医療スタッフの生産性向上は日本でも必須の課題に-全米屈指のクィーンズメディカルセンターでGHCが研修(2)
2015.2.17.(火)
全米屈指の優良病院であるクィーンズメディカルセンター(ハワイ州ホノルル)でGHCのコンサルタントが研修を受講しました。研修テーマは次の4つ。
(1)Nursing management(看護部管理)
(2)Labor productivity management(労働生産性向上)
(3)Cancer navigation(キャンサーナビゲーション)
(4)Cancer Quality Initiative(がんの臨床指標)
初日の研修では、(1)の看護部管理と(2)の労働生産性向上について、詳細なレクチャーを受けました。
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(1)の「Nursing management(看護部管理)」についてレクチャーしたのは、クィーンズメディカルセンター・ヴァイスプレジデント(看護関連担当)兼COO(Chief of operating office)のCindy Kamikawa氏と、同じくヴァイスプレジデント(patient care担当)のDarlena Chadwick氏の2人です。
ここでは、看護部管理の主な役割として(1)ケアの質(2)人材管理(評価、採用、昇任など)(3)コスト管理(主に人件費)(4)規則-について学びました。
日本では「7対1」や「10対1」といった具合に、診療報酬上、入院患者の人数によって看護師数が決まっていますが、米国の多くの州では、そういった決まりはありません。
クィーンズメディカルセンターでは、患者1人1日当たりのケア時間を2週間ごとに集計し、その数値とベンチマークとのバランスを見ながら看護師を流動的に配置しています。「人を多く配置すればその分、オーバースタッフになりかねない」という考え方に基づいており、適正な看護師配置になっているかを患者の重症度ごとに常に管理しています。
必要な看護師数を「患者数」と「患者の種類(例えば重症度)」に応じて部署ごとに設定するもので、看護師を固定的に配置する日本の考え方とは全く異なっています。
看護師の配置は、すべての部署で統一された様式(Cost center scorecard)に基づいて行われているので、どの部署のどのスタッフが見ても理解できるようになっています。
また、ケアの質については、感染症の発症率や再入院率など13の指標を用いて月単位で常に把握しています。これらの数値は、医療の質を評価するための統一的な指標というだけでなく、国へのデータ提出が義務付けられているため、医療費の支払いにも影響します。結果として、「質の向上に向けた取り組みを行う」というサイクルが非常に厳格に回っています。
日本でも、入院患者の「重症度、医療・看護必要度」を評価する方法の見直しが進んでおり、都道府県が地域医療構想を策定する上では「医療資源投入量(ただし現時点では入院基本料は除かれています)」が重視される方向です。GHCの湯浅大介マネジャーは、こうした医療制度の動向を注視した上で、「将来的に日本でも、看護師などの人員配置に対する考え方が変化してくる可能性もある。クィーンズメディカルセンターの取り組みを参考に先を読むことができそうだ」と考えています。
(2)の「Labor productivity management(労働生産性向上)」については、クィーンズメディカルセンターのSusan Abe氏がレクチャーしてくれました。
同氏は、同センターの全部署に「労働生産性向上メソッド」を取り入れた人物で、もともとはシステムの生産管理を行っていたシステムエンジニアです。
生産性向上は、単にコストを抑えるためだけでなく、医療の質を向上させるためにも欠かせません。同センターでは、人件費を固定費と流動費に分けて部署ごとに管理しています。例えば看護部では、人件費をすべて流動費として扱い、その上で人員配置が決定されます。
さらに、心臓カテーテルなどの各手技におけるスタッフ・患者の具体的な動きを数値化・可視化。非効率な動きを把握し、運用を平準化することで効率化につなげています。
クィーンズメディカルセンターの取り組みは、米国の病院の中でもかなり先進的なもので、GHCコンサルタントの簗取萌は「医療スタッフの生産性向上は今後、日本の病院にとっても大きな課題になる。クィーンズの取り組みは大いに参考になるはず」と見通しています。