「救命救急やICUは高度急性期」など、特定入院料と病棟機能との関係を一部整理―地域医療構想GL検討会
2016.2.4.(木)
今年(2016)10月に各病院が行う病床機能報告に向けて、一般的に「救命救急入院料や特定集中治療室管理料などを算定している病棟は高度急性期機能に該当する」「特殊疾患病棟入院料や療養病棟入院基本料などを算定している病棟は慢性期に該当する」といった取り扱いにする―。こういった考え方が、4日に開かれた「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」で了承されました。
検討会では、「病棟の機能だけでなく、病院の機能にも着目した分析を進める」ことも決まっています。
病床機能報告制度は、一般病床・療養病床を持つすべての医療機関が、自院の病棟が「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」のいずれに該当するか、さらに各病院・病棟でどのような医療を提供しているかを毎年報告するものです。地域において、この報告結果と将来の医療需要を予想した「地域医療構想」とを突き合わせ、将来の医療提供体制を探っていくことが求められています。
報告制度は2014年秋からスタートし、すでに2回分の報告が行われています。厚生労働省がその結果を分析したところ、「報告された機能」と「算定している特定入院料」との間には次のような一定の相関があることが分かりました。
▽救命救急入院料を算定している病棟の96.0%が高度急性期と報告
▽地域包括ケア病棟入院料を算定している病棟の69.8%が回復期、27.0%が急性期と報告
▽回復期リハビリテーション病棟入院料を算定している病棟の99.6%が回復期と報告
▽療養病棟入院基本料1を算定している病棟の98.3%、療養病棟入院基本料2を算定している病棟の96.9%が慢性期と報告
こうした分析結果を基に、厚労省医政局地域医療計画課の迫井正深課長は「救命救急入院などの特定入院料の施設基準・算定要件から見て、病棟機能との親和性が高い」と説明。今後、一部の特定入院料と病床機能との関係について一般的な取扱いを決めてはどうかと提案しました。具体的には次のように例示されています。
(1)救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、脳卒中ケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料、新生児特定集中治療室管理料、総合周産期特定集中治療室管理料、新生児治療回復室入院管理料は「高度急性期機能」
(2)回復期リハビリテーション病棟入院料は「回復期機能」
(3)特殊疾患入院医療管理料、特殊疾患病棟入院料、療養病棟入院基本料は「慢性期機能」
厚労省は「地域包括ケア病棟入院料は回復期または急性期」としてはどうかとの考えも示していました。しかし、中川俊男構成員(日本医師会副会長)や武久洋三構成員(日本慢性期医療協会会長)は、「地域包括ケア病棟入院料の中には慢性期機能のところもある」と指摘があったことから、迫井地域医療計画課長は「地域包括ケア病棟の取り扱いをどうするかは検討したい」との考えを示しています。
なお、この取り扱いは「一般的なもの」であり、病院側が「療養病棟を回復期機能で報告する」ことなどは可能です。病床機能報告制度は、あくまでも病院が自主的に機能を選択する仕組みであるからです。
ただし、一般的な取扱いと大きく異なる報告をする場合には、厚労省から「間違っていないか」と確認などもなされるので、一応の説明ができるだけの根拠を持つことが必要と考えられます。
また、「救命救急入院料などを算定していなければ高度急性期ではない」というものでもありません。例えば、厳しい施設基準をわずかに満たせないために救命救急入院料などを届け出ていないが、重篤な患者を多く受け入れている一般病棟もあり、こうした病棟では当然、高度急性期として報告することになるでしょう。
この「一般的な取扱い」は、若干の修文を経た後に、2016年度(平成28年度)の報告マニュアルなどに盛り込まれる予定です。
なお一般病棟については、現在、病院単位の届け出となっているため「7対1は急性期機能」などの関係が見えてきません。ただし後述する「病棟コード」が導入され、仮に一般病棟入院基本料と機能との関係が見えてくれば、将来的に「7対1は○○機能」「13対1は○○機能」という取扱いが示される可能性も否定できません。
前述のように、病床機能報告制度は「各病院が自院の機能をどう考えているか」を明らかにするもので、地域医療構想と比較し、将来の医療提供体制のあるべき姿を地域ごとに探っていく狙いがあります。
また報告制度からは、さまざまな有用情報が得られるため、これをどのように活用していくかも重要なポイントとなります。厚労省は4日の検討会に、次のような活用方法を検討してはどうかと提案しています。
(a)報告制度で明らかとなる病棟ごとの情報(病棟部門の職員数、主とする診療科、入院患者の状況、入棟前・退棟策の場所別の患者状況、退院後に在宅医療を必要とする患者の状況、医療・看護必要度を満たす患者の割合、リハビリの状況)と、4つの機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)との関係を分析する
(b)病棟コード(2016年度の診療報酬改定でレセプトに付記する)を活用した分析方法を検討する
(c)病院が「ICU・HCUなどの特定の機能を有しているか」「手術件数や救急車受け入れ数などについて、一定以上の実績があるか」といった視点に立った分析や、病院の急性期度の数値化などを検討する
(d)例えば「10病棟のうち5病棟が高度急性期の病院と、10病棟のうち1病棟が高度急性期の病院との比較」や「高度急性期病棟を5床で構成している場合と、40床で構成している場合との比較」など、病院・病棟の規模や構成割合に着目した分析を行う
(c)と(d)は、「病院の機能」に着目したものです。昨年11月の検討会で相澤孝夫構成員(日本病院会副会長)から「病床、病棟、病院それぞれの機能を整理する必要がある」との指摘を踏まえたものと言えます(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
また(b)の病棟コードを次のように設定することも厚労省から報告されました。この4月からレセプトに病棟コードを記載し、また病床機能報告の際には「対応表」も併せて報告することになります。
▽病棟コードは9桁で、上5桁は病棟の機能、下4桁は各病棟を意味する
▽上5桁の機能は、高度急性期19061、急性期19062、回復期19063、慢性期19064とする
▽下4桁は、病院が自院の病棟について、それぞれ0001-0050の範囲で任意に設定する
▽各医療機関は、病棟名(例えば「3階東病棟」や「4階ICU病棟」など)、レセプトに印字・表示する病棟の名称(例えば「慢性期機能病棟01」や「急性期機能病棟02」など)、病棟コードを対応させた表を、病床機能報告の際に提出する
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