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外来診療 経営改善のポイント 2024年度版ぽんすけリリース

非営利ホールディングカンパニー内で病床融通認める、厚労省方針

2015.1.30.(金)

 いわゆる非営利ホールディングカンパニー型法人(新型法人)の創設に向けた議論が大詰めを迎えています。「医療法人の事業展開等に関する検討会」は30日、報告書の取りまとめに向けて議論しました。

 厚生労働省からは「新型法人は、一般社団法人の一類型とし、医療法人の規制も適用する」ことや、「病院などを開設する複数の医療法人などの参加を必須とし、介護事業などを行う非営利法人の参加も認める」「参加法人内で一定の病床融通を認める」といった考え方が新たに示されました。

 厚労省は2月9日に報告書を取りまとめ、3月下旬までに医療法改正案を国会に提出したい考えです。

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1月30日に開催された、第9回「医療法人の事業展開等に関する検討会」

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新型法人は一般社団法人の一類型、医療法人の規定も準用

 新型法人は、「複数の医療法人などに関する統一的な方針を決め、連携を強化することで、ヒト・モノ・カネを有効に活用し、地域で良質かつ効率的な医療提供体制を確保する」ための手段の一つとして検討されています。統一的な方針の下で、病床機能分化と連携が進み、「地域医療構想」の実現に資すると期待されています。

 これまで「医療法人の一類型として新型法人を創設する」方向で議論が進められてきましたが、医療法では医療法人に病院などを開設する義務を課しています。この点、新型法人に病院などの開設を認めるかどうかに賛否両論があったことから、厚労省は方針転換をしました。

 具体的には、「一般社団法人のうち一定の基準に適合すると都道府県知事が認めるもの」を新型法人に認定し、医療法人の規定(非営利性など)も準用します。今回の新型法人は「社団型」のみで、「地域医療連携推進法人」という仮称が置かれています。

医療事業が基本、介護事業はオプション

 新型法人に参画する参加法人は次のように整理され、いわば「基本は医療、介護はオプション」という構造になっています。

(1)地域医療構想区域を基本とする事業地域範囲内で病院、診療所、老人保健施設を開設する複数の医療法人その他の非営利法人の参加を必須とする

(2)定款の定めにより、介護事業などの地域包括ケア推進に資する事業のみを行う非営利法人の参加も認める

 参画できるのは非営利法人のみで、「持分のある医療法人」も参画できます。自治体病院については、総務省が「予算や人事など自治体の統治が揺らぐ」と難色を示しており、今後調整が行われます。

 この点、今村定臣委員(日本医師会常任理事)は「非営利と言いながら、実態は営利法人が舵を取っている組織もあり、その参画を認めるべきではない」と指摘しましたが、厚労省医政局の担当者は「『営利法人を参加法人・社員とすることは認めない』という趣旨を延長すれば、間接的な営利法人の参入も防げる」と説明しています。

グループ内での病床融通認め、機能再編を推進

 新型法人の主な業務は「統一的な事業実施方針の決定」です。そこでは「医療機関相互の機能の分化、および業務の連携に関する事項」の方針を必ず定めなければいけません。これは、新型法人創設の目的である「地域における病床機能の分化・連携」を推進するためです。

 ところで、病床機能の分化・連携を進めると、例えば「いずれもケアミックスで200床のA病院とB病院の機能を再編し、A病院を350床の慢性期病院、B病院を50床の急性期病院とする」というケースが出てきます。この場合、都道府県によっては、総病床数が増えないにもかかわらず「慢性期病床が過剰なので、A病院の病床を削減してほしい」という勧告の対象となりかねません。

 これでは機能再編が進まないため、厚労省は「病床の融通を認める」(つまり、勧告の対象とならない)ことを提案しました。新型法人のインセンティブとして評価する声が委員から出ています。

 その他の業務については次のように整理されましたが、異論も出ており、調整が行われます。

▽法人全体でのキャリアパス構築、医薬品・医療機器の共同購入を実施可能

▽参加法人に対する貸付、債務保証、出資は一定の範囲で認めるが、贈与は認めない

▽地域包括ケア推進に関連する事業を行う株式会社に対して、新型法人の100%株式保有などを条件に出資を認める

▽一般社団法人などへの出資については、「基金に出資する」ことを認める

参加法人の統括方法は、事項ごとに決定

 新型法人のガバナンスは、次のように整理されています。

▽議決権は、原則「各社員一個」とするが、別の定めも可能

▽参加法人の統括方法は、意見聴取・指導にとどまる「弱い関与」と、協議・承認を求める「強い関与」があり、新型法人が「予算」「借入金」「重要資産の処分」「事業計画」「定款変更」「合併・解散」といった事項ごとに選択する

 後者の統括方法に関して、複数の委員から「強い関与は、参加法人の自律性を失わせる」と懸念する声が上がりました。しかし、これらは新型法人、ひいては参加法人自らが選択できますし、そもそも新型法人への参画自体も任意なので、杞憂(きゆう)に終わることも考えられます。

協議会を開き、地域の意見を法人運営に反映

 新型法人は「地域における医療提供体制の再構築」を目的としたものですから、地域関係者の意見を法人運営に反映させる必要があります。

 厚労省は、このための仕組みとして「地域医療連携推進協議会」を開催するよう求めています。協議会には、自治体の首長や地域の医師会長など地域関係者が出席し、新型法人へ意見具申を行います。新型法人はその意見を尊重しなければなりません。

 このほか、新型法人の非営利性・透明性を確保するために、次のような仕組みが整備される模様です。

▽剰余金の配当は禁止

▽解散時の残余財産は、国や地方公共団体などに帰属させる

▽役員・社員には、営利法人の役職員は就任させない

▽認可にあたっては、都道府県医療審議会の意見を聴くこととする

▽公認会計士などによる外部監査の実施や、ホームページなどにおける財務諸表の公告を義務付ける

 なお注目される「法人全体の財務諸表」作成には技術的な課題も多く、「検討する」との記載にとどまっています。

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