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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

がんゲノム医療を提供できる中核病院を、本年度(2017年度)中に7-10施設指定—がんゲノム医療懇談会

2017.5.30.(火)

質の高いがんゲノム医療を提供する「がんゲノム医療中核拠点病院」の要件を固め、本年度(2017年度)中に7-10施設程度指定する。またがんゲノム医療・研究のマスターデータベースとなる「がんゲノム情報レポジトリー」を構築し、これを管理する「がんゲノム情報管理センター」を指定する—。

がんゲノム医療の推進に向けた体制整備を検討する「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」が29日、こうした内容を盛り込んだ報告書を取りまとめました。細部の修正を行い、近く塩崎恭久厚生労働大臣に提出する予定です。

5月29日に開催された、「第4回 がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」

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がんゲノム医療の中核病院の指定要件を詰め、本年度(2017年度)中に指定

「がんとの闘いに終止符を打つ」ことを目指し、塩崎厚労相はがんゲノム医療の臨床現場への導入を推進する方針を掲げ、▼がんゲノム医療の薬事承認や保険適用などの対応を検討する「制度班」▼ゲノム医療提供体制に係る具体的な計画を検討する「コンソーシアム班」―の2班で検討を進めています(関連記事はこちらこちら)。

前者の「制度班」では、▼医学的に意義がある複数の遺伝子検査(パネル検査)の薬事承認(先駆け審査制度などの活用)や保険適用▼全ゲノム解析などの探索的な医療の先進医療への位置づけ▼希少がんへの抗がん剤適応拡大などに受けたインセンティブ付与―などに向けた検討が鋭意進められています。

後者の「コンソーシアム班」では本懇談会を設置し、制度的対応の検討を前提に「がんゲノム医療を提供するためのコンソーシアム(共同事業体)構築」に向けた整理を行っており(関連記事はこちらこちら)、29日の会合で報告書の大枠を取りまとめました。

方向のポイントは、(1)がんゲノム医療を提供する医療機関(2)がんゲノム医療情報の集約・管理・利活用を推進する機関(3)がんゲノム知識データベースの構築―の3点に絞ることができそうです。

まず(1)では、質の高いがんゲノム医療提供のために、当面は「一定の機能を有したがんゲノム医療の中核を担う『がんゲノム医療中核拠点病院』(仮称、以下、中核病院)」を整備し、そこでがんゲノム医療を提供することが適切としています。一定の機能としては、次の8項目が示されました。今後、「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」において、具体的な要件などが詰められます(関連記事はこちらこちら)。

▼パネル検査の実施体制(外部機関との委託を含む)

▼パネル検査結果の医学的解釈が可能な専門家集団を有する(一部領域での他機関との連携を含む)

▼遺伝性腫瘍などの患者に専門的な遺伝カウンセリングが可能

▼パネル検査などの対象者について一定数以上の症例を有する

▼パネル検査結果や臨床情報などについて、セキュリティが担保された適切な収集・管理ができ(ガバナンス確保体制なども含む)、必要な情報を後述する「がんゲノム情報管理センター」に登録可能

▼手術検体などの新鮮凍結保存可能な体制の確保

▼先進医療、国際共同治験、医師主導治験などを実施する適切な体制を整え、一定の実績を有する

▼医療情報の利活用や治験情報の提供などについて患者側に分かりやすくアクセスしやすい窓口を有する

報告書では、中核病院について「がん診療連携拠点病院の仕組みに位置付ける」考えを明確にしています。この点、山口俊晴構成員(がん研有明病院病院長)は「非常に厳しい要件で、現実的には臨床研究中核病院が該当するのではないか」との見解を示しましたが、現在、臨床研究中核病院に指定されている8病院(国立がん研究センター中央病院、東北大学病院、大阪大学医学部附属病院、国立がん研究センター東病院、名古屋大学医学部附属病院、九州大学病院、東京大学医学部附属病院、慶應義塾大学病院、千葉大学医学部附属病院、京都大学医学部附属病院、岡山大学病院)はすべてがん診療連携拠点病院にも指定されており、大きな齟齬はなさそうです。

厚労省は「本年度(2017年度)中に中核病院を指定する」考えを示しており、今後、診療報酬における評価などが検討される可能性もあります。間野博行座長(国立がん研究センター研究所長)は「7-10病院指定されるのではないか」と見通しています。

また当面、ゲノム医療提供は質を確保するために中核病院に限定されますが、報告書では「中核病院の提供するがんゲノム医療の状況を踏まえつつ、段階的に、『すべての都道府県』でがんゲノム医療提供が可能となることを目指す」考えも示しています。

がんゲノム医療のマスターデータベースを公的機関が構築し、運営・管理

(2)では、「がんゲノム医療・研究のマスターデータベース構築」と「データベースを管理・運営する機関の設置」の2点に言及しています。

前者のデータベースは、専ら中核病院で行われた遺伝子検査や治療内容(治療薬の効果などの臨床情報)を収蔵するもので、報告書では「がんゲノム情報レポジトリー」(以下、レポジトリー)という仮称を付しています。

またレポジトリーを管理・運営する機関について「がんゲノム情報管理センター」(仮称、以下、情報センター)とし、国民の機微情報を永続的に取り扱うために「公的機関」による運営が適切との考えを明確にしています。どういった機関を情報センターに指定するのかなどは今後、厚労省内で検討されますが、国立がん研究センターなどが有力視されています。また情報センターには「中核病院が先進医療として全ゲノム解析などを実施する際のガイドライン策定」といった役割も求められます。

さらに報告書では情報センターの運営コストにも言及し、▼利用目的が明確な部分については受益者に負担を求める▼個人や企業などからの協力も募る—ことが必要としています。前者の「受益者負担」としては、患者や医療機関に費用負担を求める方法も考えられますが、広く国民全体が受益者になることから公費(補助金)の交付といった方法なども考えられます。

個別患者に合った治療法選択の基礎となる知識データベースを学会が構築

がんゲノム医療は、おおまかには(a)全ゲノム解析結果から、がんの原因候補となる変異を抽出する→(b)がんの原因となる変異を同定する→(c)患者に合った治療法を選択する―というプロセスで提供されますが、(b)(c)の過程では、臨床研究などの文献情報やゲノム情報に関連する臨床情報などの「知識データベース」(以下、CKDB)が必要であると報告書では指摘。

しかし、現時点ではこうしたデータベースはないため、当面、学会などでCKDB構築を進め、将来的に「民間企業への移譲」(結果として複数のCKDBが構築されることも)などを検討してはどうかとしています。間野座長は「諸外国ではいくつものCKDBが併存しているが、皆保険体制である我が国では『参考・参照となるCKDB』を構築する必要がある」との考えを示しています。

がんゲノム医療提供に向け、医療機関や情報センター、国民が参画する共同体を構築

このように、質の高いがんゲノム医療を提供するためには、▼中核病院▼情報センター▼データベース—の指定・構築が求められますが、それぞれが有機的に連携する必要があり、さらにがんゲノム医療を受ける患者・国民も主体的に関わっていく必要があります。これら医療機関や公的機関、患者・国民の共同体が「がんゲノム医療推進コンソーシアム」であり、それぞれの機能・役割の相互確認、事業や財務状況などの公表・確認、国への改善要望などを行う枠組みが求められます。
 
この点について宮園浩平構成員(東京大学大学院医学系研究科)は、コンソーシアム運営のリーダーシップをとるヘッドクォーター(司令部)を設ける必要があると指摘。新たに厚労省に協議体を設けるなど、この点についてもさまざまな手法が考えられ、今後の議論を待つ必要があります。

このほか報告書では、▼がんゲノム医療に参画する検査事業者は、コンソーシアムを形成する関係者で認定する仕組み▼CKDBの移譲を受ける民間事業者について、コンソーシアムが認定する仕組み▼情報センターによる治験情報の一元的集約・管理体制の構築―なども提言しました。

さらに、将来的にリキッドバイオプシー(血液などを用いて、がんの診断や治療効果予測を行う技術)を活用し、「健常者を対象とした超早期のがん診断」なども期待できるとし、こうした革新的診断法・治療法を創出するために、情報センターが日本医療研究開発機構や研究機関やPMDAなどと連携して検討を推進するよう要請しています。

  
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