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第3期がん対策基本計画案を了承、2020年までに受動喫煙をゼロにする—がん対策推進協議会

2017.6.5.(月)

がんの克服を目指し、予防・医療の充実・共生を図り、これらを推進するための研究や人材育成などの基盤整備を進める。予防においては、「2020年までに受動喫煙の機会を有する人の割合を、職場や飲食店、家庭などのすべてでゼロにする」ことを目指す―。

2日開催されたがん対策推進協議会では、このような内容を盛り込んだ「第3期がん対策推進基本計画」案が概ね了承されました。今後、門田守人会長(堺市立病院機構理事長)と厚生労働省で文言を詰め、パブリックコメントなどを経た後に、閣議決定されます。

6月2日に開催された、「第68回 がん対策推進協議会」

6月2日に開催された、「第68回 がん対策推進協議会」

受動喫煙の機会を、2020年までにゼロとする方針を掲げる

我が国のがん対策は、概ね5年を1期とする「がん対策推進基本計画」に基づいて進められており、協議会では2017年度からの第3期計画策定に向けた議論を続けていました。5月17日の前回会合では、全体目標として「がんの克服」を掲げ、その実現のために▼がん予防▼がん医療の充実▼がんとの共生▼基盤の整備―のすべてを重点分野に位置づけて推進する—方針を決定しています。

2日の会合では、これまでに協議会で出された意見を整理した「第3期がん対策推進基本計画」案を厚生労働省が提示。いくつかの注文は付きましたが、概ねで了承されました。厚労省大臣官房の宮嵜雅則審議官(危機管理、科学技術・イノベーション、国際調整、がん対策担当)は「最終文言を門田会長と詰め、パブリックコメント募集など必要な手続きを経て閣議決定となる」ことを説明しました。

第3期がん対策推進基本計画の概要

第3期がん対策推進基本計画の概要

 
2日の会合論議と併せて、計画案を眺めてみましょう。

まず「がん予防」では、▼1次予防(生活習慣の改善)▼2次予防(早期発見、検診)―を進めていくことになります。

このうち前者の1次予防については、「受動喫煙の機会を有する人の割合を、2020年までに職場や飲食店、家庭などのすべてでゼロにする」との目標が掲げられました。第2期計画では、2022年度までに▼行政機関・医療機関でゼロ%▼家庭で3%▼飲食店で15%—といった目標値が設定されていますが、「がん患者は受動喫煙で再発してしまうのではないかなどの強い不安を抱えている」(桜井なおみ委員:CSRプロジェクト代表理事)、「最近のゲノム解析によれば、喫煙によって特徴的な変異が生じ、肺がん・口腔がんにとどまらずリスクが高まることが明らかになっている(中釜斉委員:国立がん研究センター理事長)、「がん性疼痛なども喫煙と大きく関係しているとの研究結果がある」(細川豊史委員:京都府立医科大学疼痛・緩和医療学教室教授)といった指摘が相次ぎ、受動喫煙をゼロにする目標を「協議会の総意」として決定することになりました。

また山口建会長代理(静岡県立静岡がんセンター総長)は、直接喫煙のリスクは受動喫煙よりもはるかに高い点を指摘し、「受動喫煙と並んで直接喫煙対策も充実する必要がある」と指摘しました。

市町村のがん検診、精度を高めるために「指針に基づく実施」が必要

後者の「がん検診」については、▼国、都道府県、市町村は、これまでの施策の効果を検証した上で、効果的な受診率向上のための方策を検討し、実施する(50%を目標値とする)▼都道府県が、指針に基づかない方法でがん検診を行っている市町村に、必要な働きかけを行うなど精度管理の向上に努める▼国、都道府県、市町村は、がん検診や精密検査の意義などの普及に努める▼国が職域におけるがん検診を支援するとともに、科学的根拠に基づく検診が実施されるようガイドラインを策定する—などの取り組みを行うことになります。

このうち、指針に基づかない方法でがん検診を行っている市町村は全体の85.7%(1488市町村)に上ることから、桜井委員は「公費で対策型検診(がんの死亡率低下を目指し公共政策として行う検診)として行うにもかかわらず、指針に基づかないことは問題である」と指摘し、市町村名の公表などを行うべきと主張しました。しかし山口会長代理や若尾直子委員(がんフォーラム山梨理事長)は、「住民からの要望などに基づいて、必ずしも指針に則らない検診を行わざるを得ない状況もある。罰則的に市町村名を公表するのは、やる気をそいでしまう」と反論。「指針に基づかないがん検診の内容把握(推奨されない方法で実施しているのか、推奨こそされていないが、将来のエビデンスに結びつく可能性のある方法で実施しているのかなど)を行い、精度管理向上に必要な働きかけを行っていく」などの記述とすることで落ち着いています。

科学的根拠に基づく免疫療法と、そうでない免疫療法との区別を明確に

がん医療の充実に関しては、(1)がんゲノム医療(2)がんの手術療法、放射線療法、薬物療法、免疫療法(3)チーム医療(4)がんのリハビリテーション(5)支持療法(6)希少がん、難治性がん(それぞれのがんの特性に応じた対策)(7)小児がん、AYA世代のがん、高齢者のがん(8)病理診断(9)がん登録(10)医薬品・医療機器の早期開発・承認などに向けた取組—という柱が掲げられました。

このうち(1)のゲノム医療については、「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」が報告書をまとめており、医療提供体制や保険制度、データベース構築、研究開発など多様な対応を行う方針が確認されています。

(2)では、▼新たながん診療提供体制について2年以内に検討する▼必要に応じ拠点病院などの整備指針の見直しを行い、機能を更に充実させる—などの目標を設定しています。また、新たな治療法として「免疫療法」が明示されました。「十分な科学的根拠を有する治療法」と「そうでない治療法」があり、これらは明確に区別することの重要性を指摘しています。ただし山口座長代理は、「最近、免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボなど)を取り入れた民間療法のような免疫療法が出現してきている。免疫チェックポイント阻害剤を使えば科学的根拠があるのではなく、当該医療について臨床試験を行って初めて科学的根拠が得られる。この点を明確にする必要がある」と強調しています。

(4)のリハビリテーションについては、「拠点病院などにおけるリハビリのあり方について3年以内に検討し、普及に努める」方針を打ち出しました。

(6)の希少・難治がん対策については、「希少がん患者が適切な医療を受けられる環境を整備するため『中核的な役割を担う機関』を整備し、希少がん対策を統括する体制を2年以内に整備する」ことなどを明確にしています。

また(7)では、世代の特性に応じたがん対策を進めるために、▼▽小児がん▽AYA世代―のがんを速やかに専門施設で診療できる体制の整備を目指し、3年以内に小児がん拠点病院とがん診療連携拠点病院などの整備指針の見直しを行う▼高齢者のがん診療に関する診療ガイドラインを策定し、拠点病院などに普及させる—ことを掲げました。小児がん対策については、「症例の集約化」を進めるために小児がん拠点病院が指定されていますが、さらにAYA世代(Adolescent and Young Adult世代)についても、多様なニーズに応じた情報提供、相談支援・就労支援を実施できる医療機関を整備する考えを明確にしています。

拠点病院と地域との連携などの推進に向け、拠点病院の要件も見直し

さらに「がんとの共生」に関しては、▼がんと診断された時からの緩和ケア▼相談支援、情報提供▼社会連携に基づくがん対策・がん患者支援▼がん患者等の就労を含めた社会的な問題▼ライフステージに応じたがん対策―という5つの柱を立てています。

このうち「社会連携に基づくがん対策・がん患者支援」では、▼拠点病院等と地域との連携▼在宅緩和ケア—の重要性を指摘し、「がん患者がその療養する場所にかかわらず、質の高いがん医療を受けられるよう、2年以内に『地域連携体制』について検討し、必要に応じて拠点病院などの整備指針の見直しを行い、機能を充実させる」こと、「拠点病院などが、地域における緩和ケアの状況を把握し、地域における緩和ケア提供体制を検討する場を3年以内に設ける」ことなどを掲げました。

近く、新たな基本計画が閣議決定され、これに基づき「がん診療提供体制の充実」や「ゲノム医療体制の整備」「がん研究の推進」など、より具体的な施策の推進に向けた議論などが加速することになります。とくに、がん診療連携拠点病院では「指定要件の見直し」が、検討会(がん診療提供体制のあり方に関する検討会)で、▼医療安全に向けたガバナンス体制の強化▼ゲノム医療を提供する拠点病院の要件設定—などが行われる方針が決まっており、今後の動きに要注目です(関連記事はこちらこちらこちら)。

 

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