2014年のがん登録、最多は大腸がんで9万4596件―国立がん研究センター
2016.9.27.(火)
2014年における、がん診療連携拠点病院での5大がんの登録件数を見ると、▼胃がん7万5321件(前年から0.0%増)▼大腸がん9万4596件(同3.3%増)▼肝臓がん2万4270件(同1.6%減)▼肺がん7万5408件(同3.3%増)▼乳がん6万6440件(同2.3%増)―となっている。
こういった状況が、26日に国立がん研究センター(国がん)が公表した「がん診療連携拠点病院院内がん登録全国集計 2014年全国集計報告書」から明らかになりました(国がんのサイトはこちらとこちら)。
2014年には5大がん以外の集計も行っており、例えば、院内がん登録の実務中級認定者がいる拠点病院では▼前立腺がん4万1963件▼子宮頚部がん2万1224件▼膵臓がん1万8697件▼食道がん1万7781件―などの登録が行われています。
目次
部位別に見ると、大腸、胃、肺、乳房、前立腺が上位5部位
まず2014年に登録されたがんの部位別割合を見ると、最多が「大腸がん」で14.3%(前年から0.2ポイント増)、次いで「胃がん」11.3%(同0.3ポイント減)、「肺がん」11.3%(同0.1ポイント増)、「乳がん」10.0%(同増減なし)、「前立腺がん」7.6%(同0.1ポイント減)、「子宮頸部がん」3.8%(同増減なし)、「肝臓がん」3.6%(同0.1ポイント減)などいう状況です。
上位5部位(大腸、胃、肺、乳房、前立腺)について2009年以降、順位の変動はありませんが、膵臓がん(3.3%、前年(2013年)調査から9位に浮上)が増加している点が特筆できます。
また国がんでは「5大がんの登録割合がわずかではあるが減少傾向を示した都道府県が23ある」としており、他部位のがんが増加傾向にあると考えられます。
胃がんI期での発見が多く63.0%、内視鏡治療が多い
次に5大がんについて部位別に登録内容を見ていきましょう。
胃がんの登録件数は7万5321件で、前年に比べて微増(0.0%増)となりました。
治療前ステージ別の登録割合を見ると、I期がもっとも多く63.0%、次いでIV期の13.7%、II期10.7%、III期8.10期となっています。
治療前ステージ別に見た治療方法の割合については、I期(4万793件)では「内視鏡のみ」52.3%、「手術のみ」33.5%が多くなっていますが、II期(6946件)では「手術のみ」47.1%、「手術または内視鏡と薬物治療」43.4%、III期(5231件)でも「手術のみ」30.7%、「手術または内視鏡と薬物治療」54.4%が多くなっています。
またI期では「手術のみ」が減少し、「内視鏡のみ」が増加傾向にあります。
大腸がん、前年に比べて3.3%増、発見時のステージにバラつき
大腸がんの登録件数は9万4596件で、前年に比べて3.3%増加しました。
治療前ステージ別の登録割合を見ると、I期が最多で20.6%、次いでIII期17.8%、II期15.9%、0期14.3%、IV期13.3%という状況です。
治療前ステージ別に見た治療方法の割合は、0期(1万1593件)では「内視鏡のみ」が87.1%大部分を占めていますが、I期(1万6707件)では「手術のみ」63.6%、「内視鏡のみ」14.0%、「手術または内視鏡と薬物治療」12.3%、II期(1万2933件)では「手術のみ」63.9%、「手術または内視鏡と薬物治療」28.2%、III期(1万4452件)では「手術のみ」46.9%、「手術または内視鏡と薬物治療」44.2%などが多くなっています。
またIV期(1万798件)では、「手術または内視鏡と薬物治療」42.8%、「手術のみ」21.3%、「薬物療法のみ」16.3%のほか、「治療なし」も10.4%あります。
肝臓がん、5大がんで唯一登録件数が減少、発見時のステージはI期が多い
肝臓がんの登録件数は2万4270件で、5大がんの中で唯一減少しています(前年に比べて1.6%減)。
治療前ステージ別の登録割合を見ると、I期がもっとも多く43.5%、次いでII期24.4%、III期14.9%、IV期13.2%などとなっています。
治療前ステージ別に見た治療方法の割合は、I期(3553件)では「手術または内視鏡、薬物、放射線以外の組み合わせ」がもっとも多く42.2%で、ほか「薬物治療とその他」23.8%、「手術のみ」22.7%が多くなっています。II期(6224件)では「手術のみ」35.9%、「薬物治療とその他」31.2%、III期(3924件)では「薬物治療とその他」42.4%、「手術のみ」22.2%が多くなっていますが、IV期では「薬物治療のみ」23.6%、「薬物治療とその他」17.2%のほか、「治療なし」の選択をするケースが24.1%もっとも多くなっています。
肺がん、発見時にIV期も3割超、「治療なし」の選択も
肺がんの登録件数は7万5408件で、前年に比べて3.3%増加しています。
治療前ステージ別の登録割合を見ると、I期が40.4%ともっとも多くなっていますが、次はIV期で32.1%、ほかIII期15.4%、II期8.1%となっています。
治療前ステージ別に見た治療方法の割合は、I期(2万4522件)では「手術のみ」が65.7%と7割近くを占めていますが、II期(4925件)では「手術のみ」の割合は36.6%にとどまり、「手術または内視鏡治療と薬物治療」が26.4%となります。
またIII期(9324件)では「放射線治療と薬物治療」30.8%、「薬物治療のみ」24.7%が多くなり、「治療なし」というケースも12.2%あります。さらにIV期(1万9482件)になると「薬物治療のみ」44.3%が最多ですが、次いで「治療なし」が選ばれ19.8%を占めています。
乳がん、I期・II期・0期の早期発見が多い
乳がんについては、登録件数は6万6440件で、前年に比べて2.3%増加しました。
治療前ステージ別の登録割合を見ると、I期39.%、II期32.3%が多く、ほか0期14.5%、III期7.6%、IV期5.1%となっています。
治療前ステージ別に見た治療方法の割合は、0期(7028件)では「手術のみ」が45.4%と半数近くを占めていますが、I期(1万8923件)では「手術または内視鏡と放射線治療と薬物治療」39.3%、「手術または内視鏡と薬物治療」39.2%でほとんどを占めています。
II期(1万5660件)でも「手術または内視鏡と薬物治療」54.2%、「手術または内視鏡と放射線治療と薬物治療」27.4%、III期(3680件)でも「手術または内視鏡と薬物治療」41.1%、「手術または内視鏡と放射線治療と薬物治療」29.7%で大半を占めていますが、IV期(2477件)になると「薬物治療のみ」が64.1%に増加しています。
5大がん以外の登録状況も集計、膵臓がんでは発見時にIV期が4割超
また今回の調査から5大がん以外のがんについても集計が行われています。
その中で食道がんについて、治療前ステージ別に見た治療方法の割合を見ると次のような状況が明らかになっています(関連記事はこちら)。
治療前ステージ別の登録割合を見ると、0期13.3%、I期34.1%、II期10.5%、III期24.4%、IV期14.4%という状況です。
▼0期(1932件):「内視鏡のみ」が80.8%とほとんどを占める
▼I期(4953件):「内視鏡のみ」42.5%、「手術のみ」18.9%など
▼II期(1525件):「手術または内視鏡と薬物治療」35.9%、「放射線治療と薬物治療」19.8%、「手術のみ」17.0%など
▼III期(3547件):「放射線治療と薬物治療」29.6%、「手術または内視鏡と薬物治療」27.2%など
▼IV期(2090件):「放射線治療と薬物治療」36.9%、「薬物治療のみ」21.1%など
なお発見が困難とされる膵臓がんについては、1万8697件の登録があり、治療前ステージ別の登録割合を見ると、IV期がもっとも多く43.4%、次いでII期26.9%、III期13.2%、I期11.3%、0期1.1%という状況です。
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