「負債100億円以上」など大規模医療法人、数年後から外部監査義務付けへ
2015.2.10.(火)
非営利ホールディングカンパニー型法人制度の創設とあわせて、医療法人制度見直しの考え方が、9日に開かれた「医療法人の事業展開等に関する検討会」でまとまりました。医療法人の経営の透明性を確保するために、一定規模以上の法人に会計基準の適用や、公認会計士などによる外部監査を義務付けなどが実施されます。ただし、施行については数年後となるもようです。
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「医療法人制度見直し」の内容は次の6項目です。
(1)一定規模以上の医療法人に、会計基準の適用・外部監査を義務付ける
(2)一定規模以上の医療法人に、計算書類の公告を義務付ける
(3)メディカルサービス法人(MS法人)との関係を毎年度、都道府県知事に報告させる
(4)理事長の設置・権限、忠実義務・任務懈怠時の損害賠償責任などを規定して明確化する
(5)医療法人の分割の規定を創設する
(6)社会医療法人について、地域の実情を踏まえた認定要件を加えるとともに、取り消し時の経過措置を設ける
(1)-(3)は医療法人による経営の透明性の確保を目的とし、(4)-(6)がガバナンス強化を目的としています。厚労省は、これらを医療法改正案に盛り込み、3月下旬までに国会に提出する考えです。
(1)は、地域医療の中で大きな役割を果たしている医療法人について、経営の透明性確保を一層推進するために行われます。
適用される会計基準は、四病院団体協議会が2014年2月に作成した「医療法人会計基準」をベースに作成されます。
医療法人は、会計年度ごとに「事業報告書」「財産目録」「貸借対象表」「損益計算書」やその他の必要書類を作成し、原則として一般公開しなければなりません。病院ごとの財務諸表を作成する基準として、「病院会計準則」がありますが、医療法人全体の財務諸表を作成する際の明確な会計処理基準はありません。
現在は企業会計の基準が用いられていますが、企業会計は近年、投資情報重視型に改定されているため、医療法人の会計処理基準として好ましくないと指摘されています。そこで四病協が、医療法人の実態に合った会計基準を作成したものです。
また、外部監査については、現在は「資本金5億円以上または負債200億円以上の株式会社」や「社会医療法人」には義務が課せられており、一般の医療法人でも「負債100億円以上」の場合には受けることが望ましいとされています。
さらに、14年6月に閣議決定された規制改革大綱で、医療法人の経営の透明化・適正化を推進するために「一定規模以上の一般の医療法人での外部監査義務付け」が示されたことを受け、今回の見直しとなりました。
「一定規模」の具体的な数値基準は未確定ですが、上記のように「負債100億円以上」が一定の目安になります。なお、梶川融委員(日本公認会計士協会副会長)の指摘を踏まえ、「負債額だけではなく、収益も考慮する」方向性も示されています。数値基準は今後、厚労省内部で検討されます。
会計基準の適用や外部監査については十分な準備が必要なため、厚労省医政局の担当者は「施行までには1-3年程必要かもしれない」との見解を示しています。
また、(2)の「一定規模以上の医療法人に、計算書類の公告を義務付ける」点についてもこれと同様の対応を取ると、厚労省医政局医療経営支援課の佐藤美幸課長は説明しています。
(6)の社会医療法人改革は、将来の税制改正への布石という位置付けです。
社会医療法人には税制上の優遇措置が設けられていますが、認定が取り消された場合には、過去に猶予されていた分の税金が一括課税されます。医療法人の中には、これを恐れて社会医療法人への移行をためらうところもあります。
厚労省は、「認定取り消し後の一括課税」の見直しを財務省にかねてから求めていますが、「社会医療法人の認定が取り消された後の法的位置付けがない」として財務省は要求を拒んでいます。このため厚労省は、社会医療法人の認定取り消し後の法的位置付け(経過措置)を次のように明確にし、将来の税制の見直しにつなげたい考えです。
▽社会医療法人の認定が取り消された場合に、「救急医療等確保特別事業計画」を策定して都道府県知事の認可を受けると、収益業務を継続できる
▽救急医療等確保事業の実施に必要な救命初療室などの施設の改築などに、収益業務で得た金額を充当できる
▽「救急医療等確保特別事業計画」の状況を毎年度、都道府県知事に報告する
なお、(5)の医療法人の分割は、社団法人などほかの法人類型と同様に「分割計画書などを分割前の医療法人が作成した上で、都道府県知事の認可があれば医療法人を分割できる」という規定を医療法に新設するものです。
対象となるのは「持分なし医療法人」のみですが、社会医療法人と特定医療法人は含まれません。