再編論議状況(地域医療構想・医師確保WG(3)13 240710)



▽地域医療構想調整会議で「2025年の医療提供体制」論議を行っている割合は、「類似かつ近接」による再検証対象医療機関を有する構想区域では80%(前年(2023年)9月と比べて5ポイント上昇)、「診療実績が特に少ない」による再検証対象医療機関を有する構想区域では74%(同6ポイント上昇)

地域医療構想調整会議における2025年の医療提供体制論議状況(地域医療構想・医師確保WG(3)14 240710)



▽2023年度における地域医療構想調整会議でのデータ活用状況を見ると、▼病床機能報告データ:100%(前年度と変わらず)▼定量基準に基づくデータ:60%(同3ポイント上昇)▼DPCデータ:53%(同8ポイント上昇)▼国保データベースのデータ:32%(同4ポイント上昇)▼その他のデータ:45%(同11ポイント上昇)—

地域医療構想調整会議におけるデータ活用状況(地域医療構想・医師確保WG(3)15 240710)



コロナ禍で地域医療構想の実現に向けた議論を行おうにも行えない状況が続いていましたが、コロナ感染症の落ち着きとともに「地域医療構想の実現に向けた議論」が各地域で、これまでになく積極的に進んでいる状況が伺えます。ただし、「目標未設定の理由などを見ると、理由になっていないものも見られる。都道府県知事は責任をもって対応し、また病床の必要量(地域医療構想)と2025年病床数見込み(病床機能報告)との乖離原因の深堀利などを進める必要がある」(幸野庄司構成員:健康保険組合連合会参与)との厳しい指摘もあります。

厚労省は、「PDCAサイクルを通じて地域医療構想が推進されるよう、今後も定期的に構想区域の年度目標、医療機関の対応方針、地域医療構想調整会議、病床数の変化等の状況について把握・公表するとともに、地域別の病床機能等の見える化、データ分析支援、好事例の周知等により都道府県、医療機関等における取り組みを支援していく」考えを強調するとともに、「個別事情により進捗に遅れが出ているケースもあり、当該地域(都道府県)と協議・調整を進めていく」旨の考えも示しています。なお、推進区域やモデル推進区域(国による伴走支援を実施)の指定も進められており、今後の地域医療構想の実現に向けた取り組み状況に注目が集まります。。

非稼働病棟の病床数は日本全国で3万5571床、非稼働病床割合が6%を占める地域も

また7月10日のワーキングには、2023年度病床機能報告結果の速報値などとともに、「非稼働病棟の状況」も示されました。

非稼働病棟とは、ここでは「1年間、すべての病床で患者を一度も受け入れていない」病棟(つまり当該病棟に1年間、1人も患者が入院していない)を意味します。2023年度には、非稼働病棟の病床数は全国で「3万5571床」で、都道府県別に「許可病床数に占める非稼働病棟の病床数割合」(非稼働の病床数/許可病床数)をみると、1―6%とバラつきがあることが分かりました。

2023年度における非稼働病棟の状況(地域医療構想・医師確保WG(3)16 240710)



非稼働病棟については、昨年(2023年)3月の厚労省通知「地域医療構想の進め方について」において、▼非稼働の病床数の範囲内で、病床数を削減を内容とする許可の変更のための措置命令(公的医療機関等を対象)または要請(公的医療機関等以外の医療機関を対象)をする▼再稼働にあたっては、地域医療構想調整会議において当該医療機関に詳細な説明を求め、十分に議論する—といった対応を行うことが都道府県に求められています。今後も、この方針に沿った対応が続けられます。

なお、この点について「地域医療構想調整会議では、出席者が病院同士ということもあり非稼働病棟・病床について触れにくい状況もある。病床数削減に向けた知事の命令・要請が大きなポイントになる」(望月泉構成員:全国自治体病院協議会会長)、「非稼働の理由として、患者が減少していることもあれば、看護師等確保ができないこともある、その点を深掘りしていけるとよい」(大屋祐輔構成員:全国医学部長病院長会議「地域の医療及び医師養成の在り方に関する委員会」委員長)などの意見が出ています。こうした声も参考に、今後「非稼働病棟への対応」をさらに練っていく必要があるかもしれません(現在でも、非稼働の理由を聴取しているが、網羅的にはできていない)。

非稼働病棟に関し、地域医療構想調整会議での議論は一定程度行われているが、知事による病床削減命令・要請はなされていない(地域医療構想・医師確保WG(3)17 240710)





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