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患者の3割が「家族からの孤立を感じる」、がん対策推進協議会の研究班が報告

2015.3.30.(月)

 がん対策推進協議会に設置された研究班の調査・分析によると、がん患者の3割が「家族が自分に不必要な気を使っている」と孤立を感じていることなどが分かりました。

 これは、30日に開かれた「がん対策推進協議会」で報告されたもので、こうした結果は、6月までにまとめられる「がん対策推進基本計画の中間評価報告書」に参考資料として付記されます。

3月30日に開催された、「第48回 がん対策推進協議会」

3月30日に開催された、「第48回 がん対策推進協議会」

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1割以上のがん患者が周囲からの偏見を感じる

 がん対策推進基本計画は、2012年6月に定められており、12-16年の間に国が行うべき施策や目標が盛り込まれています。現在、協議会の下部組織である研究班(研究代表者:若尾文彦・国立がん研究センターがん対策情報センター長)では、基本計画に盛り込まれた施策が、主にがん診療連携拠点病院でどれだけ進捗しているかについて集計・分析が進められています。

 「患者の体感」という視点で項目を絞り、進捗状況を見てみましょう。

 がん患者に対して家族を含め周囲の人は、良かれと思って「気を使う」ことが多々あります。この点について患者は次のように感じていることも分かりました。

▽家族が「不必要」に気を使っていると感じている患者は30.5%(暫定値)

▽友人、近所の人、職場関係者など(家族以外の周囲の人)が「不必要」に気を使っていると感じている患者は23.0%(暫定値)

 患者が周囲から「不必要に気を使われている」と感じるということは、家族や社会から「孤立している」と感じていることを意味します。

 これを裏付けるように、「自分ががんに罹患し、治療している」ことを、家族だけではなく、友人や職場関係者を含めて広く話している人は28%程度(暫定値)にとどまっています。また、自分ががんに罹患していることについて、周囲からの「偏見」を感じている人は11.3%(暫定値)に上ります。

 こうした点を踏まえ、中間評価報告書には「がんの教育・普及啓発」や「がん患者の就労を含めた社会的な問題」についても言及しています。

入院治療に比べて、退院後の生活支援がやや手薄

 患者の苦痛や痛みについては、次のような状況です。がんと診断されたときからの緩和ケアが少しずつ浸透していることが伺えます。

▽「体の苦痛」を感じていない患者は57.0%(暫定値)

▽「痛み」を感じずに日常生活を送れている患者は71.1%(暫定値)

▽「気持ちの辛さ」を感じていない患者は59.9%(暫定値)

▽「自分らしい生活」を送れている患者は77.3%

 また、「入院中の治療の見通し」が立っていると感じている患者は89.6%(暫定値)にのぼりますが、「退院後の生活の見通し」が立っている患者は79.3%(暫定値)です。この点、若尾参考人は「比較的高い数字だが、退院後に生活の見通しについては、入院中の治療に比べて10ポイント以上低下しており、退院後の支援がやや遅れているのではないか」と分析しています。

 さらに治療内容については88.3%(暫定値)の患者が納得していますが、「行政や職場を含めて「納得できる支援」を受けられていると感じている患者は80.3%(暫定値)で、総合的な支援策がやや遅れているようです。

「相談環境」に満足しているがん患者は7割弱

 また情報提供については、71.1%(暫定値)の患者が「自身の辛さに配慮した生き方を選べるようになっている」と感じていますが、「相談できる環境」については67.2%(暫定値)の患者しか満足していません。がん診療連携拠点病院には「相談支援センター」の設置が義務付けられていますが、3割近い患者が「相談しやすい環境にはない」と考えていることが分かりました。

 一方、「相談支援センター」の利用者について満足度を聞いたところ、82.3%(暫定値)が「満足」「役に立った」「安心できた」と答えています。がん患者の多くは医学・医療・医療制度について詳しい情報を持っていません。相談支援センターに関する情報提供を進め、安心・納得して治療を受けられるような環境整備が待たれます。

妊孕性温存処置、3割程度の患者しか知らない

 また、「妊孕性温存処置」(精子保存や卵巣組織凍結など、治療後に妊娠できる処置が行えること)については、がん診療連携拠点病院の62.1%(確定値)が実施していますが、その情報を知っている患者は40.8%(暫定値)にとどまっています。なお、40.8%のうち7%程度は「妊孕性温存処置をしていない」という情報を知っている患者も含まれるので、実際には「妊孕性温存処置ができることを知っている」患者は3割程度にとどまっています。病院と患者のギャップを埋める情報提供を一層進める必要があるでしょう。

緩和ケアや在宅医療への意識が医療従事者間で高まる

 また、緩和ケアの実施状況について研究している加藤雅志参考人(国立がん研究センターがん対策情報センター・がん医療支援研究部長)は、次のような中間報告を行いました。

▽緩和ケアについてパンフレットなどを用いて患者に説明する機会が増えたかどうかについて、医師・看護師の多くは変化を感じていない

▽緩和ケアに関する集合型研修の実施体制整備について、一般病院の医師・看護師に比べて、拠点病院の医師・看護師では「整備」を実感している割合が高い

▽拠点病院・一般病院・診療所のいずれにおいても、医師・看護師が緩和ケアや在宅医療に関する意識が高まっている

▽拠点病院・一般病院・診療所のいずれにおいても、医師・看護師が「診断時から患者の苦痛に対応する」ことを意識するようになっている

▽拠点病院では、「退職種チーム」で患者に対応していく割合が高まっている

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