医療介護総合確保基金、15年度は6割弱を地域医療構想関連事業に充当―医療介護総合確保促進会議
2015.10.30.(金)
2015年度の地域医療介護総合確保基金のうち第1回目の医療分は610億8000万となり、このうち55.6%が「地域医療構想達成に向けた事業」に充てられている―。このような状況が28日に開催された「医療介護総合確保促進会議」に報告されました。
前年度(14年度)の基金では、医療分のおよそ2割しか「病床機能分化」に充てられていなかったことと比べて、地域における医療提供体制の再編に向けた動きが活発になっていることが伺えます。
地域医療介護総合確保基金は、「医療介護総合確保推進法」に規定されている、いわゆる「新たな財政支援」制度のことです。全国一律の診療報酬による誘導では地域の事情を十分に踏まえることが難しいとの考えのもと、基金と診療報酬の二刀で地域の医療提供体制を再構築していくことになっています(関連記事はこちら)。
14年度の基金規模は904億円(うち国費が602億円)で、(1)病床の機能分化・連携に関する事業に174億円(19.2%)(2)居宅などにおける医療の提供に関する事業に206億円(22.8%)(3)医療従事者の確保・養成に関する事業に524億円(58.0%)―という具合に配分されました。(3)の医療従事者確保に6割が集中しており、これは「従前の地域医療再生基金で実施されていた事業(合計で約300億円)を引き継いでいるため」と説明されています。
15年度からは医療事業に加えて介護事業にも基金から財政支援が行われています。その財政規模は医療分が904億円、介護分が724億円となっていますが、医療分は地域医療構想の達成に向けた取り組み状況を踏まえて2回に分けて配分されるので、現在は医療分611億円(610億8000万円)、介護分724億円(724億2000万円)となっています。このうち国から交付された金額は、医療分407億2000万円、介護分482億8000万円です。
医療分について事業別に見てみると、次のような状況になっています。
▽地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設・設備整備:226億3000万円(医療分の55.6%)
▽在宅医療提供:29億7000万円(同7.3%)
▽医療従事者の確保・養成:151億2000万円(同37.1%)
14年度に比べて「地域医療構想の達成に向けた事業」の比率が大きく伸びており、各地域で医療提供体制の再編に向けた動きが活発になっていることが伺えます。
具体的な事業の内容を見てみると、▽不足している回復期病床などへの転換に要する施設・設備整備(青森県)▽回復期病床への転換、地域リハビリ機能・地域連携強化のための施設整備、合併症を伴う精神疾患に係る病床整備(群馬県)▽医療情報連携システムの導入(千葉県)▽緩和ケア病棟の整備(三重県)▽地域連携パスの電子化・クラウド化(佐賀県)―などがあり、地域医療構想や病床機能報告における「回復期病棟」の整備に力を入れている所が多いようです。
もっとも、事業別の配分を都道府県別に見ると、石川県や福井県のように「地域医療構想の達成に向けた事業」に90%近い財源配分をしている所もあれば、栃木県のようにこの事業に4%未満しか財源配分していない所もあります。「地域の実情を踏まえる」という基金の設立趣旨を考慮すれば都道府県間の大きなばらつきは理解できますが、これがどのような成果に結びつくのか、これからしっかり見ていく必要があります。
介護分について事業別に見ると、次のような財源配分となりました。財源配分は国の予算編成時点で決まっていますが、委員からは「介護人材確保に対する財源規模が小さい」との指摘も強く、来年度(18年度)予算においてどのような配分になるか注目されます。
▽介護施設などの整備:422億9000万円(介護分の87.6%)
▽介護従事者の確保:59億9000万円(同12.4%)
都道府県別に見ると、鳥取県や広島県では介護従事者確保に多くの財源を配分しています。
介護従事者の確保に向けた事業は多種多様で、▽中学生・保護者向けの福祉の仕事PR(埼玉県)▽福祉の職場体験(長野県)▽介護福祉士養成課程に係る介護実習受け入れの支援(福島県)▽研修を受講した高齢者の介護職場への就業支援(説明会や個別相談会)(三重県)▽潜在介護福祉士向けの就労支援セミナー(福岡県)▽病院に勤務する医療従事者向けの認知症対応力向上研修(長崎県)▽新人介護職員に対するエルダー、メンター制度導入支援(三重県)▽介護ロボット導入支援(香川県)―などが目を引きます。
ところで、2018年度(平成30年度)には診療報酬と介護報酬の同時改定が控えており、また第7次医療計画と第7期介護保険事業(支援)計画もスタートします。このため厚労省は「医療と介護の更なる連携」を促進するために、医療と介護を一体的に推進する上での指針である『総合確保方針』の見直しに着手することとしています。
28日の会合では、総合確保方針を見直すに当たって、▽地域ごとの地域包括ケアシステム取り組み状況の「見える化」(PDCA、評価指標など)▽「退院支援」「看取り」「在宅医療・介護連携」「地方自治体における医療・介護連携を図る体制」などの強化―といった論点が提示されました。
厚労省は来年(16年)内、あるいは再来年(17年)初頭を目途に、総合確保方針の見直し案を固める方針です。