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がんゲノム医療、当面は新設する「がんゲノム医療中核拠点病院」で提供―がんゲノム医療懇談会

2017.4.25.(火)

 がんゲノム医療の提供は、現在、がん診療連携拠点病院を中心に行われているが、質を担保するために、当面は、新設する「がんゲノム医療中核拠点病院」(仮称)で行うこととしてはどうか。また、がんゲノム情報を集約管理する「がんゲノム情報管理センター」(仮称)を設置し、そこから民間も参画する「がんゲノム知識データベース」(仮称)にデータ提供などを行い、新たながんゲノム医療や検査手法の開発を進めてはどうか―。

 25日に開催された「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」では、こうした論点について議論を深めました。

4月25日に開催された、「第3回 がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」

4月25日に開催された、「第3回 がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」

ゲノム情報を集積し新たな医療技術を開発、それを拠点となる病院で提供

 がんとの闘いに終止符を打つために、厚生労働省はがんゲノム医療の臨床現場への導入を推進する方針を明確にしており、現在▼薬事承認や保険適用などの対応を検討する「制度班」▼ゲノム医療提供体制に係る具体的な計画を検討する「コンソーシアム班」―の2班で検討を進めています(関連記事はこちら)。

 前者の「制度班」では、医学的に意義がある複数の遺伝子検査(パネル検査)の薬事承認(先駆け審査制度などの活用)や保険適用に向けた検討が鋭意進められています。

ゲノム検査の内容によって、保険給付範囲とするか、保険外併用療養の対象とするかを区別する方向で検討する

ゲノム検査の内容によって、保険給付範囲とするか、保険外併用療養の対象とするかを区別する方向で検討する

 

 後者の「コンソーシアム班」では、検討の一環として本懇談会を設置し、がんゲノム医療を提供するためのコンソーシアム(共同事業体)構築に向けた整理を行っています。25日の懇談会では、厚労省から(1)がんゲノム医療を提供可能な医療機関の整備(2)がんゲノム医療情報の集約・管理・利活用推進(3)がんゲノム知識データベースの構築―などについて論点が示されました。

 コンソーシアムの大枠と、今回の論点を突合すると、▼がんゲノム医療情報を集約し管理する『がんゲノム情報管理センター』(仮称)を設置する(上記の(2))▼がんゲノム情報管理センターが、集約した情報をもとに、民間も参画する『がんゲノム知識データベース』(仮称)にデータを提供し(上記の(3))、そこで新たなゲノム医療技術や検査方法などを開発する▼開発された技術などをもとに、新たに設けられる『がんゲノム医療中核拠点病院』などで(上記の(1))、質の高いがんゲノム医療を提供する—といった構図が読み取れます。

がんゲノム医療推進コンソーシアムを構築し、患者1人1人への「最適な医療」(個別化医療)の提供を支援する

がんゲノム医療推進コンソーシアムを構築し、患者1人1人への「最適な医療」(個別化医療)の提供を支援する

当面は、ゲノム医療の質を担保するため、十分な体制や実績のある病院で提供

 がんゲノム医療は、例えばオプジーボ投与などの形で、すでにがん診療連携拠点病院を中心医提供されていますが、厚労省は、より質の高いゲノム医療提供のための医療提供体制を整備する必要があると考えています。「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」でも、ゲノム医療について「集約化」の方向が示されており、これと合致する考え方です。

 ゲノム医療を適切に提供するためには、高度な技術を持ち、患者の心理的影響などにも対応する必要があることから、厚労省は、「当面は、一定の要件を満たす『がんゲノム医療中核拠点病院』(仮称)を指定し、そこで提供する」べきではないかと考えています。症例を集約することで、よりゲノム医療技術の進化が期待できます。

 具体的な要件は、今後「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」などで詰められますが(関連記事はこちら)、厚労省は▼パネル検査実施体制をもつ(外部委託も可能)▼パネル検査結果の医学的解釈が可能なエキスパートパネルを有する▼遺伝カウンセリングが可能▼パネル検査の一定の症例数を有する▼手術検体などの「新鮮凍結保存」が可能である▼医師主導治験の実施体制を整えている—といった視点を例示しています。

 この視点に反論は出ていませんが、いくつか注文もついています。西田俊朗構成員(国立がん研究センター中央病院病院長)は、「中核病院には『この遺伝子変異がある場合には、この医薬品投与が適切』といった知見を構築することが求められる。医師主導治験の『実施体制』だけでなく、『実績』も求めるべき」と指摘。また、山口俊晴構成員(がん研有明病院病院長)や加藤和人構成員(大阪大学大学院医学系研究科教授)、天野慎介構成員(全国がん患者団体連合会理事長)らは「最初にゲノム医療などを説明・紹介する一般の医師」に対する教育の重要性を指摘し、「人材育成」の視点も重要であると強調しています。

 なお「検体の新鮮凍結保存」については、複数の構成員から「病院側の負担が大きすぎるのではないか」との指摘がありましたが、宮野悟副座長(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター長)は、「世界に誇れる体制の整備」の必要性を指摘し、厚労省提案に一定の理解を示しています。英国では新鮮凍結保存をしない(ホルマリン保存)検体を集積していますが、それをもとにしたゲノム解析では十分な成果が出ていないようです。病院側の負担と、質の高いゲノム医療提供とのバランスを考慮した要件設定が望まれます。

がん医療提供状況を見ながら、各県の「がんゲノム医療拠点病院」に順次拡大

 また厚労省は、がんゲノム医療中核拠点病院での医療提供状況を見ながら、近い将来には一定の要件を満たす『がんゲノム医療拠点病院』(仮称)を各県に1か所以上指定し、より身近にがんゲノム医療の恩恵を受けられるようにしてはどうかとの考えも示しています。

 時系列は別にして、現在のがん診療連携拠点病院のうち、一定の要件を満たす施設が『がんゲノム医療拠点病院』となり、さらに厳しい要件を満たす施設が『がんゲノム医療中核拠点病院』となるといったイメージです。がんゲノム医療中核拠点病院を、日本全国に何か所程度指定するのかが気になりますが、厚労省担当者は「要件との兼ね合いもある」と述べ、具体的な数字は示していません。

 なお、がんゲノム医療を提供するために整備する設備や人材配置なども考慮し、「医療保険上の適切な評価が必要」との指摘もなされており、指定要件などが固まった暁には、診療報酬で「がんゲノム医療中核拠点病院加算」や「がんゲノム医療拠点病院加算」などが、中央社会保険医療協議会で議論される可能性もあります。

ゲノム情報を集積・管理するセンターを設置、そこから民間にデータ提供

 (2)の「がんゲノム医療情報の集約・管理・利活用推進」が、コンソーシアムの基盤・出発点となります。厚労省は、この機能を専門的に担う『がんゲノム情報管理センター』(仮称)を設置する必要があるとしています。

 がんゲノム情報管理センターでは、「ゲノム情報」に加えて、当該患者にどういった治療を行い、どのような効果があったのかという「臨床情報」も集積し、両者を統合したデータベースを構築することになります。後者の臨床情報について、厚労省は「がん登録データベース」との連携した解析環境を整備してはどうかと考えており、がんゲノム情報管理センターが日本で唯一の「がんに関するゲノム・臨床情報」を管理する組織となる見込みです。

 さらに、これを活用した新医療技術などの開発を促進するために、がんゲノム情報管理センターから、(3)の民間も参画する(諸外国では民間中心)『がんゲノム知識データベース』(仮称)にデータを提供することになります。提供されるデータは、もちろん「生データ」ではなく、今後、どのようなデータの提供を認めるのかなどを詰めることになりますが、やはり一定の機微性の高い情報も含まれる可能性もあり、あらゆる企業・組織が参加することは好ましくありません。厚労省は「コンソーシアムにより認定を受ける」仕組みが必要と考えています。

 このようにゲノム情報・臨床情報は、非常に機微性の高い情報であるため、がんゲノム情報管理センターには、▼個人情報保護法などの関係法令を遵守する▼患者・国民の信頼を得るために、きめ細かな対応(同意の取得や、患者の意思変更などへの対応)を行う▼十分なセキュリティを確保する—ことなどが求められます。こうした体制の整備にはコストもかかるため、厚労省は「医療上の利用や研究開発利用など、利用目的が明確な部分については受益者に負担を求める」ことを検討してはどうかと提案しています。たとえば、(2)のがんゲノム情報管理センターから、(3)のがんゲノム知識データベースへの情報提供に当たっては、「対価を得る」といったイメージです。

がんゲノム医療は「国民全体」で推進する点を重視

 このほか、▼次世代シークエンサーという解析技術を用いたパネル検査は、厳格な精度管理の下で実施すべき▼適切な治療を選択・提供するために、「治験・臨床試験を含めた治療選択肢」をタイムリーに検討できるよう、がんゲノム情報管理センターが多くの治療法を一元的に集約・管理するべき▼有効性が期待できるがん種への適応拡大を積極的に進めるため、コンソーシアムで優先的に開発すべき対象の選定や、医師主導治験などを支援する機能を持つべき—などの論点も示されました。

 こうした方向に大きな異論は出ておらず、早ければ5月29日開催予定の次回会合での意見とりまとめという可能性もあります。ただし、加藤構成員や中西洋一構成員(九州大学大学院医学研究院呼吸器内科学分野教授)は、「がんゲノム医療は、国民全体で進めていくものである」との視点をより明確にすべきと訴えており、厚労省でさらに論点を深化・進化させていくことになります。

保険外のパネル検査と保険診療との併用、どこまで認めるべきか

 なお、パネル検査について「初回診断時でも保険外併用療養の対象とする方向で検討してはどうか」との指摘が一部委員から出されています。現在、厚労省内部では「再発時の生検材料」や「過去の手術時検体」などでパネル検査を行った場合(保険外)、保険診療との併用を認める方向で検討が進められていますが、一部委員は「間口は広くしておくべき」と指摘しているのです。

 しかし、前述のように「医学的に意義がある複数の遺伝子検査(パネル検査)について、保険診療との併用を可能とする(保険外併用療養)」ことが基本となるため、「医学的意義があるか不明な段階(初回診断時など)での検査」について保険診療との併用を認めるのは難しそうです。

  
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