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がんの5年生存率、前立腺や乳がんでは9割超えるが、膵がんでは9.2%にとどまる―国がん

2017.2.16.(木)

 前立腺がんや乳がん、甲状腺がんでは5年生存率が9割を超えるが、胆のう胆道がんでは28.3%、膵がんに至っては9.8%にとどまる。また10年生存率に目を移すと、前立腺がんでは9割を超えるが、食道・胆のう胆道・肝・膵がんでは3割を切る―。

 国立がん研究センターが16日に公表した「全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について5年生存率、10年生存率データ更新」では、このように部位によって治療成績が大きく異なることが改めて分かりました(国がんのサイトはこちら)。

 もっとも全部位で見ると5年生存率は向上しており、国がんでは「化学療法・放射線治療や早期発見技術の進歩が貢献している」と見ています。

難治性がん対策の重要が改めて浮き彫りに

 国がんでは、従前から全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)と協力して、32の加盟施設(国がん中央病院、がん研有明病院、岩手県立中央病院、九州がんセンターなど)における診断治療症例について5年生存率を発表。昨年(2016年)1月には初めて10年生存率を発表しています。

 今般、2006-2008年に診断治療を行った12万1263症例を対象として5年相対生存率を、2000-20003年に診断治療を行った4万5359症例を対象として10年相対生存率を出しました。

 相対生存率とは、がん以外の死因によって死亡する確率を補正した生存率で、「実測生存率」(死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率)÷「対象者と同じ性・年齢・分布をもつ日本人の期待生存確率」で計算されます。以下の「生存率」は、すべて相対生存率をさします。

 まず5年生存率について見てみましょう。全部位全臨床病期の5年生存率は69.4%、前年(2004-2007年に診断治療を行った14万7354症例、68.8%)に比べて0.6ポイント向上。1997年の62.0%に比べて7.4ポイント向上しています。国がんでは「化学療法、放射線治療や早期発見技術の進歩が貢献している」と考えています。

 部位別(全臨床病期)に見てみると、前立腺(100%)・乳(93.6%)・甲状腺(92.8%)では9割を超えていますが、胆のう胆道がんでは28.3%にとどまり、膵がんでは9.2%に過ぎません。また、大腸がん76.3%、胃がん74.5%、肺がん44.7.%、肝がん36.2%という具合に5大がんでも大きなバラつきがあることが改めて分かりました。

 昨年のデータと比較すると、▼前立腺がんでは変動なし▼乳がんで0.7ポイント向上▼大腸がんで0.4ポイント向上▼胃がんで1.4ポイント向上▼肺がんで0.8ポイント向上▼肝がんで1.4ポイント向上▼胆のう胆道がんで0.6ポイント悪化▼膵がんで0.1ポイント向上―などとなっており、多くは向上しているものの、いわゆる難治性がんでは成績の悪化も見られます。厚生労働省のがん対策推進協議会では来年度(2017年度)からの新たながん対策推進基本計画(第3期計画)の策定に向けた議論を進めており、そこでは「難治性がん」対策も重要な柱に据えられる見込みで、さらなる治療技術の研究などが期待されます(関連記事はこちら)。

 また5大がんについて病期別の生存率を見ると部位別のバラつきがあることはもとより、ステージが上がるにつれて5年生存率は大きく低下しています。早期発見・早期治療の重要性が改めて認識できます。

▼胃がん:ステージI・98.1%、ステージII・66.4%、ステージIII・47.3%、ステージIV・7.3%

▼大腸がん(結腸がんと直腸がん):ステージI・98.9%、ステージII・91.6%、ステージIII・84.3%、ステージIV・19.6%

▼肝がん:ステージI・58.9%、ステージII・39.7%、ステージIII・15.2%、ステージIV・3.3%

▼肺がん(腺がん、扁平上皮がん、小細胞がん、その他):ステージI・83.8%、ステージII・50.1%、ステージIII・22.4%、ステージIV・4.8%

▼乳がん(女性のみ):ステージI・100.0%、ステージII・95.7%、ステージIII・82.6%、ステージIV・34.9%

がんの5年・10年生存率1 170216

胃・大腸・乳がんのステージIでは10年生存率9割超、サバイバーシップも重要課題

 次の10年生存率を見てみましょう。全部位全臨床病期の10年生存率は58.5%で、前年(1999-2002年に診断治療を行った3万5287症例、58.2%)よりも0.3ポイント向上しました。また同じデータベース(2000-2003年に診断治療を行った症例)の5年生存率は63.8%なので、そこから5.3ポイント低下します。

 部位別(全臨床病期)に見てみると、前立腺(94.5%)・甲状腺(89.3%)・子宮体(81.9%)・乳(81.7%)・子宮頚(71.4%)では7割を超えていますが、肝がんでは16.4%、膵がんでは5.1%という状況です。5大がんについて、昨年のデータと比較すると、▼胃がんでは1.7ポイント低下(69.0%→67.3%)▼大腸がんで0.6ポイント低下(69.8%→69.2%)▼乳がんで1.3ポイント向上(80.4%→81.7%)▼肝がんで1.1ポイント向上(15.3%→16.4%)▼肺がんで0.6ポイント低下(33.2%→32.6%)―となっており、部位別に異なる傾向があります。より長期的に分析・研究していく必要があるでしょう。

 さらに5大がんについて病期別の生存率を見ると、次のようになっています。

▼胃がん:ステージI・93.9%、ステージII・55.8%、ステージIII・38.1%、ステージIV・7.0%

▼大腸がん(結腸がんと直腸がん):ステージI・95.3%、ステージII・81.5%、ステージIII・74.3%、ステージIV・8.3%

▼肝がん:ステージI・32.0%、ステージII・17.7%、ステージIII・8.2%、ステージIV・2.1%

▼肺がん:ステージI・68.3%、ステージII・28.8%、ステージIII・16.0%、ステージIV・3.4%

▼乳がん(女性のみ):ステージI・95.0%、ステージII・86.2%、ステージIII・54.7%、ステージIV・14.5%

 ステージIで診断治療が行われた場合、胃がんや大腸がん、乳がんの患者では9割超が10年間以上生存することを意味します。次期がん対策推進基本計画では、いわゆる「サバイバーシップ」を全体目標に据える方向で議論が進められており、今般のデータからも「がん患者の社会復帰」までを見据えた対策の重要性がますます高まっています(関連記事はこちら)。

がんの5年生存率・10年生存率 170216の図表の追加

   
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