拠点病院の医師・看護師、緩和ケアに向けたチーム医療が機能していると感じる―がん対策推進協議会
2015.4.23.(木)
がん診療連携拠点病院では、「緩和ケアの専門家からの支援を得やすくなったと考える医師が増えている」「看護師の緩和ケアに関する知識が向上している」「専門家や多職種との連携など、院内の緩和ケア体制が機能していると感じている医師・看護師が多い」ことなどが厚生労働省の研究班の調査結果で明らかになりました。
一方で、訪問看護ステーションの看護師は、病院の看護師に比べて「緩和ケアを実施するのが困難」と強く感じていることも分かりました。
これらの結果は、6月にもまとめられる「がん対策推進基本計画」の中間評価に盛り込まれる見込みです。
これは22日に開かれた「がん対策推進協議会」で、下部組織である「がん対策における緩和ケアの評価」研究班の代表者である加藤雅志参考人(国立がん研究センターがん対策情報センター・がん医療支援研究部長)から報告されたものです。
研究班では、医師や看護師に対し、緩和ケアに関する知識や支障、自院の体制などについて調査を行い、2008年に日本医師会が行った調査結果と比較しました。そこからは、次のようなことが明らかになりました。
▽専門家の支援が得やすくなったと考える医師・看護師が、拠点病院で特に増えている
▽「疼痛管理」など緩和ケアに関する看護師の知識が増えており、こうした傾向は特に拠点病院の看護師で著しい
▽自院の相談支援センター、緩和ケアチーム、緩和ケア研修会などの体制が「機能している」と感じている医師・看護師が拠点病院には多い
▽がん診療に従事している医師・看護師では、「専門家や多職種との連携」「患者・家族の希望の確認」「医療用麻薬の使用」などに変化を感じている割合が多い
▽訪問看護ステーションの看護師は、病院の看護師に比べて「専門家の支援」や「医療者間のコミュニケーション」など緩和ケアを実施する上で「困難」を強く感じている
12-16年を対象とした「がん対策推進基本計画」では、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」を目標の一つに据えており、研究班の調査結果は、目標に向けて一定の進展があることを裏付けています。
一方、拠点病院以外では緩和ケアの推進が不十分なことも明確になっています。6月にまとめられる基本計画の中間評価には、緩和ケアに関する調査結果も盛り込まれる見込みで、「拠点病院以外での緩和ケアの推進」は次期計画の重要ポイントとなりそうです。
この日は、「がん対策における進捗管理指標の策定と計測システムの確立」研究班の代表者である若尾文彦参考人(国立がん研究センターがん対策情報センター長)から、基本計画の進展状況の調査結果も報告されました。
これまでは、調査結果の生データを集計した暫定値が報告されていましたが、今回は「都道府県の人口」や「希少がん・若年がんでは、データを多めに集計している点」などを勘案した「補正値」が報告されています。
暫定値と補正値に大きなずれはありませんが、若尾参考人は「(1)妊孕性温存に関する情報提供(2)拠点病院の相談支援センターに関する利用満足度(3)がん治療のために退職した患者の新規就労割合―の3項目について、都道府県間のばらつきがとても大きい」ことを強調しました。
例えば(2)の「相談支援センター」については、満足度と答えた人の割合は23%から100%と都道府県によって大きな格差があります。また(3)の就労状況についても、0%から83%とばらついています。こうした格差の是正も、広い意味で「がん医療の均てん化」につながりますので、今後の対策が検討されるべきでしょう。
協議会では「こうした研究は継続する必要がある」という意見が、堀田知光委員(国立がん研究センター理事長)や中川恵一委員(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)ら複数の委員から出されました。17年度予算編成に向けて、厚労省のかじ取りが注目されます。
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