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在宅医療・介護連携の推進、市町村と医師会との連携が不可欠―社保審・介護保険部会

2016.3.25.(金)

 市町村の新たな地域支援事業の中に「在宅医療・介護連携推進事業」が位置付けられています。

 しかし、市町村サイドには「ノウハウ不足」や「医師会との連携不足」といった課題があるため、在宅医療・介護連携事業を推進するために国や都道府県がどのようにサポートしていけばよいか、入退院時の医療介護連携をどのように進めていけばよいか―。

 25日に開かれた社会保障審議会の介護保険部会では、次期介護保険制度の見直しに向けて、このようなテーマに関する議論を行いました。

3月25日に開催された、「第56回 社会保障審議会 介護保険部会」

3月25日に開催された、「第56回 社会保障審議会 介護保険部会」

市町村は「在宅医療・介護連携のノウハウ不足」などが課題と感じている

 いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年に向けて、医療・介護連携が重要課題となっています。このため2014年の介護保険法改正では、市町村に新たな地域支援事業(介護予防や日常瀬勝支援など)を行うことを義務付け、その中で「在宅医療・介護連携の推進」も市町村事業に位置付けられました(2018年4月までに全市町村で実施する)。

 しかし、在宅医療の推進は、これまで専ら都道府県の事業(医療計画の重要事項の1つ)とされていたことから、市町村が「在宅医療・介護連携事業」を行うにあたり次のような課題があると指摘されています。

▽事業実施のためのノウハウが不足している

▽行政と関係機関(医師会、病院、歯科医師会など)との協力関係の構築

▽事業推進を担う人事在の確保

▽地域の医療・介護資源の不足

▽事業の存在や必要性を医療・介護関係者などに認知してもらうこと

▽事業実施状況のばらつき(市町村は原則として「地域の医療・介護資源の把握」「在宅医療・介護連携の課題抽出と対応策の検討」「切れ目のない在宅医療・在宅介護の提供体制の構築」「医療・介護関係者の情報共有の支援」「在宅医療・介護連携に関する相談支援」「医療・介護関係者の研修」「地域住民への普及啓発」「在宅医療・介護連携に関する関係市町村の連携」の8事業を行うことが求められるが、2015年8月1日時点で8事業すべてを実施できているのは全体の2.5%に止まっている)

 また、市町村サイドは都道府県に対して▽医師会など関係団体との調整▽広域的な医療介護連携(退院調整など)に関する協議▽在宅医療・介護資源に関するデータの提供▽先進事例などの情報提供や研修―といった点でのサポートを希望していることも厚生労働省の研究事業から明らかになっています。

 こうした状況を踏まえ、厚労省老健局老人保健課の佐原康之課長は、次期介護保険制度改正に向けて、次のような点を議論してほしいと求めています(論点提示)。

(1)国や都道府県(保健所)の役割をどう考えるか

(2)病院の入退院時など、複数市町村のまたがる広域的な医療介護連携の推進を図る上で、都道府県(保健所)および医療介護に関わる関係機関の役割をどう考えるか

(3)医療計画と介護保険事業計画を整合的に策定するために、どのような視点が必要か

委員から「形だけなく、中身のある在宅医療・介護連携事業の実施」を求める声も

 (1)は、上述のような市町村が認識している課題、希望している支援にどう応えるべきかというテーマです。

 この点について鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は「都道府県医師会や郡市区医師会との連携が鍵になる。市町村はまず医師会に相談してほしい」と強く述べました。佐原老人保健課長も「医師会との連携なしに在宅医療・介護連携はうまく進まない」とコメントしています。

 また武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、在宅医療・介護連携を進める上では急変時などに入院できる後方病床(バックベッド)の重要性を指摘。地域の中小病院やクリニックを中心として地域包括ケアシステムを構築し、その中で在宅医療・介護の連携を進めるべきと述べています。

 一方、岡良廣委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)や齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)は、「国と都道府県(保健所)の役割を介護保険法などの明記する」ことを提案。法的裏付けを持って市町村サポートを行うことの必要性を述べています。

 また伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)や土居丈朗委員(慶應義塾大学経済学部教授)は、「市町村が行う在宅医療・介護連携は形だけではなく、意味・中身のあるものではなければならない」と指摘。例えば「現場の課題抽出」に当たっては必ずメンバーに現場で実務を行っている人を参加させるなど、具体例も挙げています。

病院の入退院時にケアマネと情報共有することで、円滑な在宅療養が可能に

 (2)は、例えば「A市民病院に入院、または退院する患者の中にはA市の住民もいれば、B市、C市の住民もいる。このため、A市単独で退院支援などのルールを設けるのではなく、統一的な退院支援などのルールを少なくとも2次医療圏単位で構築する必要があるのではないか」といった問題意識を論点に落とし込んだものと言えます。

 「入院時、退院時にケアマネジャーと病院職員とが情報を共有することで、切れ目ない在宅医療・介護が提供できる」という指摘を受け、厚労省は「都道府県の調整の下で、入退院時のルール(情報提供など)を策定する事業」(都道府県医療介護連携調整実証事業)を行っています。その中で前述のような問題が出てきたのです。

 また要介護認定を受けていない人、あるいは要介護度の低い人では、病院とケアマネジャーの連携が不十分であることも分かっています。

 こうした点について、武久委員は「ケアマネジャーには医療知識の少ない方が多く、入院時にどの病院職員に情報提供をすればよいか分からず、そもそも病院の敷居が高いと感じている」と指摘。医師会の協力を得て、ケアマネジャーの医療知識向上を目指すべきと提案しています。

 なお、2016年度の診療報酬改定では、これまでの退院調整加算の要件を厳格化した「退院支援加算1」が新設されました。退院支援加算1では「顔の見える継続的な連携関係」が盛り込まれ、具体的には▽20か所以上の医療機関や介護施設・事業所との年3回以上の協議▽ケアマネジャーと連携した退院調整を評価する介護支援連携指導料の算定が100床当たり年間15回以上(療養病棟などでは10回以上)―などが施設基準に規定されています(関連記事はこちら)。

 佐原老人保健課長は「退院支援加算1の新設によって、医療機関とケアマネジャーとの連携が進む」ことに期待を寄せています。

介護療養などの移行先、新設する特別部会で具体的に議論

 25日の介護保険部会には、25対1医療療養や介護療養の新たな移行先を具体的に議論するための特別部会設置案も報告されました。

 これについて鈴木委員は「検討会では介護療養などの経過措置再延長を第1選択肢とすべきと主張してきた。特別部会ではこうした点も議論すべきである」との見解を述べています。

 

 なお、介護保険部会の今後のスケジュールについて厚労省老健局総務課の日原知己課長は、「夏までに検討課題を一通り議論し、秋以降に2巡目の議論をしてもらう。年内に意見を取りまとめてほしい」と説明しています。

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