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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

がんの5年生存率、全体で65.8%、乳がんで92.7%、肝臓がんで39.6%―国がん

2018.9.13.(木)

 2008年および09年にがんと診断された患者の5年生存率(がん以外の死亡原因を除去)は、全体では65.8%となり、5大がんについて見ると、▼胃がん:71.1%▼大腸がん:72.9%▼乳がん:92.7%▼肝臓がん:39.6%▼肺がん:40.0%—となった―。

国立がん研究センター(国がん)が9日12日に公表した「がん診療連携拠点病院等院内がん登録 2011年3年生存率、2008から09年5年生存率」から、このような状況が明らかになりました(国がんのサイトはこちら(概要)こちら(集計表)こちら(報告書))(前回調査の記事はこちら)。「3年生存率」「施設別の病期別5年生存率」の公表は、初の試みです。

5年生存率、前立腺がんは98.4%、膵臓がんは10.0%

 本稿では「5年生存率」の状況を見てみましょう。「3年生存率」等については、別途お伝えします。

今般の集計は、全国のがん診療連携拠点病院(2016年7月末で427施設)のうち、2008年、2009年診断例の生存状況把握割合が90%以上の251施設を対象に、50万1569症例を対象に行われました。2008年・09年の診断例を合算しているため、前回集計に比べて対象症例が21万8557件・72.2%増加しています。

生存率には、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた「実測生存率」と、がん以外の死亡原因を除去して計算した「相対生存率」があります。前者の実測生存率では、平均的な患者について疾患の経過を一定程度見通すことができ、後者の相対生存率では、がん対策の効果などを把握することができます。

がん全体の5年生存率を見ると、相対生存率は65.8%(前回集計に比べて0.6ポイント上昇)、実測生存率は58.5%(同0.5ポイント上昇)となりました。
 
 部位別(全臨床病期)に見てみると、5大がんでは、次のような状況です。概ね、前回調査に比べて上昇していますが、部位別に大きなバラつきがあります。

▼胃がん:相対・71.1%(前回調査に比べ0.7ポイント上昇)、実測・61.7%(同0.5ポイント上昇)
▼大腸がん:相対・72.9%(同0.3ポイント上昇)、実測・63.9%(同0.3ポイント上昇)
▼肝臓がん:相対・39.6%(同1.1ポイント上昇)、実測・34.7%(同1.8ポイント上昇)
▼肺がん:相対・40.0%(同0.9ポイント上昇)、実測・35.2%(同0.7ポイント上昇)
▼乳がん:相対・92.7%(同増減なし)、実測・88.6%(同0.2ポイント低下)

 また、その他の部位を見ると、次のようになっています。
▼食道がん:相対・43.7%(同0.3ポイント上昇)、実測・38.7%(同0.2ポイント上昇)
▼膵臓がん:相対・10.0%(同0.1ポイント上昇)、実測・8.9%(同0.1ポイント上昇)
▼子宮頸部がん:相対・75.6%(同増減なし)、実測・72.9%(同0.2ポイント上昇)
▼子宮体部がん:相対・82.5%(同0.3ポイント低下)、実測・79.5%(同0.3ポイント低下)
▼前立腺がん:相対・98.4%(同0.7ポイント上昇)、実測・82.4%(同0.7ポイント上昇)
▼膀胱がん:相対・70.9%(同0.3ポイント低下)、実測・58.2%(同0.6ポイント低下)

 
 また5大がんについて、病期(UICC TNM総合ステージ)別に5年生存率(相対)を見てみると、次のように「進行するにつれ、生存率が低下する」状況が再確認されました。早期診断・早期治療の重要性を改めて認識できます

【胃がん】
▼ステージI:94.9%▼ステージII:68.2%▼ステージIII:43.4%▼ステージIV:9.6%
【大腸がん】
▼ステージI:95.5%▼ステージII:88.4%▼ステージIII:76.7%▼ステージIV:18.5%
【肝臓がん】
▼ステージI:59.8%▼ステージII:41.7%▼ステージIII:16.1%▼ステージIV:3.9%
【肺がん】
▼ステージI:81.3%▼ステージII:47.9%▼ステージIII:21.7%▼ステージIV:4.8%
【乳がん】
▼ステージI:100.0%▼ステージII:95.7%▼ステージIII:80.6%▼ステージIV:37.8%
2008・09がん5年生存率 180912の図表
 
 国がんでは「乳がんでは、他の部位と比較して、比較的に若い世代の罹患が多く、より長期的な視野で見ていくことが重要」とコメントしています。すでに試みが始まっている「10年生存率」はもちろん、今後のデータ集積を踏まえた「15年」「20年」といった長期間の生存率を分析していくことになりそうです。

 
 なお、都道府県別・施設別の5年生存率も公表されています。都道府県別に、5大がんの病期別5年生存率(相対)について、上位3自治体を見てみると次のような状況です。

【胃がん】
▼全病期(全国平均71.1%):新潟県(79.4%)、京都府(77.2%)、東京都(76.9%)
▼ステージI(全国平均94.9%):長野県(98.5%)、東京都(98.2%)、奈良県(97.8%)
▼ステージII(全国平均68.2%):富山県(86.2%)、青森県(85.2%)、大分県(79.8%)
▼ステージIII(全国平均43.4%):佐賀県(63.7%)、石川県(54.8%)、福島県(53.5%)
▼ステージIV(全国平均9.6%):岡山県(14.6%)、島根県(13.7%)、千葉県(12.8%)

【大腸がん】
▼全病期(全国平均72.9%):新潟県(77.8%)、東京都(77.7%)、大阪府(77.6%)
▼ステージI(全国平均95.5%):群馬県・新潟県・長野県・香川県(100.0%)
▼ステージII(全国平均88.4%):滋賀県(98.9%)、宮崎県(95.0%)、埼玉県(94.0%)
▼ステージIII(全国平均76.7%):東京都(82.5%)、静岡県(82.1%)、青森県(81.8%)
▼ステージIV(全国平均18.5%):宮崎県(27.8%)、新潟県(25.6%)、鳥取県(23.0%)

【肝臓がん】
▼全病期(全国平均39.6%):山梨県(53.8%)、奈良県(52.5%)、岐阜県(48.7%)
▼ステージI(全国平均59.8%):山梨県(75.5%)、鳥取県(72.5%)、奈良県(72.0%)
▼ステージII(全国平均41.7%):徳島県(59.0%)、岐阜県(54.8%)、山梨県(54.3%)
▼ステージIII(全国平均16.1%):奈良県(38.1%)、佐賀県(32.2%)、青森県(30.3%)
▼ステージIV(全国平均3.9%):岡山県(28.6%)、長野県(6.9%)、広島県(5.9%)

【肺がん】
▼全病期(全国平均40.0%):鹿児島県(48.8%)、岡山県(47.7%)、東京都(47.6%)
▼ステージI(全国平均81.3%):鹿児島県(90.2%)、熊本県(88.9%)、宮崎県(87.6%)
▼ステージII(全国平均47.9%):徳島県(57.6%)、秋田県(55.9%)、東京都(55.2%)、
▼ステージIII(全国平均21.7%):鹿児島県(30.8%)、岡山県(29.7%)、奈良県(28.2%)
▼ステージIV(全国平均4.8%):徳島県(9.2%)、奈良県(9.1%)、長崎県(7.4%)

【乳がん】
▼全病期(全国平均92.7%):山梨県(96.3%)、石川県(95.6%)、島根県(95.1%)
▼ステージI(全国平均100.0%):—(多くの都府県で100.0%)
▼ステージII(全国平均95.7%):石川県・宮崎県(100.0%)、島根県(99.1%)
▼ステージIII(全国平均80.6%):島根県(94.8%)、滋賀県(89.7%)、山梨県(85.3%)
▼ステージIV(全国平均37.8%):岡山県(53.6%)、茨城県(52.2%)、熊本県(48.9%)

もっとも、国がんでは「患者の年齢などで大きく変動するため、単純な比較はできない」旨を強調している点に、留意が必要です。

 
 なお、全国100超のがん診療連携拠点病院等で構成される「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」(代表世話人:望月泉:八幡平市病院事業管理者・岩手県立病院名誉院長)では、実名でデータを持ち寄り、がん医療の水準向上に向けた研究を行っています。グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンが分析等を担当し、「DPCデータをもとにした各病院の治療内容・実績比較」「各病院のクリニカルパス比較」を可能とした会員サイトを設けています(CQI研究会のサイトはこちら)。

 
 
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