Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

特定機能病院への集中立入検査を6月から実施、目的は「実態把握」―厚生労働省

2015.5.15.(金)

 東京女子医科大学病院に群馬大学附属病院と連続して2つの特定機能病院が承認取り消しになることを重く見て、厚生労働省はすべての特定機能病院に対し集中的な立入検査を6月から実施します。

 立入検査では、(1)ガバナンス(2)高難度新規医療技術の導入(3)インフォームド・コンセント―の3点について、体制や運用方法などが調べられます。これは医療法第25条に基づく検査ですが、厚労省医政局の二川一男局長や、同局地域医療計画課の北波孝課長は「あくまで情報収集、実態把握が目的である」と強調しており、検査の結果「好ましくない状況」が発覚しても、それを直接の根拠とした指導などは行われない見込みです。

5月14日に開催された、「第1回 大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース」

5月14日に開催された、「第1回 大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース」

特定機能病院について、医療安全管理体制などを集中検査

 東京女子医大病院と群馬大病院の特定機能病院の承認取り消しでは、「医療安全管理体制」が不十分で、患者・への説明がきちんとされていないことが明らかになっています。

 こうした事態を重く見た塩崎恭久厚労相は、特定機能病院などの安全管理体制を集中的に調べる必要があるとし「大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース」を設置。14日に初会合が開かれました。

 会議の席上、本部長である塩崎厚労相は「6月から3か月間をめどに集中的な立入検査を行い、秋ごろには結果を公表したい」と説明。タスクフォースで、具体的な検査項目を議論することとなりました。

特定機能病院の集中立入検査の必要性などを説明する塩崎恭久厚生労働大臣(向かって右)

特定機能病院の集中立入検査の必要性などを説明する塩崎恭久厚生労働大臣(向かって右)

 厚労省が示した検査項目のたたき台では、(1)ガバナンス(2)高難度新規医療技術の導入(3)インフォームド・コンセント―の3分野について、各特定機能病院がどのような体制を敷いており、どのように運用しているのかを調べることとしてはどうかとの考え方が示されました。

 ガバナンスでは、医療安全に関して誰に、どのような権限が付与されているのか、どのように運用されているのかを調べるもので、具体的には次のようなイメージが示されています。

▽病院の管理者に付与されている権限(医療安全の向上のための取り組みを行うにあたり、その責務を果たす権限が付与されているのかを含めて)などを確認する

▽医療安全管理体制などに係る管理者の意見が、病院の開設者にどう伝達され、反映されているのかを確認する

▽医療安全管理部門が随時対応した個別事案について、実際に権限が行使され、適切に対応されたかを確認する

 また、(2)の「高難度新規医療技術」とは、例えば先進医療などを指しており、▽導入に当たってのルールが定められているか▽導入の審査を行う体制が確保されているか▽ルールの運用状況や個別事案の審査状況はどうなっているのか―が確認されます。

 さらに「インフォームド・コンセント」に関しては、▽院内、診療科ごとに様式や手順を定めているか▽定められたルールに基づいて、適切に実施されているか―などを、個別事案のカルテなどを確認することが提案されました。

立入検査の目的はあくまで「実態把握」

 こうした厚労省のたたき台について、野村修也顧問(中央大学法科大学院教授、弁護士)から「組織の雰囲気なども把握し、どこに問題があるのかをしっかりと究明する必要がある」といった意見も出されましたが、明確な反論は出されず、具体的な肉付けをして、いわば「チェックリスト」を遅くとも6月上旬に固めることとなりました。

 特定機能病院には同じく医療法第25条に基づく通常の立入検査も別途、行われるため、病院側や検査を行う地方厚生局などの負担にも考慮して検査項目が設定されます。

 本部長代理を務める同省医政局の二川一男局長は、「これまでの調査は、どちらかというと書類が整えられているのかどうかの確認に偏っていたが、今回の集中立入検査では一歩踏み出す」と説明。ただ、「不適切な事例を発見したからと処分すると、隠してしまうことも考えられる。まず正直に実態を出してもらいたい」と強調しました。

 また北波課長も「あくまで情報収集で、指導などが目的ではない」ことを強調しています。

 なお、検査項目は遅くとも6月上旬には固められる予定ですが、「検査項目をオープンにすると、対策マニュアルがすぐに整備されてしまう可能性がある」(厚労省健康局がん対策・健康増進課の正林督章課長)との指摘もあり、「どの役職者に、どのような書類を準備してもらい、どのような内容を聴取するのか」かといった詳細な内容が公表されるかどうかは未定です。

検査結果から課題を抽出し、承認要件見直しへ

 ところで、タスクフォースの設置に当たり、塩崎厚労相は「集中立入検査を行った上で課題を抽出し、特定機能病院の承認要件の見直しを行う」ことにも言及しています。

 北波課長は「タスクフォースでは集中立ち入り検査と、検査結果の取りまとめを通じて、特定機能病院のガバナンスなどにある課題を抽出するところまでを行うのではないか。承認要件の議論は有識者による検討会などで、抽出した課題をベースに行っていただくことになるのではないか」と見通しており、承認要件が見直されるのはしばらく先のこととなりそうです。

【関連記事】

女子医大病院と群馬大病院の特定機能病院の承認取り消し決定、特定機能病院の承認要件見直しも検討―塩崎厚労相

病院ダッシュボードχ 病床機能報告