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地域医療構想策定に向け、「地域で欠けている医療機能」や「医療提供体制の評価」が必要―厚労省・神田医政局長

2016.1.19.(火)

 厚生労働省が19日、全国厚生労働関係部局長会議を開催しました。これは翌年度における厚生労働行政の重要事項を、都道府県の保健福祉などの担当者に2日間にわたって説明する会議です。

 会議の中で厚生労働省の神田裕二医政局長は、「今年はすべての都道府県で地域医療構想を策定してもらうが、その際にはデータを活用して『地域に欠けている医療機能はないか』『現在の医療提供体制の評価』などを行ってほしい」と強調しました。

厚生労働省医政局の神田裕二局長

厚生労働省医政局の神田裕二局長

地域医療介護総合確保基金、病床機能の分化・連携に重点配分

 医政局からは、神田局長と梅田珠実審議官から、大きく次の3テーマについて説明が行われました。

(1)医療提供体制改革

(2)医療安全対策

(3)後発医薬品の使用促進

 このうち(1)の医療提供体制改革では、やはり病院・病床の機能分化推進に向けた「地域医療構想」と「病床機能報告制度」に注目が集まります。

 地域医療構想は、2025年における医療需要と病床の必要量を▽高度急性期▽急性期▽回復期▽慢性期―の4機能ごとに推計し、現在の医療提供体制からどのように機能分化を進めていくかの、いわば設計図です。この設計図(構想)と毎年度の病床機能報告との隔たりを、2025年までに、徐々に埋めていく(地域医療構想調整会議)ことで、機能分化を図ることになります(関連記事はこちら)。

地域医療構想と病床機能報告結果の乖離を、調整会議で埋めていくことで、徐々に機能分化・連携を推進していく

地域医療構想と病床機能報告結果の乖離を、調整会議で埋めていくことで、徐々に機能分化・連携を推進していく

 今年(2016年)中にすべての都道府県で構想が策定される見込みですが、神田局長は次の2点(とりわけ後者)を重視するよう強調しました。

▽病床機能報告による現状と地域医療構想における必要病床数との比較(病床の機能分化・連携について、まず病床機能報告制度によって、各医療機関が担っている病床機能の現状を把握する)

▽病床の機能区分ごとにおける構想区域内の医療機関の状況の把握

 後者では、例えば「がん、脳卒中、心筋梗塞などの主な疾患に対応できる医療機関の分布」を把握することが必要です。具体的にはDPCデータを用いて、医療機関ごとにMDC(臓器別の疾患分類)別の患者数を集計することで、「各医療機関の機能」を把握するとともに、「地域で欠けている医療機能」がないかなどを確認することが求められます。

 また、地域の医療提供体制の定量的な評価・分析も重要となります。このためには、レセプトの発生頻度に大きなばらつきが生じていないかなどを見ることが考えられます。神田局長は「神奈川県の2次医療圏別に胃がんに対する内視鏡手術のレセプト発生頻度(年齢・人口構成を補正)」を紹介しました。

 それによると川崎南部医療圏では全国平均よりも当該レセプトの発生頻度が極めて高く、県西医療圏や県南医療圏では逆に極めて低いことが分かりました。神田局長は、「疾病の発生状況が異なるのか、それとも医療提供体制に問題があるのかなどを分析してほしい。それが機能分化に関する話し合い(調整会議)の出発点である」と強調しています。

地域医療構想策定に当たっては、レセプト出現率などから「現在の医療提供体制の評価」を行うことも肝要

地域医療構想策定に当たっては、レセプト出現率などから「現在の医療提供体制の評価」を行うことも肝要

 機能分化を進めるにあたっては施設・設備の整備が必要なケースも出てくるため、厚労省は地域医療介護総合確保基金を都道府県に設置し、ここから財政的支援を行うことにしています。2015年度には医療分として904億円(病床機能分化・連携に454億円、在宅医療確保に65億円、医療従事者の確保・養成に385億円)が確保され、2016年度の予算案でも同額が計上されています。神田局長は「病床機能分化・連携に重点配分」する考えなどを示しています(関連記事はこちら)。

社会保障の充実に向けた2016年度予算案の全体像、医療介護総合確保基金の積み増しが行われている

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非営利HD型医療法人、来年4月から施行

 病床機能の分化・連携を推進するためのツールの1つとして、地域医療連携推進法人(いわゆる非営利ホールティングカンパニー型の医療法人)制度があります。

 これは、医療法人をはじめとした、病院・診療所・介護老人保健施設を開設する複数の非営利法人が参加して地域医療連携推進法人を設立し、地域医療の再編に向けた統一的な連携推進方針の下に、地域医療構想の実現に向けて医療・介護事業を推進する、というもので、昨年(2015年)の国会で成立した改正医療法の中に規定されたものです(関連記事はこちら)。

主に複数の医療法人が参加して「新型法人」を設立し、新型法人が「地域医療構想の実現に向けた統一的な連携推進方針」を決定する

主に複数の医療法人が参加して「新型法人」を設立し、新型法人が「地域医療構想の実現に向けた統一的な連携推進方針」を決定する

 この医療法改正では、このほかに次のような見直しが行われました(関連記事はこちら)。

▽医療法人のガバナンス強化(一定の医療法人では公認会計士による監査の実施など)

▽医療法法人の分割規定の整備

▽社会医療法人の認定要件などに関する見直し(社会医療法人の認定を取り消されても、一定の要件に該当する場合には、救急医療等確保事業に係る業務の継続的な実施計画を策定し、都道府県知事の認定を受けた場合には収益継続を可能とするなど)

 この改正法の施行について梅田審議官は、次のように2段構えとする考えを明らかにしています。

【医療法人のガバナンス強化、分割制度、社会医療法人の認定要件など】:今年(2016年)9月目途に施行(16年3-4月を目途に政省令などを公布)

【地域医療連携推進法人、外部監査など】:来年(2017年)4月目途に施行(16年10-12月を目途に政省令などを公布)

特定機能病院、今年10月から承認要件を見直し

 梅田審議官は(2)の医療安全対策に関連して、特定機能病院の承認要件見直しにも言及しました。

 大学附属病院(これも特定機能病院)で重大な医療事故が発生し、調査の過程で院内の医療安全に対するガバナンス体制が不十分であることが判明したことを受け、2015年4月に塩崎恭久厚生労働大臣をトップとする「大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース」が設置されました。そこでは、全国の大学病院などについて実地調査を行い、特定機能病院の内部統制を強化(医療安全担当副院長を医療安全管理責任者に就けるなど)するとともに、外部監査をするための監査委員会を設置することなどを提言しました(関連記事はこちら)。

特定機能病院において医療安全管理体制を強化(内部統制の強化、外部監査の強化)するとともに、医療法に「特定機能病院には高度な医療安全管理体制が求められる」旨の理念規定を置くことになった

特定機能病院において医療安全管理体制を強化(内部統制の強化、外部監査の強化)するとともに、医療法に「特定機能病院には高度な医療安全管理体制が求められる」旨の理念規定を置くことになった

 厚労省では、この提言を受けて特定機能病院の承認要件見直しに向けた検討を進めており、梅田審議官は「今年(2016年)4月を目途に必要な省令などの見直しを行い、10月を目途に施行する予定である」と説明しています。

 

 なお、梅田審議官は後発医薬品の使用状況には都道府県間で大きなばらつきがあることを指摘。その上で、「2017年央に70%以上、2018-20年度末までのなるべく早い時期に80%以上」という骨太方針で定められた新たな後発品使用目標の達成に向けて、▽市区町村または保健所単位レベルでの後発品使用促進に向けた協議会の設置・開催▽汎用後発品リストの作成―などに力を入れるよう都道府県担当者に要望しました。

後発医薬品の使用割合は都道府県間で大きなばらつきがある

後発医薬品の使用割合は都道府県間で大きなばらつきがある

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