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退院調整加算の施設基準を厳格化、地域連携パスなどは「退院調整加算の加算」に組み替え―中医協総会

2015.10.28.(水)

 「A238 退院調整加算」の施設基準を厳格化し、「B005-2 地域連携診療計画管理料」や「B005-3 地域連携診療計画退院時指導料」などを「退院調整加算の加算」に組み替えてはどうか―。28日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会で、厚生労働省はこのような提案を行いました。

 あわせて、各種ある退院支援に向けた加算を、退院調整加算や介護支援連携診療料などに整理していくことも提案されています。

10月28日に開催された、「第309回 中央社会保険医療協議会 総会」

10月28日に開催された、「第309回 中央社会保険医療協議会 総会」

退院支援の専従者の病棟配置や、多職種カンファレンスを要件に

 早期の在宅復帰(つまり在院日数の短縮)は、医療費を適正化するにとどまらず、「院内感染のリスクを軽減する」「ADLの低下を防止する」など、医療の質を高めることに繋がります。そこで厚労省は、急性期病院に限らず、早期の在宅復帰を目指して退院支援に係る取り組みを診療報酬で評価しています。

 退院支援を評価する診療報酬項目は多種多様ですが、中でも「入院早期から退院困難な患者を抽出し、退院支援計画を策定し、その計画に基づいて退院させる」ことを評価する「退院調整加算」が、2016年度の次期診療報酬改定に向けてクローズアップされています。

 具体的には、退院調整加算について次の2つの見直しを行うことを厚労省が論点に掲げました。

(1)施設基準を厳格化するとともに、点数を引き上げることで退院支援を充実させる

(2)「B005-2 地域連携診療計画管理料」などを、退院調整加算の加算に組み替える

 (1)では、新たに「退院支援に専従する職員が、複数の病棟を担当として受け持ち、多職種カンファレンスを実施して、入院後早期に退院支援に着手する体制」や、「医療機関が他の医療機関などと恒常的に顔の見える連携体制」を整備することなどを、施設基準に盛り込み、その分、評価(点数)を引き上げる見込みです。

 厚労省の調査によれば、病棟に専従・専任の退院支援職員を配置することによって「より早期に退院が困難な患者を抽出できる」「より多くの患者に退院支援を行える」という効果が出ていることが分かりました。

病棟に専従・専任の退院支援担当者を配置すると、「より早期に退院困難患者を抽出できる」などのメリットがある

病棟に専従・専任の退院支援担当者を配置すると、「より早期に退院困難患者を抽出できる」などのメリットがある

 また、入院後早期に多職種カンファレンスを実施することで、在院日数を短縮できることも分かっています。

入院時に多職種によるカンファレンスを行うことで、平均在院日数の短縮という効果が出ている

入院時に多職種によるカンファレンスを行うことで、平均在院日数の短縮という効果が出ている

 さらに、「A238-4 救急搬送患者地域連携紹介加算」や「A238-6 精神科救急搬送患者地域連携紹介加算」などでは「協議などに基づいた、お互いに顔の見える連携関係」の構築が施設基準に盛り込まれていますが、現在の退院調整加算ではそうなっていません。「顔の見える関係」があれば、より密な連携が生まれ、円滑な早期退院につながると期待できます。

現在、退院調整加算では「病棟への退院支援の人員配置」や「協議などに基づく顔の見える医療機関間連携」といった施設基準は設けられていない

現在、退院調整加算では「病棟への退院支援の人員配置」や「協議などに基づく顔の見える医療機関間連携」といった施設基準は設けられていない

「地域連携診療計画管理料」や「救急搬送患者地域連携紹介加算」などでは「協議などによる顔の見える連携体制」が施設基準になっている

「地域連携診療計画管理料」や「救急搬送患者地域連携紹介加算」などでは「協議などによる顔の見える連携体制」が施設基準になっている

 厚労省の調査では、連携施設が多いほど在院日数が短いことが分かっています。また大阪府にある生長会府中病院では「退院・転院先の病院から看護師やMSWに来てもらい、患者の状態を見てもらう」といった取り組みをしており、これによって転院先の看護師、MSWが「ここまでやってもらっているなら安心」と考え、円滑な受け入れが進んでいるといいます(関連記事はこちら)。

 退院調整加算の施設基準厳格化によって、より充実した退院支援・調整が進むと期待できるでしょう。ただし、診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は「施設基準を厳格化すると退院調整加算を算定できない医療機関が出てきてしまう」ことを危惧し、施設基準の遵守具合に応じて点数を付けるべきではないかと注文を付けてました。

 なお退院支援職員を専従とすべきか、専任とすべきかという点について、厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は「今後、議論してほしい」と述べるにとどめています。

数多ある退院支援の診療報酬項目を整理、特殊なものは加算として継続

 前述のように、退院支援を評価する診療報酬項目は多数ありますが、厚労省が算定状況を調べたところ、大きなばらつきがあることが分かりました。

総合評価加算、退院調整加算(一般病棟)、介護支援連携資料料を除き、退院支援を評価する診療報酬は算定回数が少なく、増加もしていない

総合評価加算、退院調整加算(一般病棟)、介護支援連携資料料を除き、退院支援を評価する診療報酬は算定回数が少なく、増加もしていない

 そこで厚労省は数多ある点数項目を、「退院調整加算」「介護支援連携指導料」を中心として整理し、簡素化を図ってはどうかと提案しています。

 この提案に特段の異論は出ていませんが、診療報酬項目ごとに施設基準や算定要件が微妙に異なるため整理・統合は一筋縄ではいかないと見られています。

 ただし、退院調整に向けた診療項目の中には、言わば「特殊」なものもあります。例えば、地域連携パスを評価する「B005-2 地域連携診療計画管理料」「B005-3 地域連携診療計画退院時指導料(I)」「B005-3-2 地域連携診療計画退院時指導料(II)」、NICUからの早期退院を評価する「A238-3 新生児特定集中治療室退院調整加算」などです。

 これらについて厚労省は、「退院調整加算の加算」としてはどうかと提案しています。

精神科病院、有床診について他医療機関受診時の入院料減額を緩和

 ところで、現在、入院患者が他の医療機関を受診した場合、入院医療機関が算定する入院料に応じて、診療報酬が受信日について減額されます。

入院中に他の医療機関を受診した場合、入院料の種類によって当該受診日の入院料が30-70%減算される

入院中に他の医療機関を受診した場合、入院料の種類によって当該受診日の入院料が30-70%減算される

 この減額は、他の医療機関を受診した日は、入院医療機関での治療やケアが少なくなるために行われるものです。

 しかし、精神科病院や有床診療所などでは、他の診療科の医師が勤務しているケースが少なく、また減額の元となる入院基本料などが低く設定されているため「何らかの救済措置が必要ではないか」と厚労省は考えました。

 そこで、28日の中医協総会では「精神科病院や有床診療所など、特に診療科の少ない医療機関に入院する患者が、他の医療機関を受診する」場合には減算率を緩和してはどうかと提案しています。

 この提案について診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は「中小病院は緩和対象にはいるのか」と質問。厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は「診療科の特に少ない精神科病院と有床診療所を念頭に置いている」ことを説明しました。診療科が少ない医療機関では、患者が専門外の傷病を併発した場合などに、どうしても他の診療科に係る必要が出てくるので、ここを救済する措置であることが強調されています。

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