Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

病院・病床の機能分化はペースも重要、短期間での達成は好ましくない―厚労省・佐々木室長

2015.6.30.(火)

 地域医療構想は10年後の医療提供体制の姿を描いたもので、それに向けて10年かけて少しずつ機能分化を進める必要がある。短期間、例えば5年で機能分化を達成するのでは過不足が生じてしまい好ましくない―。このような見解を厚生労働省医政局の佐々木昌弘・医師確保等地域医療対策室長が、29日に開かれた日本慢性期医療協会の記念講演で示しました。

 また7月から再開する「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」で、今年10月の病床機能報告に間に合うように「どの機能にすればよいか迷ったときの助けとなる資料」を整備するものの、これはいわゆる「定量基準」とは異なるものであることも明らかにしました。

6月29日の日本慢性期医療協会「第40回通常総会」後の記念講演で、今後の医療提供体制について解説する厚生労働省医政局医師確保等地域医療対策室の佐々木昌弘室長

6月29日の日本慢性期医療協会「第40回通常総会」後の記念講演で、今後の医療提供体制について解説する厚生労働省医政局医師確保等地域医療対策室の佐々木昌弘室長

機能分化のペースにも留意を

 佐々木室長は「地域医療構想を踏まえた今後の医療の方向」をテーマに講演。地域包括ケアシステムや過去の医療法改正、医療介護総合確保推進法などを振り返った上で、地域医療構想が「10年後となる2025年の医療提供体制の姿を描くもの」であると改めて説明。

 さらに、「10年後の姿に向けて10年かけて機能分化を進める必要がある。これを短期間で達成することは好ましくない」と強調しました。例えば5年間で機能分化を進めた場合、10年後とのミスマッチ(病床の過不足)が生じてしまいます。佐々木室長は「機能分化のペースにも留意する必要がある」との考えを述べています。

2025年の必要病床数、現状との単純比較はできない

 地域医療構想に関連して、社会保障制度改革推進本部の「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」には、2025年の必要病床数が報告されています。そこでは、病床機能報告制度の結果(全体123.4万床)に比べて、▽高度急性期は6.1万床過剰▽急性期は18万床過剰▽回復期は27.5万床不足▽慢性期は6.7-11万床過剰―といった推計結果が示されました。

現在のベッド数、病床機能報告の結果、2025年の必要病床数を比較。全体としてベッドが過剰だが、回復期が圧倒的に不足している状況がうかがえる

現在のベッド数、病床機能報告の結果、2025年の必要病床数を比較。全体としてベッドが過剰だが、回復期が圧倒的に不足している状況がうかがえる

 これについて佐々木室長は「推計値と病床機能報告の結果を単純に比較してはいけない」と述べます。推計値は「機能ごとの患者数」を推計したものであるのに対し、病床機能報告の結果は「機能ごとに病棟を区分したもの」であるためです。病床機能報告では、病棟ごとに機能を定めるため、例えばある病棟(40床)を慢性期として報告すると、慢性期病床が40床とカウントされますが、そこには15人の回復期相当の患者がいるかもしれません。こうしたことから佐々木室長は「単純比較するとミスリードになってしまう」と述べているのです。

 また推計結果は「全体で20万床程度少ない病床数」を示しているため、「病床削減が進む」との懸念が医療現場にある点にも触れ、「医療介護総合確保法の中で、病床削減に関する規定は『稼働していない病床』についての削減要請だけで、他は機能転換を要請する規定となっている」ことを説明し、国が今後20万床の病床削減を行ったり、患者の追い出しを求めるようなことはないとの考えも明確にしました。

病床機能報告に迷ったときの資料を整備

 地域医療構想は「2025年の医療提供体制」を描くもので、毎年の病床機能報告の結果をベースに、その差を協議の場(地域医療構想調整会議)で少しずつ調整していきます。

 病床機能報告制度では、高度急性期や急性期といった4機能を病院自身が病棟ごとに選択しますが、現在は、例えば急性期は「急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて医療を提供する機能」といったように「定性的な基準」しかありません。

 そこで、将来的に「定量基準」を検討することになっていますが、佐々木室長は「報告制度の結果は公表されるので、『定量基準は不要』との考え方もある。定量基準そのものが必要かどうかも含めて検討する必要がある」との見解を述べました。

 しかし、現在の定性基準では病院側が判断に迷うケースもあるので、7月から「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」を再開し、今年10月の報告に間に合うように「医療現場が機能選択に迷った場合の助けとなる資料」を整備する考えです。この資料はいわゆる「定量基準」とは異なるものであると佐々木室長は説明しました。

療養病床や医師需給に関する検討会を立ち上げ

 また、新たに次の2つの検討会が発足することが佐々木室長から紹介されました。

▽療養病床の在り方に関する検討会(名称未定、7月開催)

▽医療従事者の需給に関する検討会(名称未定、今年夏開催)

 前者は「医療法における療養病床の看護配置に関する経過措置」や「介護療養病床の在り方」などを総合的に検討するもので、年内に「選択肢」をまとめる予定です。その後、来年から社会保障審議会の医療部会や介護保険部会などで「選択肢」をベースに議論を重ね、今後の方向を固めます。

 佐々木室長は「慢性期から在宅医療は一連のニーズであるとの考え方があり、これに対しどのようなサプライ(提供体制)を構築していくべきか、総合的な検討をしてもらいたい」との考えも述べました。

 また後者では、特に「医師養成」をテーマとする見込みで、「医学部入学定員の地域枠の在り方」などを含めて総合的な議論が行われます。

【関連記事】

高度急性期は13万、急性期は40万、回復期は37.5万床―社会保障制度改革推進本部
リハビリは全面的に包括評価へ転換すべき―日慢協の武久会長
高度急性期や急性期の患者数推計の計算式示される、リハの扱いに注意を―地域医療構想策定の関係省令

病院ダッシュボードχ 病床機能報告