「ホルモン療法が効かない前立腺がん・乳がんへの新治療戦略」発見、他のがん種への応用にも期待—都健康長寿医療センター研究所
2024.12.13.(金)
「ホルモン療法が効かない前立腺がん・乳がんへの新しい治療戦略」を発見した。「他のがん種への応用」にも期待が集まる—。
東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)が12月6日に、こうした研究成果を発表しました(研究所のサイトはこちら)。
がんの発生や抑制を制御する「p53タンパク質」の機能を回復させる小分子を発見
我が国や欧米では、前立腺がんは男性で、乳がんは女性で非常に多いがんとなっています(関連記事はこちら)。
これらのがんに対しては、男性ホルモンや女性ホルモンの作用を抑える「ホルモン療法」を行うことが多くなっていますが、治療を継続すると薬剤や各種療法が効かなくなり、再発・難治化するという問題があります。このため、がんによる死亡者数も国内でそれぞれ1万人以上となっており、がん対策における大きな課題の1つとなっています。
研究チームでは、これまでに▼「ホルモン療法の効かない前立腺がんや乳がん」に対しては、これらのがんの組織において鍵となるタンパク質「PSF」の機能を抑える小分子があること▼この小分子は「PSFの増加している、ホルモン療法の効かないがん細胞」の増殖や実験動物内での腫瘍の増殖を抑える働きがあり、薬に応用できること—を明らかにしています。
さらに今般、「治療薬の候補となる小分子の構造を最適化することで、さらにがん細胞の増殖を抑制する機能を高める」ことに成功しました。
ところで、がんの発生や抑制を制御するタンパク質「p53」は、がん組織においてがんの発症に伴って「最も突然変異を生じるタンパク質」として知られています。様々ながんの悪性化では「p53タンパク質の変異による機能不全」が大きな要因になっていると考えられています(p53タンパク質が変異し、がんの発生や抑制を制御する機能を失ってしまう)。
この点、今回最適化された小分子によりPSFの働きを抑制すると、p53タンパク質の変異したがん細胞においても「p53タンパク質の機能回復」が認められました。さらに様々な検討を加えた結果、▼PSFには「新たな局面でp53タンパク質によりコントロールされている機能を抑制する作用」がある▼PSFを抑制することでp53タンパク質の「がんの発生や抑制を制御する機能」を回復させ、がん細胞の死滅を誘導する—ことを見出しました。
「p53タンパク質の変異したがんは、治療抵抗性となる」ことが問題となっています。今般の研究により「PSFを標的とする」ことが「p53タンパク質の変異したがん」(治療抵抗性となったがん)への新たな治療法開発につながると期待されます。つまり、今回の改良された薬剤候補分子は「がんに対する治療法の確立」に寄与すると考えられます。
研究所では、本研究は「前立腺がん、乳がんモデルへの治療効果を示す」にとどまらず、「p53タンパク質の変異が様々ながんの悪性化・治療抵抗性に関与することから、他のがん治療にも応用できる可能性がある」と展望しています。
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