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【15年度介護報酬改定答申2】医療ニーズ高い要介護者の在宅移行を推進、訪問看護に新加算

2015.2.6.(金)

 訪問看護では、新たな加算「看護体制強化加算」(1か月当たり300単位)を設けます。これは、中-重度の要介護状態になっても在宅生活を送れるよう、医療ニーズへの対応を強化した事業所を評価するものです。算定日の属する月の前3か月に▽「緊急時訪問看護加算」を算定する利用者が50%以上▽「特別管理加算」を算定する利用者が30%以上ーで、かつ「算定日の属する月の前12か月に、ターミナルケア加算を算定する利用者が1人以上」のすべてを満たすことが要件です。

 また、基本報酬は訪問看護ステーションと病院・診療所の取り扱いに差を付けます。訪問看護の実施時間が「30分以上1時間未満」の場合、訪問看護ステーションでは834単位から814単位と20単位(2.4%)引き下げられます。一方、病院・診療所では553単位から567単位と14単位(2.5%)の引き上げです。

 厚生労働省は、「将来的な訪問看護従事者の増員を図るべく、病院・診療所からの訪問看護供給量の拡大などを促す必要がある」と説明しています。

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定期巡回・随時対応を利用しやすい報酬体系へ

 12年度から始まった定期巡回・随時対応サービスについては、ほかのサービスとは異なる観点からの見直しが行われました。

 定期巡回・随時対応は「地域包括ケアシステム」の要の1つと期待されていますが、思うようには整備が進んでいません。この背景には「単位数が高く、区分支給限度基準額の範囲内で利用しにくい」という点があると指摘されます。

 区分支給限度基準額は、「あれば便利な介護サービス」の利用を適正な水準に抑えるため、要介護度別に決められた公的介護サービスの上限額です。上限額を超えるサービスは全額自己負担で利用することができます。

 この点、定期巡回・随時対応を利用すると上限額に近づいてしまい、福祉用具貸与などほかのサービスを利用しにくくなると言われています。そこで今回の改定では、基本報酬の一部を「総合マネジメント体制強化加算」として切り分け、この加算の部分を区分支給限度基準額の対象外にします。この加算は1か月当たり1000単位にします。

包括型サービスの報酬と区分支給限度基準額の関係

包括型サービスの報酬と区分支給限度基準額の関係

 一方、基本報酬については、切り分けた1000単位分を超えて引き下げます。利用者が要介護3の場合、現在は1万7900単位を算定できますが、4月からは加算を合わせて1万7769単位と131単位(0.7%)の引き下げます。

 こうしてみ見ると「総合マネジメント加算を算定できない定期巡回・随時対応の事業所にとっては大幅なマイナス改定」とも思われますが、厚労省老健局の高橋謙司・振興課長は、「業所に期待される役割を果たしていれば、総合マネジメント加算を算定できるようにする」との見解を示しています。

 ところで、14年の介護保険制度改正に伴って、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の新規の入所者は原則として要介護3以上の人に限定されるため、その他のサービスを充実することが求められます。そこで今回の報酬改定では、人員体制を充実している事業所を評価する「サービス提供体制強化加算」に、「介護職員のうち介護福祉士の割合が60%以上」の類型を新たに設け、1か月当たり640単位を設定しました。

 事業所と同じか隣接する敷地内のサービス付き高齢者向け住宅などの居住者にサービスを提供する場合には、1か月当たり600単位の減算を行う規定が新設されました。戸建ての場合に比べ移動のためのコストを効率化できると判断しました。

介護職員処遇改善、さらなる上乗せ加算を新設

 介護職員の処遇改善を目的とした加算を継続するかどうかかが、今回の改定では大きな争点となりました。「処遇改善は本来、事業所が自ら行うべきで、国の介入は最小限にとどめるべき」「介護職員より低賃金で働いている人もいる。その人たちが納めた保険料を使って処遇改善を行うことは許されない」といった継続反対派と、「介護事業所では労使関係が成熟しておらず、国が一定程度介入すべき」「高齢化が進展する中でマンパワーの拡充は急務で、人材確保を進めるための手当てが必要」といった賛成派の間で、激しい論争が行われたのです。

 最終的に、現在の「介護職員処遇改善加算」を15年度改定でも継続させるだけでなく一層手厚く評価する「介護職員処遇改善加算(Ⅰ)」を新設することで決着しました。人材確保やスタッフの専門性の向上」を重視したものですが、次回の改定以降も継続するかどうかは、「より中長期的な視点」で検討されることになっています。

介護職員処遇改善加算、15年度以降も存続し、要件を強化した新たな加算も新設

介護職員処遇改善加算、15年度以降も存続し、要件を強化した新たな加算も新設

 新設された「介護職員処遇改善加算(Ⅰ)」は、次のような要件を満たすことで算定できます。

▽介護職員の賃金改善に必要な費用の見込み額が、加算の算定見込み額を上回るだけの賃金改善計画を策定し、適切な措置を講じる

▽介護職員処遇改善計画書を作成し、すべての介護職員に周知し、都道府県知事に届け出る

▽介護職員処遇改善加算の算定額に相当する賃金改善(処遇改善加算を既に算定している場合はさらに1万2000円程度、未算定の場合は2万7000円程度の増額)を実施する

▽処遇改善の実績を年度ごとに都道府県知事に報告する

▽労働基準法などの違反が1年以上ない

▽労働保険料を適正に納付している

▽「介護職員の任用の際における職責・職務内容の要を定め、書面を全介護職員に周知している」「キャリアパス計画(資質向上の支援に関する計画)を策定し、研修実施または研修機会の確保を行い、全職員に周知している」ことをいずれも満たす

▽15年4月から実施した処遇改善の内容や改善に伴う費用を全職員に周知している

 このうちの最後の要件を見ると新たな加算(Ⅰ)は15年4月からは算定できないのではないかとも思えますが、厚労省老健局の迫井正深・老人保健課長は「これから出す通知やQ&Aなどで工夫し、4月から算定できるように措置する」旨を説明しています。

 加算(Ⅰ)の水準は、サービスによって8.6%(訪問介護や定期巡回・随時対応)から2.0%(介護療養型など)と異なっています。これは各サービスの職員に占める介護職員の割合に応じて設定されるためです。処遇改善加算以外の報酬にサービスごとの加算率を掛けて、加算金額を計算することになります。

 現在の処遇改善加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)は、新たな加算(Ⅰ)の創設に伴い加算(Ⅱ)(Ⅲ)(Ⅳ)にスライドされますが、単位数などの内容は変わりません。