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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

非営利ホールディングカンパニー法人の概要まとまる、医療法改正案を3月下旬までに国会提出

2015.2.10.(火)

 非営利ホールディングカンパニー型法人(新型法人)の概要が、9日に開かれた「医療法人の事業展開等に関する検討会」でまとまりました。新型法人は、医療法人など病院・診療所・介護老人保健施設を開設する複数の非営利法人が参加して設立し、地域医療の再編に向けた統一的な連携推進方針(仮称)を策定。各参加法人はこの方針に基づき、地域医療構想の実現に向けて医療・介護事業を推進していきます。厚生労働省は3月下旬までに医療法改正案を国会に提出する考えで、今後、法案作成に向けて関係省庁や与党との調整を進めていきます。

主に複数の医療法人が参加して「新型法人」を設立し、新型法人が「地域医療構想の実現に向けた統一的な連携推進方針」を決定する

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2月9日に開催された、「第10回医療法人の事業展開等に関する検討会」

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医療事業行う複数の非営利法人が設立

 新型法人の創設は、地域医療構想を実現するための選択肢の一つで、「一般社団法人」として創設されます。非営利性の確保など「一定の基準」を満たす法人を都道府県知事が「地域医療連携推進法人」(仮称)として認定します。新型法人には医療法人の規定が準用されます。

 参画できるのは非営利法人のみですが、「営利法人が主たるメンバーである非営利法人」は参画できません。具体的には次のような考え方が整理されました。

(1)地域医療構想区域を基本とする事業地域範囲内で病院、診療所、老健施設を開設する複数の医療法人やその他の非営利法人の参加が必須

(2)定款の定めにより、介護事業などの地域包括ケア推進に資する事業のみを行う非営利法人の参加も可能

 厚労省は「広い範囲の法人参加」に期待していますが、自治体病院や地方独立行政法人については、総務省が「予算や人事など自治体の統治が揺らぐ」と難色を示しており、調整が進められています。

グループ内で病床を融通、機能再編を促進

 新型法人は、参加法人が統一的な事業実施を行うために「連携推進方針」(仮称)を決定します。地域医療構想の達成に向けて「医療機関相互の機能の分化、および業務の連携に関する事項」の方針を必ず定めます。

 その際、グループ内で「病床の融通」が可能です。例えば「ケアミックスのA病院(200床)と、同じくケアミックスのB病院(200床)の機能を再編し、A病院を350床の慢性期病院、B病院を50床の急性期病院とする」ことが可能になります。現時点でも都道府県によっては病床の融通が認められますが、これを全国的に可能にします。ただし、都道府県医療審議会の了承を得る手続きが必要になりそうです。

新型法人の設立により、「医師の再配置」や「病床の融通」が円滑に進むメリットがあると厚労省は説明

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 そのほか、新型法人は次のような業務を実施できます。

▽法人全体でのキャリアパス構築、医薬品・医療機器の共同購入

▽介護事業など地域包括ケアの推進に資する事業のうち、本部機能に支障のない範囲内の事業

▽一定の範囲での参加法人への資金貸付、債務保証、出資

▽地域包括ケア推進に関連する事業を行う企業への出資(新型法人が100%株式保有することなどが条件)

▽関連事業を行う一般社団法人などへの出資(基金に限定)

▽病院などの経営(都道府県知事の認可が条件)

 こうした事業を行うために参加法人は資金を提供しますが、本部経費(新型法人事務局の人件費や社員総会開催費用など)は「会費」、共通事務経費(共同研修や共同購入など)は「業務委託料」として提供します。

新型法人のガバナンスは法人自身が決定

 新型法人による参加法人の統治方法(ガバナンス)については、次のように整理されました。

▽議決権は、原則「各社員一個」とするが、別の定めも可能

▽参加法人の統括方法は、意見聴取・指導にとどまる「弱い関与」と、協議・承認を求める「強い関与」があり、新型法人が「予算」「借入金」「重要資産の処分」「事業計画」「定款変更」「合併・解散」といった事項ごとに選択する

 9日の意見交換では、ガバナンスに関連して松井秀征委員(立教大学法学部教授)は「弱い関与ではグループ内がバラバラになる可能性がある。一方、強い関与では、参加法人が決定と異なる行動を取った場合に問題が残る。そうした点を考慮して制度設計・運用を行う必要がある」と提言しました。

 また、新型法人は地域医療構想の実現を目的として設立されるので、地域の関係者の意見を法人運営に反映させる必要があります。このため、法人内部に「地域医療連携推進協議会」を開催しなければなりません。協議会には、自治体の首長や地域の医師会長らが加わり、新型法人へ意見具申を行います。新型法人はその意見を尊重しなければなりません。

 一方、新型法人の非営利性・透明性確保に関しては、次のような仕組みが整備されます。

▽剰余金の配当は禁止

▽解散時の残余財産は、国や地方公共団体などに帰属させる

▽役員・社員には、利害関係のある営利法人の役職員は就任させない

▽役員について親族などの就任制限要件を設定する

▽定款変更にあたっては、都道府県知事の認可など医療法の規定を準用する

▽認可にあたり、都道府県知事は都道府県医療審議会の意見を聴く

▽認定基準を書いた場合、都道府県知事は都道府県医療審議会の意見を聴いた上で、勧告・措置命令・認定取り消しができる

▽公認会計士などによる外部監査の実施や、ホームページなどでの財務諸表の公告を義務付ける

▽メディカルサービス法人を含む関係当事者との関係や事業の報告書について、閲覧に供する義務を課す(公告はしないが、閲覧請求があった場合には応じなければならない)

 注目される「法人全体の財務諸表」作成には技術的な課題も多く、「検討する」との記載にとどまりました。

新型法人「本当に動くのか」実効性への疑問も

 新型法人の概要はこのようにまとまりましたが、関係省庁や与党との調整が行われるため、法案でどのように規定されるかは不透明です。

 この点に関連し、橋本英樹委員(東京大学大学院医学系研究科教授)は「そもそも新型法人は内閣の指示を受けて議論してきたもので、当初は『地域包括ケアの実現』を目指したが、いつの間にか『地域医療構想の実現』に矮小化されてしまった。この仕組みは本当に動くのだろうか。個人的には、大山鳴動して、ネズミならぬ、ミミズ一匹に終わるのではないかと危ぐしている」と辛辣(しんらつ)な感想を寄せています。

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