2013年のがん罹患率、前年に続き減少し361.9、地域特性を踏まえたがん対策を—国がん
2017.9.22.(金)
2013年における人口10万対の年齢調整罹患率は361.9で、男性436.1、女性307.8となった。都道府県別にみると罹患率に大きな差があるものの、がん罹患の傾向とがん死亡の傾向とは一致せず、今後、詳細に分析し地域ごとのがん対策推進計画を立案することが重要である—。
国立がん研究センター(国がん)が9月20日に公表した「日本のがん罹患数・率の最新全国推計値」から、こういった状況が明らかになりました(国がんのサイトはこちらとこちら)(2012年の状況に関する記事はこちら)。
2013年の最新データをもとに今年(2017年)の状況を予測すると、101万4000人(男性57万5900人、女性43万8100人)ががんに罹患し、37万8000人(男性22万2000人、女性15万6000人)が死亡すると考えられます。
目次
2011年から12年、さらに2013年にかけてがんの罹患数・率は減少
この推計は「地域がん登録」のデータを活用したもので、前年(2012年)に引き続き47都道府県すべてでデータが揃いました。2013年には全都道府県が国内精度基準を満たしており、今回の推計値が「より真の罹患数に近い、今後は国際比較が可能となる」と国がんはコメントしています。
まず2013年の1年間にがんと診断された人は、日本全国で86万2452人と推計され、前年(86万5238人)よりやや減少しています。人口10万対の年齢調整罹患率は361.9で、こちらも前年(365.6)より減少しました。2011年以降、年齢調整罹患率が減少しており、この要因(生活習慣の改善などによるものかなど)を詳しく見ていく必要がありそうです。
男女別にみると、がん罹患数は男性49万8720人(前年50万3970人)、女性36万3732人(同36万1268人)、人口10万対の年齢調整罹患率は男性436.1(同447.8)、女性307.8(同305.0)となっており、男女とも前年よりやや減少しています。
部位別の罹患率、男性は胃がんの77.8、女性は乳がんの85.6が最多
部位別の罹患数・人口10万対の年齢調整罹患率を見てみると、次のようになっています。
▼肺:男女計11万1837人(罹患率41.4)、男性7万5742人(罹患率62.3)、女性3万6905人(罹患率24.8)
▼大腸(結腸・直腸):男女計13万1389人(罹患率53.1)、男性7万4881人(罹患率67.7)、女性5万6508人(罹患率40.6)
▼乳房:男女計7万7284人(罹患率43.9)、男性445人(罹患率0.4)、女性7万6839人(罹患率85.6)
▼胃:男女計13万1893人(罹患率50.9)、男性9万851人(罹患率77.8)、女性4万1042人(罹患率28.3)
▼子宮:女性2万4099人(罹患率29.1)
▼食道:男女計2万2812人(罹患率9.4)、男性1万9171人(罹患率17.1)、女性3641人(罹患率2.8)
▼肝および肝内胆管:男女計4万938人(罹患率15.2)、男性2万7335人(罹患率23.5)、女性1万3603人(罹患率8.1)
▼膵臓:男女計3万4837人(罹患率12.8)、男性1万8476人(罹患率16.0)、女性1万6361人(罹患率10.0)
部位別の死亡率、男性は肺がんの40.4、女性は大腸がんの12.2が最大
次に死亡率(年齢調整、人口10万対)を部位別に見てみると、男性では高いほうから▼肺40.4(前年から0.6ポイント減)▼胃25.2(同0.9ポイント減)▼大腸(結腸・直腸)21.1(同0.3ポイント減)▼肝および肝内胆管160.0(同0.7ポイント減)▼膵臓13.3(同増減なし)―という順です。また女性では、同じく高いほうから▼大腸12.2(同0.1ポイント減)▼乳房12.0(同0.5ポイント増)▼肺11.4(同増減なし)▼胃9.2(同0.4ポイント減)▼膵臓8.4(同増減なし)―となっています。部位別・性別に死亡率の増減がある点が気になります。
また、性別・部位別・年齢階級別に罹患率を見てみると、男性では、▼胃がん・前立腺がんは、40代後半から増加傾向を見せ、50代後半から急増し、70代後半から80代前半にピークを迎える▼肺がんは40代後半から増加傾向となり、その後、急増を続ける▼肝および肝内胆管がんも40代後半から増加するが、70代後半で増加スピードが鈍化する▼大腸がんは50代から増加を見せ、80代前半でピークを迎える—といった傾向が読み取れそうです。
一方、女性では、▼大腸がんは40代前半から増加傾向を見せ、その後急増を続ける▼胃がんは50代後半に急増し、その後も増加を続ける▼肺がんは50代前半から急増し、その後も増加を続ける▼子宮がんは、20代後半から増加し、50代にピークを迎えるが、その後も緩やかな減少しかみせない▼乳がんは、30代に入ってから急増し、40代から60代までに高い水準を維持したまま増減し、60代後半から減少していく—という傾向があります。
同じ部位のがんでも、男女で罹患傾向が異なる点に留意したがん対策(とりわけ検診体制)が求められそうです。
都道府県別に見ると、がんの罹患傾向と死亡傾向は必ずしも一致しない
さらに都道府県別に標準化罹患比・死亡比(全国の罹患率推計値を100、死亡率を100として、各都道府県の状況が全国値と比べてどの程度なのかを見たもの)を見てみると、次のような傾向に読み取れそうです。
【男性全部位】▼北海道▼東北▼山陰▼九州北部―で死亡比が高く、罹患比もほぼ同様の傾向(濃淡がより明白)。▼青森▼石川▼広島―では、死亡比と罹患比に大きな差がある。
【女性全部位】罹患比と死亡比の類似性が男性よりも少ない(罹患が多い地域で、必ずしも死亡が多いわけではない)
【胃がん】罹患比は、男女ともに▼東北地方▼日本海側▼紀伊半島―に集中している傾向があり、死亡比では、この傾向がさらに強い
【大腸がん】罹患比・死亡比ともに、▼北海道東北地方▼北陸地方―で高い
【肝がん】近畿以西の地域で罹患比・死亡比が極めて高い。また山梨県では、死亡がとくに高くなっている
【肺がん】男性では罹患・死亡ともに▼北海道▼近畿圏▼九州北部―で高く、女性でも共通の傾向がみられる。また女性では東京都の数値が高くなっている
【乳がん】▼北海道▼東京▼富山▼広島▼福岡▼沖縄―で高く、都市部で高い傾向がある
このように「がんの罹患の傾向」と「がんによる死亡の傾向」は都道府県別に異なるため、さらに詳しい分析を行い、地域特性を踏まえたがん対策推進計画を立案する必要があります。
なお、この最新データをもとに、国がんでは▼生涯でがんに罹患する確率は男性62%、女性46パーセント▼生涯でがんにより死亡する確率は男性25%、女性16%▼今年(2017年)の状況は、がん罹患数101万4000人(男性57万5900人、女性43万8100人)、がんによる死亡数37万8000人(男性22万2000人、女性15万6000人)―といった推計も行っています。
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