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第3期がん対策の素案、予防・医療充実・共生・基盤整備すべてを重点分野に—がん対策推進協議会

2017.5.19.(金)

新たな第3期がん対策推進基本計画においては、全体目標として「がんの克服」を掲げ、その実現のために(1)がん予防(2)がん医療の充実(3)がんとの共生(4)基盤の整備―のすべてを重点分野に位置づけて推進する—。

17日に開催された「がん対策推進協議会」で、厚生労働省はこのような素案を示しました。

5月17日に開催された、「第67回 がん対策推進協議会」

5月17日に開催された、「第67回 がん対策推進協議会」

「がんの克服」を全体目標に据え、患者を含めた国民全員でがん対策を推進に

我が国のがん対策は、概ね5年を1期とする「がん対策推進基本計画」に基づいて進められており、協議会では2017年度からの第3期計画策定に向けた議論を進めています。。

4月13日の前回会合で、第3期計画においては、「がんの克服」という全体目標を掲げ、これを国民全体で共有する方針を確認。さらに、厚労省は、がんの克服に向けて▼予防▼医療▼共生▼基盤整備―の4つの柱についてそれぞれ重点分野を定めてはどうかとの考えを示していました。重点分野としては、例えば▼がんの1次予防(生活習慣の改善など)▼ゲノム医療▼希少がん・難治性がん▼緩和ケア▼がん研究—などが掲げられました(関連記事はこちら)。

しかし、委員からは「重点分野とされていない分野(例えば、チーム医療やリハビリなど)の取り組みがおろそかになるとの誤解が生じてはいけない」との指摘が出され、厚労省は「4つの柱の中で掲げた全分野が重点分野である」とする方向に舵を切りなおしました。

17日の会合では、厚労省健康局がん・疾病対策課の丹藤昌治がん対策推進官から、こうした点を踏まえた次のような「素案」が示されています。

◆全体目標:「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」というスローガンを掲げ、▼科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実▼患者本位のがん医療の実現▼尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築―を目指す

◆分野別施策:次の4本の柱を立て、すべての分野・項目を重点分野に位置付ける

(1)がん予防:▽1次予防▽2次予防(早期発見、がん検診)

(2)がん医療の充実:▽ゲノム医療▽手術療法、放射線治療、薬物療法、免疫療法▽チーム医療▽支持療法▽希少がん、難治性がんの特性に応じた対策▽小児、AYA世代、高齢者のがん▽病理診断▽リハビリ▽がん登録▽医薬品・医療器の早期開発・承認

(3)がんとの共生:▽がんと診断されたときからの緩和ケア▽相談支援、情報提供▽地域社会におけるがん患者支援▽就労を含めた社会的な問題▽ライフステージに応じた対策

(4)基盤整備:▽研究▽人材育成▽教育、普及啓発

◆がん対策を総合的・計画に推進するために、▽患者を含めた国民の努力▽患者団体などとの協力▽都道府県計画の策定▽必要な財政措置と予算の効率化・重点化▽ロードマップ作成▽PDCA

第3期がん対策推進基本計画の素案(全体像)

第3期がん対策推進基本計画の素案(全体像)

小児・AYA世代・高齢者のがん対策、「医療の充実」と「共生」で切り分け

今回の「素案」と、前回会合で示された「たたき台」を比較してみましょう。

まず「素案」では、「はじめに」という章を設け、第3期計画の位置づけを明確にするとともに、スローガンとして掲げた「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」ことを目標としている旨を強調。

また(1)の予防のうち、1次予防においては「たばこ対策」が注目されますが、現在、政府で議論中の事項でもあり、踏み込んだ記述はまだなされていません。

(2)のがん医療の充実については、新たに【小児、AYA世代、高齢者のがん】が盛り込まれました。たたき台では「(3)がんとの共生」の章にまとめられていましたが、檜山英三委員(広島大学自然科学研究支援開発センター教授)らの「医療の充実と、長期フォローアプとなる共生とでは、取り組むべき内容が異なる。切り離して考えるべき」との強い指摘を受け、(2)で【小児、AYA世代、高齢者のがん医療の充実】を、(3)で【ライフステージに応じた対策】をという具合に書き分けています。

新たに盛り込まれた【小児、AYA世代、高齢者のがん医療の充実】を見てみると、▼小児がんのさらなる生存率向上を目指した、ゲノム医療の活用などを含む診断・治療研究の推進▼小児がん拠点病院の役割と集約化・均てん化の体制の見直し(高度な専門性を必要としない病態は、拠点病院以外での診療も可能な体制の構築など)▼AYA(Adolescent and Young Adult)世代のがんについて、小児がん拠点病院で対応可能な疾患と、成人領域の専門性画必要な病態を明らかにし、その診療体制を検討する▼QOLの観点を含めた高齢がん患者に適した治療法や診療ガイドラインを確立するための研究を進める—ことなどを今後の施策として盛り込んでいます。

 
このほか、薬物療法に関して「ゲノム情報を活用した適切な薬物療法などのために、専門的な▽医師▽薬剤師▽看護師▽がん相談支援センターの相談員―などの適正配置と連携により、患者に適切な説明を行うための体制整備や人材育成に努める」ことを追記している点などが目立ちます。

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