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第3期がん対策推進基本計画、ゲノム医療や希少・小児がん対策などを柱の1つに―がん対策推進協議会

2016.5.27.(金)

 第3期のがん対策推進基本計画においては、「希少がん・難治性がん・小児がん対策」や「ゲノム医療の推進」などを柱に据えるべきではないか―。

 27日に開かれたがん対策推進協議会では、委員からこういった意見が出されました。

 下部組織である3つの検討会(検診、医療提供体制、緩和ケア)の検討状況も踏まえながら議論を重ね、年末から年明け(2017年)1月にかけて第3期計画の骨子案を策定し、3月に諮問・答申を経て、6月に閣議決定というスケジュールが描かれています。

5月27日に開催された、「第57回 がん対策推進協議会」

5月27日に開催された、「第57回 がん対策推進協議会」

第3期のがん対策推進基本計画、より分かりやすい「章立て」に

 わが国のがん対策は、5年を1期とするがん対策推進基本計画に沿って進められています。現在、第2期の基本計画(2012-16年度)が動いており、17年度からの第3期計画策定を進める必要があり、協議会では精力的に議論を続けています。

 さらに重点事項である「がん検診の受診率向上」「がん医療提供体制の充実」「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」を図るために、それぞれのテーマを集中的に議論する検討会を設置。

 年明けの骨子案に向けて、年末に向けて並行をして議論を進めることになります。

 27日の協議会では、「基本計画の項目立てをどうするのか」が主な議題となりました。第2期計画では(1)基本方針(2)重点的に取り組むべき課題(3)全体目標(4)分野別施策(5)がん対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項―という5つの大項目が立てられました。

 これを踏襲すべきか否かについて、山口健会長代理(静岡県立静岡がんセンター総長)は、「都道府県や市町村の担当者、病院関係者、患者団体などにも分かりやすくするため、(1)基本方針の次に『全体目標』を持ってきてはどうか」と提案。つまり上記の「(2)重点的に取り組むべき課題」と「(3)全体目標」の章立てを入れ替えてはどうかという提案です。

 これに対し行政の立場で参加している松村淳子委員(京都府健康福祉部長)は「施策の方向が見えやすくなる」旨を述べて賛同。また門田守人会長(堺市立病院機構理事長)や中川恵一委員(東京大学医学部附属病院放射線科准教授)も理解を示しています。厚労省健康局がん・疾病対策課の丹藤昌治がん対策推進官は「特段の反対はなかった」と捉えており、7月開催予定の次回会合で修正案を示す考えを述べています。

希少がん患者の専門施設へのアクセス確保に向け、WGで施設リストなどを作成

 また、27日の協議会では「第3期計画の策定に向けて検討すべき事項」について多くの委員から意見が出されました。その中で目立ったのが「希少がん・難治性がん・小児がん対策」や「ゲノム医療の推進」に関するものです。

 前者のうち希少がんについては、国立がん研究センターに設置された「希少がん対策ワーキンググループ」(WG)で、希少がんに関する診療ネットワークの構築や診療ガイドラインの策定・普及などを目指した検討が進められます。

 WGの事務局を務める東尚弘参考人(国立がん研究センターがん対策情報センターがん臨床情報部)は、WGでまず取り組む事項として▽専門施設のリスト作成▽専門施設で公表する項目の決定▽専門施設を中心とした患者紹介の流れの整理―を行うことを説明。希少がん治療を行う専門施設のリストや情報が公表されることで、患者のアクセスを確保することが狙いです。すでに希少がんの1つである「四肢軟部肉腫」を対象として分科会を開き、これらの項目について議論が始まっています。

ゲノム医療の推進、「診療提供体制のあり方」検討会で集中論議

 また後者のゲノム医療については、協議会の下に設置された3検討会の1つである「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」で集中的な議論を行うことが、厚労省健康局がん・疾病対策課の佐々木健課長から説明されました。

 ゲノム医療の推進は、▽がん研究▽予防・検診▽治療▽保険―の各分野にも便益をもたらすことが期待できます。検討会の議論を踏まえて、協議会でも検討を行い、第3期計画に盛り込まれることになりそうです。もっとも「ゲノム医療」という項目立てになるかどうかは不透明で、例えば「医薬品・医療機器の開発」や「がん研究」などの項目の中で、「ゲノム医療の面ではどうなのか」を記載する形もあり得ます。

 この点に関連して、檜山英三委員(広島大学自然科学研究支援開発センター教授)は、「データを蓄積・解析することで遺伝的な『がんになりやすさ』が分かる。こうした情報を同癌医療につなげていくべきかを慎重に検討する必要がある」と指摘しています。なお、データをもとにがん医療の質向上に取り組むCQI研究会が8月に開催されます。GHCもデータ分析をお手伝いしています(関連記事はこちら)。

 

 一方、中川委員は「放射線治療」をより重点的に推進すべきと提案します。第2期計画では分野別施策のトップ項目の「放射線治療」が位置付けられていますが、中川委員は「放射線治療件数が減少傾向にある」ことを説明し、より長期的に対策の成果をフォローしていくことの重要性を指摘しています。さらに粒子線治療をすべての放射線治療症例を登録する仕組みを考慮すべきとも提案しました。

がん診療連携拠点病院、「集約化を考えるべき」との指摘も

 ところで、どこに住んでいても適切ながん医療を受けられる(均てん化)体制をめざし、国は2次医療圏の1か所以上のがん診療連携拠点病院整備を進めています。拠点病院を整備できない地域については、やや要件を緩和した「地域がん診療病院」の設置なども可能です。

 この点について大江裕一郎委員(国立がん研究センター中央病院副院長(教育担当)呼吸器内科呼吸器内科長)は、「拠点病院の集約化を考えてもよいのではないか」との見解を述べました。

 2次医療圏では「圏域内で一定の医療を完結させる」ことが期待されていますが、がんについては、圏域を超えて治療が行われるケースが増えています。この点は20日に開かれた「医療計画の見直し等に関する検討会」でも議論になっており、疾病別・事業別に医療圏を設定する構想(例えばがんの2次医療圏は現在よりも広く設定するなど)も浮上しています(関連記事はこちら)。両検討会で調整をしながらこの問題を考える必要があるでしょう。

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