2016年のがん罹患者は99万5132人、人口10万対罹患率は402.2―全国がん登録
2019.1.17.(木)
2016年のがん罹患者は99万5132人、人口10万対罹患率は402.2となった。男性では▼胃▼前立腺▼大腸▼肺▼肝―の、女性では▼乳房▼大腸▼胃▼肺▼子宮―のがん罹患が多い。また同じ部位のがんでも都道府県によって罹患率が大きく異なり、男性の胃がんでは新潟県が、女性の乳がんでは熊本県で罹患率が飛び抜けて高い―。
厚生労働省が1月16日に公表した「全国がん登録の概要」から、こういった状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。全国がん登録データの公表は初めての試みです。
男性では▼胃▼前立腺▼大腸、女性では▼乳房▼大腸▼胃―のがんが多い
2016年1月1日から「がん登録等の推進に関する法律」が施行され、全病院および指定診療所に、がん患者の罹患情報を都道府県へ届け出ることが義務付けられました。届け出情報を国(国立がん研究センター)の全国がん登録データベースで整理し、各種の調査研究に用いることになります(厚労省のサイトはこちら)。
このデータを集積し、解析することで、例えば「●●がんに罹患した人には○○治療を行うことが最適である」とのエビデンスを構築することが期待され、がん医療の質が飛躍的に向上すると見込まれます。
厚労省は今般、2016年1月1日から12月31日に登録された、我が国における全がん患者の情報を整理し、公表しています。
まず、2016年におけるがんの罹患数(上皮内がん除く)は99万5132人。国立がん研究センターの予測値(101万2000人)より2万人弱少ないことが分かりました(関連記事はこちら)。なお、1人の人が2つのがんに罹患した場合は「2人」とカウントすることになります。人口10万対の粗罹患率は784.0、我が国のモデル人口で調整した人口10万対の年齢調整罹患率は402.2となっています。
部位別に罹患数・年齢調整罹患率を見ると、上位5部位(つまり罹患者の多いがん)は次のようになっています。
【男性】
▼胃:9万2691人(男性全体の16.4%)・年齢調整罹患率73.9
▼前立腺:8万9717人(同15.8%)・68.3
▼大腸:8万9641人(同15.8%)・77.5
▼肺:8万3790人(同14.8%)・65.3
▼肝:2万8480人(同5.0%)・22.8
【女性】
▼乳房:9万4848人(女性全体の22.1%)・102.3
▼大腸:6万8476人(同16.0%)・47.3
▼胃:4万1959人(同9.8%)・26.5
▼肺:4万1634人(同9.7%)・27.2
▼子宮:2万8076人(同6.6%)・33.3
また「ある人が75歳に到達するまでにがんに罹患する割合」である累積罹患率(75歳未満)は、全部位で34.2、男性では▼大腸:6.8▼胃:6.2▼前立腺:6.0▼肺:5.5▼肝:1.9―、女性では▼乳房:8.7▼大腸:3.9▼子宮:2.7▼肺:2.4▼胃:2.1―などとなっています。
男性胃がんでは新潟県、女性乳がんでは熊本県で、罹患率が飛び抜けて高い
次に都道府県別・性別に年齢調整罹患率を見てみると、次のように大きなバラつきのあることが分かりました。
▽北海道 全体:503.2
▽青森 全体:506.5
▽岩手 全体:457.3
▽宮城 全体:460.9
▽秋田 全体:539.3
▽山形 全体:477.2
▽福島 全体:458.6
▽茨城 全体:450.0
▽栃木 全体:439.5
▽群馬 全体:429.4
▽埼玉 全体:461.5
▽千葉 全体:467.3
▽東京 全体:467.9
▽神奈川 全体:461.2
▽新潟 全体:502.3
▽富山 全体:473.2
▽石川 全体:479.9
▽福井 全体:456.3
▽山梨 全体:452.0
▽長野 全体:418.9
▽岐阜 全体:450.3
▽静岡 全体:439.4
▽愛知 全体:429.7
▽三重 全体:454.9
▽滋賀 全体:482.0
▽京都 全体:490.8
▽大阪 全体:487.6
▽兵庫 全体:489.8
▽奈良 全体:485.7
▽和歌山 全体:499.4
▽鳥取 全体:522.3
▽島根 全体:512.7
▽岡山 全体:458.6
▽広島 全体:477.7
▽山口 全体:489.3
▽徳島 全体:449.2
▽香川 全体:514.8
▽愛媛 全体:511.0
▽高知 全体:487.5
▽福岡 全体:491.7
▽佐賀 全体:491.1
▽長崎 全体:540.5
▽熊本 全体:443.2
▽大分 全体:436.4
▽宮崎 全体:476.2
▽鹿児島 全体:462.0
▽沖縄 全体:390.4
また、男性の年齢調整罹患率第1位である「胃」がん、女性の年齢調整罹患率第1位である「乳」がんについて、都道府県別に見てみると、次のような状況です。
【男性の胃がん】(全国平均73.9)
▽罹患率の高い3自治体:新潟県(114.6)、秋田県(111.0)、山形県(97.7)
▽罹患率の低い3自治体:沖縄県(29.3)、鹿児島県(52.9)、熊本県(53.7)
【女性の乳がん】(全国平均102.3)
▽罹患率の高い3自治体:熊本県(155.2)、神奈川県(113.1)、東京都(111.5)
▽罹患率の低い3自治体:島根県(82.2)、山口県(86.6)、岐阜県(87.5)
胃がんでは、最多の新潟県と最低の沖縄県の間に3.9倍の格差があります。また、乳がんでは、熊本県で罹患率が飛び抜けて高いことが分かりました。自治体別の年齢調整罹患率を、生活習慣に関するデータなどと付け合わせることで、これらの原因を推測するとともに、効果的な「がん予防」対策の構築も可能かもしれません。
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