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疾病ごと・事業ごとの医療圏設定推進など、2018年度からの第7次医療計画に向けて検討―厚労省・医療計画検討会

2016.5.20.(金)

 人口の高齢化などを踏まえたとき、2次医療圏のあり方は現行のままでよいのか。例えば、疾病単位・事業単位の医療圏をより推進することは考えられないのか。また地域医療構想が策定された後、その実現に向けてどのような取り組みを行っていくのか―。

 2018年度からの第7次医療計画作成に向けて、このようなテーマを検討していく方針が、20日に開かれた「医療計画の見直し等に関する検討会」で概ね固められました。

 検討会の下に、「地域医療構想」と「地域包括ケアシステムの構築」に関する2つのワーキンググループを設置し、そこでの議論も踏まえて、今年12月の早い段階で第7次医療計画の策定に向けた基本方針(方針自体は厚生労働大臣が告示)をまとめます。

5月20日に開催された、「第1回 医療計画の見直し等に関する検討会」

5月20日に開催された、「第1回 医療計画の見直し等に関する検討会」

2016年に厚労省が基本方針示し、これに沿って17年度に都道府県が医療計画作成

 地域で効果的・効率的な医療提供体制を構築するために、都道府県は医療計画を作成します(医療法第30条の4第1項)。これまで医療計画は概ね5年を1期としてきましたが、高齢化がさらに進む中で、介護保険事業(支援)計画(3年を1期)との連携・整合を図るために、2018年度の第7次計画からは1期が6年に改められます。

2018年度(平成30年度)から第7次医療計画と第7期介護保険事業(支援)計画がスタートする。あわせて2018年度には診療報酬と介護報酬の同時改定も行われる。

2018年度(平成30年度)から第7次医療計画と第7期介護保険事業(支援)計画がスタートする。あわせて2018年度には診療報酬と介護報酬の同時改定も行われる。

 厚生労働省は、都道府県が第7次医療計画を2017年度から作成する(2018年度から稼働)ために、今年(2016年)中に基本方針などを策定。検討会では、この基本方針策定に向けて、諸課題を議論していきます。さらに、医療・介護の両計画について整合性をとるために、総合確保方針が医療介護総合確保促進会議で改定されます。これらを整理すると、次のようなスケジュールイメージを描けます。

○医療介護総合確保促進会議で「総合確保方針」を議論(2016年11月頃に改定)

  ↓

○検討会で基本方針策定に向けた議論を行う(2016年12月に意見取りまとめ)

  ↓

○厚生労働大臣が基本方針を告示

  ↓

○都道府県が基本方針に沿って、医療計画を作成(2017年度)

  ↓

○第7次医療計画がスタート(2018年度から)

地域医療構想策定に向けた、大まかなスケジュール感

地域医療構想策定に向けた、大まかなスケジュール感

厚生労働大臣が基本方針を示し、これに沿った作成指針を厚生労働省医政局長らが示し、都道府県がこれらに沿って医療計画を策定する

厚生労働大臣が基本方針を示し、これに沿った作成指針を厚生労働省医政局長らが示し、都道府県がこれらに沿って医療計画を策定する

地域医療構想を踏まえた医療計画、ただし必要病床数と基準病床数は性質が異なる

 医療計画には、▽5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)・5事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児救急を含む小児医療)ごとの医療体制▽基準病床数▽医療従事者の確保▽医療安全の確保▽施設整備目標―などを定めることになっています(医療法第30条の4第2項ほか)。

 第7次計画でも、こうした項目が定められますが、次の点について従前から大きな変更がなされます。基本方針策定に向けた最重要検討テーマと言えるでしょう。

(1)地域医療構想

(2)介護保険事業(支援)計画との連携

 (1)の地域医療構想は、「地域において2025年時点で▽高度急性期▽急性期▽回復期▽慢性期―といった機能ごとにどれだけの病床数が必要となり、そうした体制を構築(実現)するためにどういった施策をとるか」を示すもので、今年度(2016年度)中にすべての都道府県で策定されます。

 従前より「地域医療構想は医療計画の一部となる」とされており、第7次医療計画には、各都道府県が描いた地域医療構想をどのように実現していくかの道筋を具体的に記すことになります。

 厚労省は、この点に関連して「特に救急医療などの対象事業の確保」「CT、MRIといった医療機器などの医療資源のあり方」をどう考えるかという論点例を提示しています。

 後者のCTなどについては「設置台数」などのほか、「有効活用」(きちんとメンテナンスした上で使用しているのかなど)についても検討されることになるでしょう。

 また、加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)らは「地域医療構想の必要病床数」と「医療計画の基準病床数」との整合性も議論すべきと提案しています。この点、厚労省医政局地域医療計画課の担当者は「基準病床数は『現在の姿』、地域医療構想の必要病床数は『2025年の姿』であり、両者の性質は異なる。その点を整理することがまず重要ではないか」と述べています。

 なお、地域医療構想の進捗状況や、今年10月の第3回病床機能報告(制度の改善含む)に向けた集中的な議論を行うために、検討会の下に「地域医療構想に関するワーキンググループ」を設置することになっています(関連記事はこちらこちらこちら)。

地域包括ケアシステムの構築も睨み、自治体担当者交えたWGで諸課題を検討

 (2)の介護保険事業(支援)計画との整合性については、厚労省から「地域包括ケアシステムの構築に向けた、在宅医療などの推進」「都道府県と市町村との具体的な連携のあり方」が論点例として提示されています。

 このテーマについては、実務を行う上での課題(例えば市町村と都道府県との連携が難しいとすれば、それはなぜなのか)などを明確にし、具体的な対策を検討する必要があります。そこで、都道府県や市町村の担当者を交えた「医療計画における地域包括ケアシステムの構築に向けたワーキンググループ」を検討会の下に設置することが決まりました。

 この点について鈴木邦彦構成員(日本医師会常任理事)は、「在宅医療だけでなく、在宅療養患者の急変時などに受け入れを行う病院の体制などもセットで議論する必要がある」旨の提案を行っています。

2次医療圏のあり方、兵庫県の「疾病・事業ごとの医療圏」も参考に検討

 このほか第7次計画の基本指針策定に向け、厚労省は次のようなテーマを検討する方針を示しています。

(a)2次医療圏と基準病床数制度のあり方

(b)5疾病・5事業および在宅医療の整備に向けた取り組み

(c)PDCAサイクルを推進するための指標

(d)医療従事者の養成・確保

 このうち(a)の2次医療圏について相澤孝夫構成員(日本病院会副会長)や鈴木構成員らは「患者の流出入が多い疾病(例えばがんなど)もあり『2次医療圏で医療を完結する』ことが難しくなっている」ことを強調しています。

 これに対し厚労省医政局地域医療計画課の迫井正深課長は、「救急など時間的な猶予のない医療については地域(2次医療圏)での完結が求められる。一方、がんなど比較的時間のある疾病については、より広域的な医療提供が行われている。両者のバランスを考えて2次医療圏を設定する必要があるのではないか」との見解を示しました。

 この点、兵庫県では2次医療圏が10ありますが、▽心筋梗塞・脳卒中医療圏域(9圏域)▽救急医療圏域(12圏域)▽2次小児救急医療圏域(11圏域)▽周産期医療圏域(7圏域)―といった具合に、疾病や事業の特性に合わせた圏域も設定しています。こうした事例も参考にしながら2次医療圏のあり方を考えていくことになりそうです。

兵庫県では、10の2次医療圏を設定しているが、疾病や事業の特例に併せてこれらを組み合わせ、あるいは分割した医療圏も設定している

兵庫県では、10の2次医療圏を設定しているが、疾病や事業の特例に併せてこれらを組み合わせ、あるいは分割した医療圏も設定している

 なお、現在の第6次計画においては「小規模(人口20万人未満、流入患者割合20%未満、流出患者割合20%以上)の場合には2次医療圏の見直しを検討する」よう都道府県に指示が出されました。この要件には32道府県・87医療圏が該当しますが、実際に見直しを行ったのは3県に止まっています。厚労省の担当者は「都道府県から『なぜ見直しを行っていないのか』などの意見を聞き、2次医療圏のあり方を議論してもらう」との見解も示しています。

 

 また、(b)の5疾病・5事業について、相澤構成員から「肺炎(2014年の死因第3位)を取り上げるべき」、(c)のPDCAサイクルについて今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)から「医療の質を評価指標に加えるべき」といった要望が出されたほか、田中滋座長代理(慶應義塾大学名誉教授)から「看取りに関する医療提供体制のあり方も検討すべき」との提案もなされました。

 これらの意見を踏まえて、厚労省は具体的な「医療提供体制の課題」を再整理。検討会では、これをベースに「第7次医療計画の中でどのような解決策を採るべきか」を議論していくことになります。

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