2018年度の医療計画・介護計画策定に向け、総合確保方針見直しへ―医療介護総合確保促進会議
2016.3.9.(水)
2018年度から新たな医療計画と介護保険事業(支援)計画がスタートしますが、両者の整合性を図るための指針(総合確保方針)について見直しが行われます。9日に開かれた医療介護総合確保促進会議では、厚生労働省がいくつかの論点案を例示し、これに関して早くも熱のこもった議論が行われました。
厚労省保険局医療介護連携政策課の城克文課長は、18年度からの新計画スタートから逆算して、「遅くとも年内(2016年内)、できれば11月までには見直しを行いたい」との考えを述べています。
いわゆる団塊の世代(1947-49年生まれの人)がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年に向け、慢性期医療や介護のニーズが飛躍的に高まると予測されます。そのため、医療と介護の一体的な提供が必要とされ、さまざまな制度改革などが行われています。
2013年に成立し、順次施行されている「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(医療介護総合確保推進法)もその1つで、例えば「2018年度より始まる第7次医療計画から、事業年度を6年間とする(現在は5年間)」ことで、介護保険事業(支援)計画(事業年度は3年間)との整合性をとることにしています。
さらに医療介護総合確保推進法では、医療計画と介護保険事業(支援)計画の整合性を図るために、これら計画の上位指針(地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的案方針、総合確保方針)を策定することを国に指示。厚労省は医療介護総合確保促進会議を設置し、2014年9月に総合確保方針を策定しました(関連記事はこちら)。
総合確保方針は、大きく次の4部で構成されています。
(1)地域における医療及び介護の総合的な確保の意義・基本的な方向
(2)医療計画基本方針・介護保険事業計画基本指針の基本となるべき事項、都道府県計画・医療計画・都道府県介護保険事業支援計画の整合性の確保
(3)都道府県計画・市町村計画の作成と整合性の確保
(4)新たな財政支援制度(基金)に関する事項
例えば(2)では、医療計画と介護保険事業(支援)計画に齟齬や隙間が出ないよう、「両計画の区域」や「基礎データ」などに整合性を確保するよう指示。さらに、医療・介護の連携を強化するための取り組みを図るよう求めています。
現在、総合確保方針に沿って基金の運営や、医療・介護サービス提供体制の整備などが進んでいますが、新たな医療計画(第7次)と介護保険事業(支援)計画(第7期)から本格的な医療・介護連携がスタートすると言えそうです。
両計画は2018年度からスタートします。あわせて2018年度には診療報酬と介護報酬の同時改定も控えています。これらが整合性を持って計画・実行される必要があるため、厚労省は「総合確保方針に漏れている部分はないか」を確認し、必要な見直しを行うことを決めたのです。
ここから逆算して城医療介護連携政策課長は「遅くとも年内(2016年内)、できれば11月には見直しを行いたい」との考えを述べています。
9日に開かれた促進会議には、厚労省から見直しに向けて、次のような論点案が例示されました。
(1)計画策定に関する整合性確保(区域や人口推計などの基礎データの検証、一体的な作成のための自治体間の協議・連携の在り方)
(2)在宅医療の推進、在宅医療と介護の連携の推進(退院時に備えた切れ目のない医療・介護提供体制、医療職・介護職が連携した居宅などでの看取り、多職種による「顔の見える」連携)
(3)医療・介護連携の核となる人材(専門職種や関係機関を有機的に結び付けられる人材、医療・介護提供者に地域包括ケアを担っている一員と実感できる環境づくりを先導していく人材)
厚労省は「このほかの論点はないか」を構成員に議論することを求めたのですが、促進会議では特に論点案の(3)についてさまざまな角度からの意見が出されました。
最も多く出たのは「(3)を担うのは●●職(介護支援専門員や社会福祉士など)である」といった主張です。しかし、1つの職種で(3)のような「核」の役割を担うことは不可能です。城医療介護連携政策課長は「医療と介護の両方を分かる人材をこれから増やしていく必要がある。『この役割はこの職種』という割り付けをするものではない」と終了後に、記者団に説明しています。
そうした中で今村聡構成員(日本医師会副会長)は、「医療・介護分野の中核的専門人材養成のための教育プログラム」を日医が開発したことを紹介しました。このプログラムではワークブックとDVDにより、地域で医療・介護を適切にコーディネートするための教育を行うもので、対象の職種は限定していません。
また武久洋三構成員(日本慢性期医療協会会長)は、「日医のプログラムで介護支援専門員(ケアマネジャー)に医療知識を教育すればよい。介護支援専門員は介護保険制度施行から15年間、マネジメントを行ってきた実績がある」と提案しています。
さらに、「核となる人材」として自治体職員にも焦点が合わせられ、「自治体により連携の意識などに大きな差がある。自治体職員の教育・研修も重要である」(平川則男構成員:日本労働組合総連合会総合政策局長)といった指摘もなされています。
もっとも、こうした意見に対し相澤孝夫構成員(日本病院会副会長)は、「都市部と地方部では状況が異なる」「制度や仕組みを作るだけでは、高齢者1人1人に適切なサービスを提供できない」と指摘し、「現場を見る」ことが重要と訴えています。また相澤構成員は、医療と介護を結びつける役割として「訪問看護」の重要性も強調しています。
一方、白川修二構成員(健康保険組合連合会副会長)は、「連携せよと要望するだけでなく、仕組みを大きく変えていかなければいけない」とし、次のような見直しを行うことを提案しています。
▽都道府県の同じ部署で、医療計画と介護保険事業支援計画を策定するように見直す
▽診療報酬と介護報酬の改定において、「医療・介護連携に関係する部分」については一緒に議論する
このほか森田朗構成員(国立社会保障・人口問題研究所所長)から「人口減少の中でサービスが手薄になる地域に手厚く基金を配分するなどの配慮」が必要といった意見、山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)から「利用者が何(例えば冒頭に述べた2025年問題など)を知る必要があり、どのように啓発していくかといった視点」も必要といった意見などが出されています。
次回会合(今夏目途)では、構成員から出された意見を踏まえた論点が示される見込みです。
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