2012年の人口10万人当たりがん患者は365.6、男性では胃がん、女性では乳がんが最多―国立がん研究センター
2016.6.30.(木)
2012年の1年間に我が国でがんと診断された症例数は前年に比べて約1万4000人増加の86万5238例で、男性50万3970例、女性36万1268例となった。人口10万対の年齢調整罹患率は前年に比べて0.2減少の365.6(男性447.8、女性305.0)となり、がんの罹患率増加に歯止めがかかった―。
国立がん研究センター(国がん)は29日、このような推計値を公表しました(国がんのサイトはこちらとこちら)。
人口10万人当たりのがん罹患率、増加傾向に歯止めかかる
今般の推計値は、「地域がん登録」データを活用したもので、2012年になって初めて「全都道府県のデータが揃った」格好です(埼玉県、東京都、福岡県が初参加、宮城県、大阪府が復帰)。
それによると、2012年の1年間に我が国でがんと診断された症例数は前年に比べて約1万4000人増加の86万5238例、人口10万対の年齢調整罹患率は前年に比べて0.2減少して365.6となりました。
全部位の罹患率は、ここ数年増加傾向となっていましたが、2012年の罹患率365.6は、前年の365.8 と比較して0.5%の減少となっており、罹患率は減少傾向に転じています。
性別に見ると、男性50万3970例(罹患率は447.8)、女性36万1268例(同305.0)となっています。
男性では40歳後半から罹患率上昇、女性では部位により罹患率上昇に大きな差
部位別に年齢調整罹患率を見ると、男性では、▽胃79.6▽大腸70.7▽肺64.4▽前立腺60.5▽肝および肝内胆管25.2―などとなっています。前立腺がんの増加が頭打ちになり、大腸がんが増加することで順位が変動しています。
また女性では、▽乳房83.1▽大腸40.9▽子宮30.6▽胃28.3▽肺24.9―などいう状況です。
死亡率(年齢調整、人口10万対)を部位別に見ると、男性では▽肺41.0▽胃26.1▽大腸21.4▽肝16.7▽膵13.3―となっており、女性では▽大腸12.3▽乳房11.5▽肺11.4▽胃9.6▽膵8.4―となっています。
また、性別・部位別・年齢階級別に罹患率を見てみると、男性では部位に関わらず40歳代後半から増加し始め、▽胃がんは70代後半まで増加が続く▽大腸がんは年齢とともに罹患率が高まる▽前立腺がんは70歳代がピークとなる―といった特徴があります。
一方、女性では部位によって罹患率の上昇カーブが大きく異なり、▽子宮がんは20歳代から上昇して50歳代でピークを迎え、60歳代以降は横ばいとなる▽乳がんは30歳代後半から急増し、60歳代に入ると減少する▽大腸がん、胃がん、肺がんは年齢とともに罹患率が高まる―ことが分かりました。
胃がん、日本海側と東北・関西で罹患・死亡が多い
さらに都道府県別に標準化罹患比・死亡比(全国の罹患率推計値を100、死亡率を100として、各都道府県の状況が全国値と比べてどの程度なのかを見たもの)を見てみると、次のような傾向にあることが分かりました。
【男性全部位】北海道、東北、山陰、九州北部で死亡比が高い傾向にあり、罹患比では、その傾向がより明確である
【女性全部位】男性と類似しているが、死亡の都市圏(宮城、東京、大阪、福岡)への集積が罹患でより明確である
【胃がん】日本海側および東北・関西地方で罹患比・死亡比ともに高い傾向が伺える
【大腸がん】北海道、東北、中部地方、関西地方で罹患比・死亡比ともに高い
【肝がん】西日本で罹患比・死亡比ともに高い
【肺がん】北海道と西日本で罹患比・死亡比ともに高い(女性では、北海道、東京・大阪近郊で死亡比が特に高い)
【乳がん】東京で罹患比・死亡比が著しく高い
ただし、国がんでは「地図上の地域差は統計学的に差がないこともある」として、日本全体を俯瞰してのがん罹患の分布や傾向の違いを把握するにとどめる必要があると注意を呼びかけています。
また地域差の要因については、▽細菌やウィルス感染の分布▽生活習慣・環境の違い―によるものと想定しています。
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