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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

自由開業の制限や病院管理者要件の見直しなど、規制的な医師偏在是正策を検討―医療従事者の需給検討会

2016.5.20.(金)

 地域・診療科の医師偏在を是正するため、「地域定着がより見込めるような医学部入学定員の地域枠の在り方」「十分ある診療科について、保険医の配置・定員の設定、自由開業・自由標榜の見直し」「特定の地域・診療科での一定期間の診療従事経験の、臨床研修病院などの管理者要件化」などを年末に向けて検討し、取りまとめる―。

 「医療従事者の需給に関する検討会」と、検討会の下部組織である「医師需給分科会」は、19日に大枠了承した「中間とりまとめ」の中にこのような方針を盛り込みました(関連記事はこちら)。

5月19日に開催された、「第3回 医療従事者の需給に関する検討会」

5月19日に開催された、「第3回 医療従事者の需給に関する検討会」

日医らの「規制受け入れ」認容提言を受け、規制的手法を検討へ

 いわゆる団塊の世代(1947-51年の第1次ベビーブームに生まれた方)が後期高齢者となる2025年や、その先の少子高齢化を見据え、医療従事者をどの程度養成していけばよいのか、最新のデータに基づいて推計する―。これが検討会・分科会に与えられたミッションです。

 しかし医療従事者、とくに医師については、「マクロ(日本全国)では充足していても、ミクロ(地域や診療科)で見ると過剰・不足が著しい」といった状況が生じます。いわゆる地域間・診療科間の医師偏在です。

 この問題は以前から指摘されており、厚生労働省は診療報酬による手当て(小児科・産科、手術などの評価充実)や地域医療センター(医師派遣機能を持つ)の設置など医療従事者の自主性を尊重した対策を採ってきました。

 これにより小児科医師数の増加など一定の改善が見られたものの、必ずしも十分な改善には至っていません。

 そこで検討会・分科会は、新たに次のような医師偏在是正策を採ってはどうかと考えました。注目すべきは、かなり「強い規制」策が盛り込まれている点です。この背景には、日本医師会と全国医学部長病院長会議会長が共同して取りまとめた『医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言』があります。提言では、各大学に医師キャリア支援センターを設置することなどを打ち出したほか、「医師の地域・診療科偏在の解決のためには、医師自らが新たな規制をかけられることも受け入れなければならない」との考えを明記しています。

 具体的な偏在是正策としては、例えば次のような項目が挙げられます。

▽地域枠について地元出身者の定着率を含めて検証し、地域定着がより見込まれるような地域枠の在り方を検討する

▽臨床研修の質などに配慮しつつ、「臨床研修希望者に対する募集定員数の倍率」の一層の縮小を検討する。都道府県別の募集定員は、医師不足地域などにより配慮する

▽新専門医制度の専攻医募集定員について、診療領域ごとに、地域の人口、症例数などに応じた地域ごとの枠を検討する

▽地域医療計画において、医師数が不足する特定の診療科・地域などについて、確保すべき医師数の目標値を設定し、専門医などの定員の調整を行えるようにする

▽将来的に医師偏在などが続く場合には、十分ある診療科の診療所の開設については、保険医の配置・定数の設定や、自由開業・自由標榜の見直しを含めて検討する

▽特定地域・診療科で一定期間診療に従事することを、臨床研修病院、地域医療支援病院、診療所などを管理者の要件とすることを検討する

▽フリーランス医師や多額の紹介料・給料を要する者への対応について検討する

▽地域の医療機関の事業承継に関し優遇税制について検討する

 

 ただし、これらは言わば「メニュー表」に過ぎず、具体的な内容は今後の検討を待つ必要があります。また、例えば「自由開業・自由標榜の制限」を行うためには医療法の改正などが必要になるため、検討会・分科会だけでなく社会保障審議会・医療部会でも議論する必要があるなど、さまざまな検討が必要となる点にも留意が必要です。

 今年末(2016年末)に向けて議論を進め、最終とりまとめの中により具体的な医師偏在対策案が盛り込まれる見込みです。

5月19日に開催された、「第6回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」

5月19日に開催された、「第6回 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」

厚労省は推計を精緻化する考えだが、そのエネルギーは「偏在対策具体化」に使うべき

 ところで、検討会・分科会では、将来の医師需要と供給を推計したことをお伝えしています(関連記事はこちら)。そこでは、地域医療構想をベースにした上で、「女性医師については結婚・子育てなどを考慮して仕事量を男性医師の0.8と見込む」「高度急性期・急性期機能に従事する医師の労働時間が一定程度適正化される(現在は週当たり56.6時間→将来は45.7-53.9時間に適正化)」といった一定の前提を置いています。

 この前提について、検討会・分科会の構成員からは「より精緻に設定する必要がある」との指摘が出されています。例えば加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)は、前述の高度急性期などの医師労働時間について、「より適正化することを考慮すべき」旨を主張。

 厚労省はこうした指摘を踏まえ、▽医師の働き方・勤務状況などの現状を把握するための全国調査実施▽新たな医療の在り方を踏まえた医師の働き方ビジョン(仮称)の策定―を行い、年末の最終とりまとめまでに「医師需給推計の精緻化」を行う考えです。

 ただし権丈善一構成員(慶應義塾大学商学部教授)は、「精緻化をしても根本は変わらない。精緻化のエネルギーは別のところに使うべきである」と指摘しています。

 また山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)や勝又浜子構成員(日本看護協会常任理事)が心配するように、「時間」も限られています。

 医療現場では、医師需給推計の精緻化よりも「偏在の是正」を望んでいるのではないでしょうか。精緻化に使われる貴重な資源(優秀な人材、時間)は、医師偏在是正策の具体化に用いるべきでしょう。

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