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病床機能報告の病床数と地域医療構想の必要病床数、「一致する性質のものでない」ことを確認―地域医療構想GL検討会

2016.3.10.(木)

 病床機能報告制度で報告された各医療機関の機能別病床数と、地域医療構想で推計した必要病床数は一致する性質のものではないが、将来のあるべき医療提供体制の実現に向けて、病床機能報告制度の病床数を参照情報として活用する―。こうした点を、今後の病床機能報告制度の中で明確にすることが、10日に開かれた地域構想策定ガイドライン等に関する検討会で決まりました。

 厚生労働省は、病床機能報告マニュアルや地域医療構想策定ガイドラインを見直して、こうした点を都道府県や各医療機関に周知していきます。

 なお、この日の検討会では「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会を発展的に解消し、新たに設置する『医療計画の見直し等に関する検討会』(仮称)の中で病床機能報告制度の見直しなどを議論していく」ことが厚労省から報告されました。

3月10日に開催された、「第14回 地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」

3月10日に開催された、「第14回 地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」

地域医療構想の進捗評価に当たり、病床機能報告結果は参照情報として活用

 地域で、将来のあるべき医療提供体制を構築するために、各都道府県では地域医療構想を策定します。構想の中では、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の機能ごとに必要な病床数を推計します。

 一方、一般病床・療養病床をもつすべての医療機関は、毎年10月に自院の病棟が「高度急性期」や「急性期」のどの機能に該当すると考えているのか、あわせて各病棟でどのような体制を敷き、どのような医療を提供しているのかを都道府県に報告します(病床機能報告制度)。

 今後、地域ごとに地域医療構想(将来のあるべき姿)と病床機能報告の結果(現在の姿)を比較し、「地域にどのような医療機能が不足しているのか」「あるべき姿にどのように近づけていくのか」を議論していくことになります。

 ところで、地域医療構想の必要病床数は、一定の前提(2013年の受療率をベースに、人口動態などを考慮している)の上に推計されるもので、個々の医療機関における病棟構成や患者構成などを反映したものでありません。

 また、病床機能報告制度では、現在の機能を医療機関が自主的に評価するもので、例えば「50床のA病棟には、10人の高度急性期患者、30人の急性期患者、10人の回復期患者が入院するので、最も多い急性期としよう」といった具合に判断されます。したがって、このA病棟について「10人の高度急性期、10人の回復期ニーズ」は報告の中に反映されないことになります。

 検討会では、相澤孝夫構成員(日本病院会副会長)らから「このような両制度の性質の違いが医療現場では十分に周知されておらず、混乱が起きている」との指摘がありました。厚労省もこの点を重視し、次のような考えを明確にすることを10日の検討会に提案、了承されました。

▽病床機能報告制度の病床数と、地域医療構想で推計される必要病床は、数値として一致する性質のものではない

▽その上で、都道府県はあるべき医療提供体制の実現に向けた取り組みの進捗状況を評価する必要があり、評価の参照情報として病床機能報告制度の病床数を活用する

 これに関連して中川俊男構成員(日本医師会副会長)は「病床機能報告の結果と、地域医療構想の必要病床数を全国単位、都道府県単位で集計・比較すれば、全国の医療現場は『病床削減が行われる』とまた誤解する。そうした誤解が生じないようにしてほしい」と厚労省に強く要望しています。

病床機能報告、「自院の等身大の姿の確認」「将来のビジョン策定」の2つが目的

 また、救命救急入院料などの特定入院料を算定する病棟・病室では、その施設基準に鑑みて一定の医療機能を有していることが明確です。このため検討会は、特定入院料を算定する病棟が選択する機能について、「一般的には」次のように取り扱うことも決めました(関連記事はこちら)。

(1)救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、脳卒中ケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料、新生児特定集中治療室管理料、総合周産期特定集中治療室管理料、新生児治療回復室入院管理料は「高度急性期機能」

(2)回復期リハビリテーション病棟入院料は「回復期機能」

(3)特殊疾患入院医療管理料、特殊疾患病棟入院料、療養病棟入院基本料は「慢性期機能」

(4)地域包括ケア病棟入院料は「急性期」または「回復期」または「慢性期」

特定の機能を有する病棟(特定入院料を届け出ている病棟)では、その施設基準に鑑みて医療機能が一定程度明確なため、今後の「一般的な取り扱い」が定められた(前回検討会の資料と比べて、地域包括ケア病棟入院料から慢性期機能に延びる点線矢印が追加されている)

特定の機能を有する病棟(特定入院料を届け出ている病棟)では、その施設基準に鑑みて医療機能が一定程度明確なため、今後の「一般的な取り扱い」が定められた(前回検討会の資料と比べて、地域包括ケア病棟入院料から慢性期機能に延びる点線矢印が追加されている)

 現在、慢性期機能を選択している地域包括ケア病棟では一部(2014年度報告では3.2%)ですが、前回の会合で中川構成員や武久洋三構成員(日本慢性期医療協会会長)から「慢性期機能の地域包括ケア病棟もある」との意見が出ていたため、(4)のように整理されました。

 こうした見直しは、今後、病床機能報告マニュアルや地域医療構想策定ガイドラインについて必要な見直しが行われます。新マニュアルは今夏、新ガイドラインは今年末に公表される見込みです。

 なお相澤構成員は、「報告制度には『現在の自院の等身大の姿を確認する』『将来のビジョンを策定する』という2つの重要な意味があるが、その点を認識していない医療機関もある。病院がしっかり考える時間を確保するために、新マニュアルは早め(例えば5月頃)に公表してほしい」と要望しています。

 この点、厚労省医政局地域医療計画課の迫井正深課長も、報告制度の目的について「将来の医療の姿を地域や医療機関に考えてもらうもの」と説明しています。

地域医療構想策定後、地域でどのような議論を進めていくのかを例示

 ところで現在、各都道府県で地域医療構想の策定が急ピッチで進められています。しかし都道府県からは、「構想策定後に、どのように構想実現に向けた取り組みを進めるかが必ずしも明確になっていない」との声が出ていると言います。

 このため厚労省は、地域医療構想調整会議(行政や地域医療関係者が一堂に会し構想実現に向けた議論を行う場)の議論を次のような枠組みに沿って進めてはどうかと提案しています(詳細は厚労省サイトから)。

(1)「地域の医療提供体制の現状」と「将来目指すべき姿」について認識を共有する

(2)地域医療構想を実現する上での課題を抽出する

(3)具体的な「病床の機能分化」「連携の在り方」を議論する

(4)地域医療介護総合確保基金を活用した具体的な事業を議論する

 例えば(2)の課題抽出に当たっては、「診療科や主要疾患に対する医療提供体制の確保は十分か」「地域で複数の医療機関が同様の機能を担い、かつ近接していないか」「医療圏での救急搬送時間や疾患ごとの病院までのアクセス時間が長くなっていないか」「医療従事者は適切に確保できているか」「自治体の取り組み体制や人材育成は適切に進んでいるか」などを、詳細なデータに基づいてあぶりだすことが例示されています(関連記事はこちらこちら)。

 こうした内容は今後、地域医療構想策定ガイドラインの中に盛り込まれますが、10日の検討会では、遠藤久夫座長(学習院大学経済学部教授)から、現在の各都道府県における地域医療構想策定論議でも参考にできるよう「詳細を早めに周知する」ことが指示されました。厚労省は、さまざまな機会を通じて都道府県に周知していく考えです。

2018年度からの医療計画の基本方針策定に向け、検討会を発展的に解消

 なお10日の検討会では、▽第7期地域医療計画(2018年度スタート)の基本指針を検討するために「医療計画の見直し等に関する検討会」(新検討会、仮称)を設置する▽「地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会」は発展的に解消し、病床機能報告制度などの改善論議は新検討会で続ける―ことも報告されました(関連記事はこちら)。

 第7期地域医療計画は2017年度に各都道府県が策定するため、新検討会は今春から開かれ、年内(2016年内)に意見取りまとめを行うことになります。

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