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治療抵抗性の乳がん患者に対する新治療法、治験を開始―国立がん研究センター

2015.7.13.(月)

 国立がん研究センターは7日、治療抵抗性の乳がんを対象とした医師主導治験を開始したことを発表しました。

 同センター研究所が開発した、乳がんの治療抵抗性に関わるRibophorin II(RPN2)遺伝子の発現を抑制する核酸医薬製剤TDM-812を、世界で初めてヒトに投与する試験(第I層医師主導治験)を、同センターの中央病院で開始したもので、新たな乳がん治療薬の承認を目指しています。

乳がん細胞に特異的な遺伝子を標的とする新治療法

 転移や再発を起こした乳がんに対しては、病気の進行を追押さえることを目的としたホルモン療法(内分泌療法)や抗がん剤などを用いた薬物療法が主に用いられます。しかし、治療抵抗性の局所進行・再発乳がんでは、病巣が皮膚に進展して巨大な腫瘤を形成したり、皮膚潰瘍を生じたりすることがあり、患者のQOLが著しく損なわれるケースが少なくありません。

 ところで、乳がん細胞などでRPN2遺伝子が強く働くと、乳がん細胞は抗がん剤を細胞外に排出してしまう「抗がん剤耐性」を獲得し、RPN2遺伝子の発現と予後には相関があることなどが分かっています。

 これに対し、RPN2遺伝子の発現を減らす働きをするsiRNA(RPN2siRNA)をがん細胞に導入することで、乳がん細胞の抗がん剤耐性や増殖が抑えられることも分かってきました。

 そこで、同センターは、スリー・ディー・マトリックス社と共同で、生体内で分解されにくく、細胞内への取り込みが促進された核酸医薬製剤TDM-812を開発し、大型動物を用いた非臨床試験で有効性を確認しました。

 今回の治験では、「治療抵抗性の乳がんで、体表から触知できる局所腫瘤を有する患者」を対象に、核酸医薬製剤TDM-812を皮下の腫瘤に局所投与した際の安全性および忍容性の評価を行い、局所投与法における「推奨用量」を決定することが目的です。既に6月30日に、鎖骨下リンパ節転移(局所腫瘤)のあるトリプルネガティブ(ホルモン療法やHER2を標的とした分子標的薬の効果がない)の乳がん患者に1例目の投与が始まっています。

 同センターは「RPN2遺伝子は正常組織ではほとんど発現せず、これを標的とした核酸医薬はがん細胞に選択性の高い治療となる」と期待を寄せています。

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