高度急性期や急性期の患者数推計の計算式示される、リハの扱いに注意を―地域医療構想策定の関係省令
2015.4.1.(水)
地域医療構想の策定に向けて厚生労働省が3月31日、関係政省令や告示を公布し、合わせて関連通知を出しました。
都道府県が地域医療構想を策定するに当たり、▽将来の病床数の必要量の算定方法▽地域医療構想実現のために必要な措置▽病床機能報告の公表方法―などが明確にされています。なお、厚労省は「地域医療構想策定ガイドライン」も公表しています。
今後、厚労省は構想の策定に必要なデータの提供を順次進め、夏ごろには都道府県が実際に構想の策定作業に着手する下準備が整う見込みです。
同日に明らかにされた関係法規(政省令や告示、通知)は、次の通りです。
(1)地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等及び経過措置に関する政令
(2)地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令
(3)医療法施行規則第三十条の三十三の八の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法(厚労省告示194号)
(4)医療法施行規則第三十条の三十三の八の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法(同195号)
(5)「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」の一部の施行について(厚労省医政局長通知)
まず、注目される「病床数の計算式」は次のように規定され、今後、厚労省が提示するデータを代入して「構想区域における高度急性期、急性期、回復期の病床数」を算出します。
イメージとしては、流出入を勘案した将来の入院患者数を病床稼働率で割り戻すというものです。
「将来の入院患者数」のうち、高度急性期は、「入院基本料相当分・リハビリテーション料を除いた1日当たりの診療報酬出来高点数(以下、医療資源投入量)」が3000点以上の入院患者です。
急性期については、次の患者数の合計です。
▽医療資源投入量が600点以上3000点未満の入院患者
▽医療資源投入量が175点以上600点未満だが、早期リハビリテーション加算を算定しており、リハビリテーション料を加えた医療資源投入量が600点以上の入院患者
また回復期については、次の患者数を合計します。
▽医療資源投入量が225点以上600点未満の入院患者
▽医療資源投入量が175点未満だが、リハビリテーションを受けており、リハビリテーション料を加えた医療資源投入量が175点以上の入院患者
▽回復期リハビリテーション病棟入院料を算定する患者
▽在宅復帰に向けて調整を要する「医療資源投入量175点以上225点未満」の入院患者
このように、単純に「600点以上は急性期患者」とは扱われません。リハビリテーションの扱いは少々複雑ですので、留意が必要です。
一方、慢性期の入院患者数については、次の合計です。
▽「療養病棟入院基本料、療養病棟特別入院基本料、有床診療所療養病床入院基本料、有床診療所療養病床特別入院基本料を算定する患者から、医療区分1の患者の70%相当を除外した患者数」に、入院受療に関する補正率を掛けたもの
▽障害者施設等入院基本料、特殊疾患病棟入院基本料、特殊疾患入院医療管理料を算定する入院患者数
補正率とは「療養病床への入院受療率を、2025年時点の目標値を定めて徐々に集約していくべき」との考え方から導入されたもので、都道府県知事が定めます。なお、高齢者の単身世帯が多いなどの理由で、25年時点で目標達成が難しい場合には、30年を目標達成の期限にすることが認められます。
これらの計算式で患者数を推計し、病床稼働率で割り戻してベッド数を推計しますが、その際に用いる病床稼働率は、▽高度急性期は0.75▽急性期は0.78▽回復期は0.9▽慢性期は0.92―とされました。
患者の流出入数については、「都道府県知事同士が協議」の上で設定します。
地域医療構想では、医療機能ごとの病床数だけではなく「構想区域における将来の居宅などにおける医療の必要量」も定める必要があり、次の合計数がこれに該当します。
▽慢性期の入院患者のうち、医療区分1である患者の70%相当
▽慢性期の入院患者のうち、入院受療率の地域差を解消していくことで、在宅医療などの医療需要として推計する患者の数
▽医療資源投入量が225点未満の入院患者から、「医療資源投入量175点以上225点未満の退院調整が必要な患者」「回復期リハビリテーション入院料算定患者」「リハビリテーションを受け、リハビリテーション料を加えた医療資源投入量が175点以上となる入院患者」を差し引いた数
▽在宅患者訪問診療料を算定する患者の将来推計数
▽介護老人保健施設の将来の入所者数
地域医療構想を実現するためには、医療機関の自主的な機能分化が最も重要です。さらに、都道府県にも一定の権限が付与され、医療機関の機能分化を促していきます。
まず、不足する医療機能(例えば回復期)がある場合には、病院開設を許可する際に、その「不足している機能を提供すること」を条件にすることが可能です。
また、過剰な医療機能(例えば急性期)からの転換は、地域医療構想調整会議(協議の場)での協議を待つことが基本ですが、協議が整わなかったり、会議に参加しない病院があったりする場合には、病院管理者などに説明を求められます。
一方、不足している機能への転換を、都道府県側から要請することもできます。ただし、公的医療機関などについては転換を要請ではなく「指示」することも可能です。
さらに、勧告や命令などに従わない医療機関に対しては、都道府県知事が▽従わない旨の公表▽地域医療支援病院の承認取り消し▽管理者の変更命令(不正などのある場合)―という権限を行使することも認められています。
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