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がん対策の最大目標「死亡率の20%減少」、達成困難な状況に危機感―がん対策推進協議会

2015.4.23.(木)

 現在のがん対策の最大の目標である「がんの年齢調整死亡率(75歳未満)の20%減少」が困難な状況について、がん対策推進協議会で危機感が高まっています。

 22日に開かれた協議会では、堀田知光委員(国立がん研究センター理事長)が「死亡率減少20%の目標値はかなり厳しい状況だ。この点について分析をしっかりすべきではないか」と問題提起しています。

 また、今後のがん対策の方向性に関連して「症例の集約化」を重視する意見も多く出されており、6月にまとめる「がん対策推進基本計画の中間評価」に向けて、大きなポイントになりそうです。

4月22日に開催された、「第49回 がん対策推進協議会」

4月22日に開催された、「第49回 がん対策推進協議会」

がんの年齢調整死亡率は下げ止まり

 国のがん対策は、概ね5年の計画期間を設定した「がん対策推進基本計画」に沿って展開されています。現在は2012-16年を対象とした基本計画に基づいて施策が動いており、新基本計画は17年6月に策定される予定です。

 新基本計画は厚生労働省の「がん対策推進協議会」で策定されますが、協議会では、まず現行基本計画の中間評価を行い、それを新基本計画に反映させる考えです。

 中間評価では、基本計画に定められた目標に対する進捗状況や、国・医療関係団体・学会などの取り組み内容を整理することになっており、厚労省から提示された中間評価報告書案をベースに、委員間の議論で追記・修正を行う作業が進められています。

 その中で、現行基本計画では「がんの年齢調整死亡率(75歳未満)を20%減少する」という全体目標が定められました。具体的には、05年のがんによる死亡率「92.4」を10年間で20%減少させ、15年に「73.9」とすることを意味します。

 しかし、13年のがんによる死亡率(75歳未満、年齢調整)は80.1で、05年に比べて13.3%の減少にとどまっています。喫煙率減少幅が鈍化しているなど、年齢調整死亡率の減少も大きな壁にあたっていると指摘する専門家も少なくありません。

 こうした状況を受け、堀田委員から「年齢調整死亡率を20%減少させる目標値の達成はかなり厳しい。中間評価に向けて、この点の分析をしっかりすべきではないか」という問題提起がなされたのです。

 また中川恵一委員(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)は堀田委員の意見を受けて、「『年齢調整死亡率20%減少』の目標値は、喫煙率が下がり続けることを前提に設定されたものだ。しかし、喫煙率は下げ止まり傾向にあり、このままでは死亡率減少の目標達成は非常に難しい」と述べた上で、「目標達成ができないとなれば、国民から強い批判を受けることになろう。目標達成に向けた方策をしっかり考える必要がある」と強調しました。

 門田守人会長(がん研究会有明病院院長)も、「これまでと同じ施策を続けるだけではなく、新たな思い切った対策を採るべきではないか」との考えを述べています。

今後のがん対策では「症例の集約化」が重要な視点

 協議会では、中間評価と併せて「今後のがん対策の方向性」についても提言を行う構えです。これまでに取り組まれていない対策に焦点を合わせるもので、▽将来にわたり持続可能ながん対策の実現方策▽医療経済的な視点からの政策検証▽大規模データベースの構築と、それに基づくがん対策の検討▽すべてのがん患者が尊厳を持った生き方を選択できる社会構築▽小児、AYA(Adolescent and Young Adult)世代、壮年期、高齢者のライフサイクルに合わせた対策―について方向性を示します。

 そうした中、複数の委員から「がん症例の集約化」の重要性が指摘されています。中川委員は「学会も症例の集約化が必要である点を訴えているが、強制力はない。協議会から集約化の必要性・重要性に関するメッセージを示してほしい」との要望を行っています。

 がんに限りませんが、症例を集約化することで、医療の質が向上することが分かっています。今後のがん対策において「症例の集約化」も重要な視点となりそうです。

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